Interview

蘆田裕史 4/5

デザイナーにとって、公の場で文章を発表する経験はあまりありません。僕たちはデザイナーの書く能力、喋る能力も育てたいと思っているんです。きっちりと論理立てた文章ではなくとも、作り手の視点、ものの見方を提示してもらって、そういうものが集積していけば批評言語の確立に役立つだろうと

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―”Fashionista”を出してみてどうでしたか?何か反響はありましたか?

正直なところ、自分たちではわからない部分が大きいです。一年かけて1000部売れたら良いと思っていたのですが、初版は1か月も経たないうちに売れ、増刷もしました。自分たちが思っていた以上に売れたというのはわかるのですが、twitterなどで面白いと言ってくれる人はいるけど、どう面白かったのかがわからないと、反響をはっきり理解することはできないですよね。「勉強になった」、「面白かった」だけではどういうところを見てくれたのかわからないので・・・

―予想以上にファッショニスタに興味を持った要因として西谷さんが出した”ファッションは語り始めた”もそう、ドリフでのトークショーもそうですし、オペラシティでの展覧会もそうですし、ここ最近ファッションでの批評に興味を持たせるようなイベントがあったのも関係しているかもしれませんね。時代的に追い風だったというか。勿論蘆田さんや水野さんがブログで書いていることもそうですし。

それは完全にそうだと思います。changefashionでブログを始めさせてもらったこととか、そういうのがなければ今には絶対繋がっていないと思っています。
 一番びっくりしたのが批評をテーマに行った「ドリフのファッション研究室」最終回のトークショーなんですが、3000円もするのに70人も来たんです。映画2本も見れるような値段なのにそんなにもたくさんの人が批評の話を聞きに来たということに嬉しく思いつつも驚きました。

―読者に”Fashionista”のどういう部分を見て欲しいのでしょうか?

それは正直あまりありません。ターゲットを明確にしていないんですよね。なので、読み方も人それぞれでいいと思います。これが商業誌であれば駄目なやり方でなんでしょうけど。

―順番にもこだわりがあったのでしょうか?

インタビューを最初にしたのはやっぱり一番読みやすいから。最初に開いて千葉さんの文章が出てくると、難しくて読むのを断念する人が出てくるかもしれない。批評や言説に興味がなくても、ファッションに興味がある人すべてに出来るだけ手に取ってもらえるようにしたい。そうするとデザイナーの話から始まるのは手に取りやすいと思ったんです。ブランドが好きであれば見たいと思うでしょうし。
分量的な面を考えると、批評は4000字と短いですし、その次に来ても良かったのかもしれないですが、最初から最後まで出来れば読んで欲しいなというのがあって内容的・分量的に読みやすい物を最初と最後においています。
インターナショナルパースペクティブが最後だったらまるごと飛ばされてしまいそうですよね。

―”Fashionista”では大久保俊さんや村田明子さん等のデザイナーも文章を書かれています。デザイナー自身も批評をするべきなのでしょうか

デザイナーにとって、公の場で文章を発表する経験はあまりありません。おそらく、商業誌ではなかなかできないことなので。僕たちはデザイナーの書く能力、喋る能力も育てたいと思っているんです。
人選にも関わってくるのですが、批評はデザイナー2人と研究者2人とに書いてもらってます。僕のような人は服のディテールについて細かく書いたり出来ません。一方で、デザイナーは明確な言語化が苦手かもしれない。でも、きっちりと論理立てた文章ではなくとも、作り手の視点、ものの見方を提示してもらって、そういうものが集積していけば批評言語の確立に役立つだろうと。

もちろん、デザイナーでも文章のうまい人もいます。『My Dear Bomb』にも収録されている、山本耀司さんの文章は本当に素晴らしい。若手でも彼のような文章を書けるデザイナーが出て来たら、今後また変わってくると思います。僕たちも服の見方を別の角度から勉強出来るので。例えばmameやTARO HORIUCHIについて書くとこうとしても、僕には書けない部分が多い。服の構造だったり、パターンだったりそういったところから書くのであれば彼らの服について書くことも出来るかもしれません。でもそれは批評家や研究者にはハードルが高い。だったらそっちを知っている人たち――デザイナーだったりパタンナーだったり――が文章を書けば面白いことが書けるのではないかと思っています。それでデザイナー二人にお願いしています。

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