Interview

Y.M.Walts 馬渕明恵 〜ビジョナリー・ブランド〜 2/3

モノというのは、生みっぱなしが一番可哀想で、キャッチコピーとして生んだものに対しての価値観を作ることが大切だと思います。タイトルを付けてあげるだけで、人が妄想する可能性も面白いです

→Y.M.Walts 馬渕明恵 〜ビジョナリー・ブランド〜 1/3

blue ribbon 2012 S/S Collection

―影響を受けたというヴィオネについての話を聞かせてください

学生時代、ヴィオネで全てが変わりました。それまでは、未熟なパターンを平面で何回も何回もやっても時間がかかるばかりだった。
ボディに生地をのせて立体裁断をやっていくことで、体型補正とかも覚えていくので、それをパターンに落としていくと、こういう形が本来の身体の形なんだということが分かるようになりました。
解剖学みたいに女性の身体の一番出るところなどが分かってくるので、デザインに合わせるドレープも変わってくるんです。生地に合わせる=身体に合わせる、地の目をバイアス地にするところはどこにするとか。これらは平面ではどうしても経験値を重ねないと難しいので、ヴィオネを知ってようやくパターンが楽しいかもしれないと思うようになりました。それまでは絵を描けてもモノが出来なかったんですよ。絵のままに出来たのがヴィオネの立体を覚えてからだったんです。

―テーマはいつ決めるのですか?

言葉にするときです。

―例えば感覚的に作品を作った時、そのものを見て感じ取ってほしいから後から説明をつけるのは難しく感じます。

作品が間違った方向にいってはいけないと思えば、少し足すための言葉を付け足すことが出来る。何の解釈でもいいよと放置してしまうと作品が可哀想だから、その作品のためにきちっとしたマニュアルを付けてあげるとそういう道に勝手に進んでいってくれる。

—独立前はどのような事をされていたのですか?

オーダードレスやクチュール、メンズ、量産など一通り経験してきました。まず学校の卒業時には、何か1つに絞るのではなく幅広く経験したいと思っていたので、大手のアパレル会社に就職しました。そこでは結果的に企画だけでなく、パターンの仕事など様々な経験をさせて頂きました。ただ、量産から通販まで色々やっている会社だったので、ロット数も多いし、デザインのサイクルも早くて。私はもっとゆっくりデザインして物を作っていきたいなと思い、退社してフリーでオーダーメイドの仕事を受けるようなりました。

—オーダーメイドは、どういったものを作っていたのですか?

パーティードレスや、カクテルドレスとか。あとは歌を歌う人のための服やモデルの方の商材写真に使う服など様々です。100%オーダーに近いものはブライダルのウエディングドレスが多かったですね。

—ブライダルはもうされていないのですか?

今も知人からきた依頼などは請け負っています。4月にも友達が結婚するのでそれを作ったり。

—オーダーの世界で直にお客さんと接することで価値観が変わったというか、刺激をもらったというようなことをおっしゃっていましたが。

女性がブライダルを作り上げていくと本当に変わるんですよね。ドレス関係って日本人にとってあまり縁がないということもあって、日本人が一から作ろうと思うと実際精神が変わってくるんです。まさにお姫様のような感覚になってしまう。今思い出しても鳥肌たちますから。やはり服の力ってすごくて、しかも自分のためだけに作られているということをされていると女性も段々高貴になっていく。立ち振る舞いも変わってくるし、花嫁になるということに向けていい精神状態になっていくんですよね。最初はフィッティングも照れくさくてもじもじしているんですけど、作り上げていく過程で段々と姿勢も良くなって。元々ドレスというのは姿勢がいい状態で作り上げていくというものなので尚更ですね。一番綺麗なラインを保って作っていくので、これが一番綺麗な女性のラインだということが本人にも分かってきます。それで脱いでも姿勢はそのままで。

—今話を聞いている最中でも姿勢を意識し始めました。

姿勢を見て「もう少しこうした方がいいのにな」と思うときはその方の体の歪みを伝えて、矯正していくというか。そうすると女性って自然と痩せていってより綺麗になっていくんですよね。そういう現場を近くで見れる事はすごく楽しいですし、嬉しい事ですね。夢が詰まっているイベントですから、自分としては仕事というよりは気分転換に近いかもしれません。

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