Interview

Y.M.Walts 馬渕明恵 〜ビジョナリー・ブランド〜 1/3

「すべての事象に対して、とらわれることなくそこから受ける感覚、意識、印象、着想を衣服というカテゴリーの中に落とし、形にしていく。
人の存在があり衣服があるという観点からまず、ウェアラブルなものであること。そしてそれが着る人本人の持つニュートラルな部分の美しさや力強さを感じさせるものであること。つまり、人が着ることではじめて衣服に意味が生まれる」
上記をブランドコンセプトとして活動を展開しているY.M.Walts。
デザイナー馬渕明恵氏は文化服装学院卒業後、アパレルメーカに勤務。退社後オーダードレス、衣装デザインを手掛ける。その後ATTACHMENTでコレクションにも携わり、2009年春夏から自身のブランド『Y.M.Walts ワイエムウォルツ』をスタートさせる。また2012 S/Sからはリラックスラインとして『Y.M.Walts blue ribbon』をスタート。よりクリエーションの幅を広げている。

Y.M.Waltz 2012-13 A/W Collection

―始めにクリエイションについて、デザインはどのような事からインスピレーションを得ていますか?

クリエイションの部分を大きくまとめて話すと、すごくベーシックで、普段見ている事象から膨らませる事が多いです。日常で気になった事柄をずっと考えていって、例えばある場所が気になったときには、人がそこにいたときにどんなものを着るのかなということを考えて作っています。
あとは色味ですね。季節や日の移ろうときって色の変化がありますよね。夕暮れ時の空の色とかそういう気になったものを服に落とし込んでいます。例えば青空の色。あの青をどうやって捉えるのかという色の出し方でも、写真だと変わってしまうし、布を染めた色も違うんですよ。それでいかにあの色を感覚で残すかということを考えています。

―色彩に対してのこだわりはいつ頃から持ち始めたんですか?

こだわりというか、私も最近人から言われて気づいた事があるのですが、
「Y.M.Waltsの服はいつも、ワントーン落ちた絶妙な色を選ぶ」と言われて、そういえばそうかもと思いました。
好きで選んでいる色が、見ている風景の中にある色が多くて、自然界に原色ってほとんどないから多分それで落ちているんですよね。
夕方見た木とか朝日を浴びた地面、夕立の後の辺りが濡れた木の水っぽさといった色使いをしています。

—以前は黒の色が多かった印象ですが?

ファーストシーズンは光の白、セカンドシーズンは陰の黒に着目したコレクションでした。ファーストシーズンの白は、カーテンに差し込む光を見て、カーテンって1枚の生地なんですけど独特の陰影がついていて、それがいいなと。そこでシンプルにドレープを使って表現しました。2シーズン目は逆に陰の部分に注目しました。陰は黒一色というわけではなく、ブルーの様に見える淡い部分、漆黒の様に見える濃い部分など様々なトーンがあります。そこでブルー、ネイビー、黒のカラーパレットでコレクションを作りました。

—2012 年春夏からはリラックスラインとして『Y.M.Walts blue ribbon』をスタートさせましたが。

ちょうど震災の頃に、部屋着の延長のようなカジュアルで肌触りが良い服が、日頃どれだけ重宝するか改めて実感したんです。それで、耐久性のある柔らかい生地をすべてオリジナルで開発して、高品質なカットソーラインを作りました

—テキスタイルはY.M.Waltsの方でも全てオリジナルですか?

全てではないですが。自分が使いたいものがなければ作るという感じです。無理して元々あるものを新たに作ろうとは考えていないです。

—各地のテキスタイル工場とやり取りされているのですか?

冬物は備州が多いですし、カットソーなどは和歌山の工場さんにお願いしています。プリントは京都、シルクスクリーンは大阪、京都、デニムは岡山でというように様々な所で作っています。適材適所に作ることが大事だと思っていて、できる所で頑張ってもらって、それを形にしていければと思っています。

—そうした取引先は自分で発掘されたのですか?

そうですね。縫製工場なんかは最初に面接みたいな事をされて、それでやっと一緒にしていただけるようになりました。(笑)
最初の立ち上がりの時は何枚売れるか計算できないので、それは工場側も困りますよね。それでどうしたらいいかを聞いたら「一回服を作って世界観をみせてほしい」と。それで「うちの工場と合えばやってあげるよ」と言ってもらい、取引につながりました。
逆に私の方からも、工場側の得意分野も見せてもらって、それに合わせたアイテムを提案しました。ワンピースが得意な工場や、その中でも曲線の縫製が得意な工場とか様々なので。最終的に出来上がりをみて「じゃあ、このアイテムもこの工場で」という感じに割り振っていきました。このような対等の関係性ってやはり大事で、そうじゃないと互いを生かしきれないと思います。無理してお願いしてもいいものは出来上がってこないし、結局倍の時間がかかってします。そういう意味では何でもプロデュース感覚で物事を決めているかなと思います。パターンも基本的には自分でひきますが、ある人に頼めば綺麗なラインが出るということがあるのであればその方にお願いします。そうすると時間も短縮できますし、ミスも少なくなります。それに見合って値引きをする方もいますが、私の場合はちゃんとお金も払うからその分良い物を作ってほしいと思うスタイルですね。

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