“今はデジタルカメラでアイテムを撮って持ち帰って決めるということがほとんどかもしれませんが私はそんなことは出来ません。そんなことをすれば洋服のリアリティがなくなってしまいます。写真に撮ったとしても色が変わってしまいますよね。それって今の瞬間で組み立てていけないなと思うのです”
→Yukiko Yuzawa / CONCENTO PARIS H.P.FRANCE 1/4
→Yukiko Yuzawa / CONCENTO PARIS H.P.FRANCE 2/4
―日本のブランドはフィニッシングまで完璧。一方ヨーロッパの若手ブランドは日本のブランドと比べて商品としての完成度は低いものが多い気がします。そういった部分は気にされますか?
勿論商品としての完成度は気にしますが、私はそういう完璧な洋服にはあまり魅力を感じないのです。糸がつれてても好きだから着込んじゃおうとかそういう感覚で着ていただくお客様。日本も景気の良かった80年代や90年代の初め、色んなものを着てきた方はこんなのこれでいいんじゃないって着る人が良いと思っています。結局好きならいいって。ヨーロッパ的な感覚かもしれませんが。なんかちょっとなと思っても着ると素敵な服、そういうものが好きです。
―バイイングする物に関しては全て袖を通すのですか?
ほとんど袖を通すことはしません。ジャケット等サイズ感を確かめる為には着ますし、新しいシルエットを確かめる為には着ますが何人かで展示会に行き、みんなで着たり、履いたりということはしません。私はファッション馬鹿でしたのでものを見たらこれを着るとこうなるだろうなとか、これ着たらパターン狭いだろうなとか見ればわかるんです。それで強弱を見てサイズ感を見てオーダーをしています。
―バイイングをするにあたってデザイナーと会話をしたりしますか?
デザイナーさんがいる時は話をしますが人気のブランドとなるとデザイナーさんがいないところも多いですし、海外のショールームの方はブランドに対しての知識がない人が多いと思います。「これが売れているんだ」と言うのは教えてくれますが、私はそんなことは知りたくありません。売れている物を買うつもりはないですし、自分が見て良ければ買い付ける、それだけのことなのです。それに海外の展示会では人気のブランドは忙しくて、バイヤーに対しても「早くオーダーして出て行け」みたいな雰囲気があります。ゆっくりと自分で商品を組み立てて行きたいと思ってもどんどん他のバイヤーさんが商品を持っていってしまう。時間がない中でも冷静になって自分で決めれないといけないのです。
―バイヤーさんは展示会で商品を見て気になる商品をチェックして、オーダーシートを一度持ち帰って数日後にFAXかe-mailでオーダーするというのが通常ですが、湯沢さんはその場でバイイングするアイテム、数を決めてしまうと聞きました。
それは勿論です。今はデジタルカメラでアイテムを撮って持ち帰って決めるということがほとんどかもしれませんが私はそんなことは出来ません。そんなことをすれば洋服のリアリティがなくなってしまいます。写真に撮ったとしても色が変わってしまいますよね。それって今の瞬間で組み立てていけないなと思うのです。
バジェットがありますし、バジェットの中でやっていますけど今という期間しかオーダーは出来ません。ホテルで計算をする時間は私にはありません。だからその場で数もサイズも決めます。支払い条件だけは後で交渉する場合もありますが。自分の直感を大事にしています。ロンドンから始まりミラノ、パリ、その後もう一度ミラノに行きますが最後に”色”が合ってくるんです。それでテーマが出てくるんですね。
―何も考えずに直感で選んでいても統一感が出てくるということでしょうか?
そうですね。結果的に統一感がでてくるんです。
―いつもその場でオーダーをしていると何都市も回るうちに「あ、あのブランド買わなければ良かったな」と思うこともあるのではないでしょうか?
確かにそういう時もあります。だけどその瞬間を大事にしたいというのがあるのでそうなった時はバイヤーのテクニックで数が多かったりしたらうまく減らしたりします。それに小さいブランドも多いですのでオーダーしたにもかかわらず結局生産しないというブランドも出てきますし。
―CONCENTOは日本の他の店では扱いのないブランドが多い印象ですがデビューシーズンから買い付けることが多いのですか?
デビューということは気にしていませんが、良ければそれがデビューだとしても必ず買いますね。
―そういう情報はどこで手に入れるんですか?
展示会を回ったりとにかく歩くことです。そうするとカシミア製で安くてすごく素晴らしい、でも日本で誰も買っていない。そういう掘り出し物がたくさん見つかるんです。
―最近注目しているアーティストはいますか?
ラナデルレイ(Lana Del Ray)です。VOGUEやELLE等の海外誌の表紙にもなり新世代のミューズだと思います。アンテナを張って探しているということではないのですが音楽もファッションと繋がるので詳しくはないですがちゃんと見ておかなければいけないと思っています。ヴィデオクリップに使われている洋服は良いスタイリストも集まっていますし目の付け所が早いんです。
それに日本の雑誌も成田で必ず買ってチェックしています。お客様もいますし、どういうところが今出ているのかというのを見ておかないと勝手に自分で走ってもいけないですよね。
―海外誌はどんなものをチェックされているんですか?
クラシックかもしれませんがItalian VOGUEが好きです。スタイリングも素晴らしいですし(編集長である)Franca Sozzaniの感覚はとても優れていると思います。ページでイメージをちゃんと出していると感じます。
それに買ったブランドが出ていたりするので他の国のVOGUE,ELLEも毎月一通り必ず買っています。日本の業界紙も日本の動きを見る為にパリで読んでいます。
私の若かった頃は海外雑誌は5000円位して凄く高かったのですがそれでも勉強と思い買っていたのを覚えています。
―日本の雑誌もチェックされているんですね。それってやっぱりパリにいながらも日本のマーケットを意識しているということですか?
それは勿論です。売り上げが取れなかったらお店を続けて行くことが出来ませんよね。この難しい商材でこの売り上げだったら良いって今は言われない時代です。こんな時代ですがちゃんと利益は取らなければいけません。