Interview

G-STAR RAW / Shubhankar Ray

世界的インダストリアルデザイナーマーク・ニューソンをはじめ女優のリブ・タイラー等、様々なクリエイターとコラボレーションを行ってきたG-STAR RAWが、日本人では初となるコラボレーションを、日本を代表するファッションエディター祐真朋樹氏と行い、コラボレーションデニムをリリースした。
このコラボレーションを記念し9月には今回のコラボレーションを記念したインスタレーションがG-STAR RAW渋谷店で開催された。

今回のローンチに合わせG-STAR RAWグローバルブランドディレクターShubhankar Ray(シュブハンカー・レイ)氏が来日。G-STARブランドのコミュニケーション戦略について話を伺った。

―9月には日本を代表するファッションエディターである祐真朋樹氏とタッグを組みコラボレーションデニムが発売されました。彼をコラボレーションに起用した理由とはなんだったのでしょうか?

2008年に東京でRAW Nightsというクラブをミュージアムに変えてジャックするというイベントを行い、キュレーターとして世界中の方に参加していただいたのですがその時に祐真さんがキュレーターの一人として参加していました。その時に祐真さんと話をする機会があったのですがもの作りの考え方に共鳴する部分があり、デニムもお互い好きでしたので自然な流れでコラボレーションに至ったのです。
人気シリーズである「NEW RADAR」をベースに日本用にアダプトしてほしいとお願いしました。オリジナルの特徴を活かしながらも日本人用に裾をクロップドし、ゆるやかにテーパードしています。ジーンズにあるバックレーベルも省き刺繍だけにしたり凄くクリーンなスタイルでユニセックスに変えました。
日本には何度も来ているのですが日本人男性は丈の短いパンツを好んで穿いていますね。色んな国のストリートを見て来たのですがこれは他の国では見られない傾向ですので今回のコラボレーションによってそれが実現できて凄く満足です。
祐真さんは長年に渡り東京のファッションシーンを牽引している方ですので非常に敬意を持って仕事をさせていただきました。彼自身が日本の男性の着こなしに凄く影響を与え、東京のファッションシーンにおいてアイコンのような存在ですので、今回日本用の商品を作りたいということで彼にお願いしました。
私たちはグローカル(グローバル+ローカル)というもの作りを提唱しているのですが祐真さんと取り組むことによってローカルなインサイトを入れることが出来ました。日本用のカスタムプロダクトとしてとても良いアプローチが出来たと思います。

G-STAR RAW×TOMOKI SUKEZANE

―インダストリアルデザイナーのマーク・ニューソンや女優のリブ・タイラー等これまでにも様々なクリエイター達とコラボレーションしていますがその中でも特に印象に残ったコラボレーションはありますか?

俳優のデニス・ホッパーさんとのコラボレーションが一番印象に残っています。NYのキャットウォークでハリウッド俳優を起用するということはとても自然なことなのですが、我々のような歴史の浅いブランドにとってはハリウッド俳優であるデニス・ホッパーさんにお願いするということはこれまでにない試みでした。
キャットウォークでは彼に1900年代初頭の詩を読んでもらいました。彼は我々のDNAと凄くマッチして凄くRAWなアイコンといえるのです。私自身が元々デニスさんのファンでしたのでメールをしたら彼の自宅に招待してもらえ、そこで共同で仕事をするようになりました。彼は私にとってのヒーローでしたので、一番満足の行くコラボレーションだったと言えます。一緒に仕事をするにあたっても素晴らしい人間であり共に仕事が出来たことはとても光栄なことでした。

―G-STARというブランドがそういった様々なジャンルのクリエイター達とコラボレーションする理由はなんでしょうか?

「クリエイティビティ」ということがブランドとしてのルーツとしてありますのでミュージック、デザイン、プロダクト様々な分野のトップのクリエイター達と仕事をすることによって生まれる予期せぬ出会い、アイデア、が好きなんです。
例えば祐真さんとはデニムですがデニスさんは詩の朗読でしたし、ベニチオデルトロさんにも詩の朗読をしてもらいました、国連とも若い方たちを動かすようなコラボレーションをしたことがあります。Vitra社とはジャン・プルーベの家具を作りましたし、ボートを作ったこともあります。インダストリアルデザイナーのマーク・ニューソンとは洋服を作っているのですが彼はそれまで洋服を作ったことがありませんでした。
そういった自分たちが尊敬する方々とコラボレーションすることによってG-STAR RAWのDNAをクロスオーバーさせているのです。双方にとって予期せぬものを作り上げる。そういうコラボレーションから様々なプロセスを学ぶことが出来ます。クリエイティビティのほとんどはプロセスから生まれるのです。アイデアから商品が出来上がるまでのプロセスによって良い商品が出来るのかどうかが決まるのです。

―シュブハンカー・レイさんはG-STAR RAWに加わる以前に様々な企業で経験を積んでこられましたがG-STAR RAWというブランドに加わろうと思ったのはなぜですか?

私がG-STAR RAWと初めて出会った時にはまだブランドイメージが確立されていないと思ったのです。ブランドを再構築するような仕事をしてきましたので私が出来ることがたくさんあるのではないかと思ったのです。商品も凄く良かったですし、ビッグブランドに成長するだけのものはあるのにブランドイメージは凄くクリーンでした。ですのでブランドイメージやポジショニングを定義づけするのに良い時期だと思ったのです。
偶然オーナーに会ったのもポイントです。私自身これまでの仕事や経験もほとんどが偶然から生まれています。その中からどの偶然についていくか見極めることがその人の能力であると思うのです。あまのじゃくな人間ですので他の人に「これはやった方がいいよ」とか言われると大体その逆をしたくなってしまいます。

―G-STAR RAWの強みはどんなところにあると思いますか?

まずDNAがクリアであること。DNAというのはこのブランドで言うとRAWということです。RAWでピュアであれば変化のしようがある、それはとても大きなストレングスであると言えます。
もう一つはモダンで都会的なイメージであるということです。以前私はアメリカの老舗デニムブランドで働いた経験があり、その時はビンテージ、カントリーサイドという今とは真逆なイメージのものを手掛けていました。
G-STARというブランドをモダンでデモクラティックで都会的なデニムブランドに作り上げるということに凄く興味がありました。

―日本の旗艦店を渋谷に置いたのはなぜでしょうか?

渋谷店が私たちのブランドにとって日本での初めてのショップだったからです。それ以前にも15年間日本に通っていましたので大体の土地勘はありましたが渋谷という街は誰もがアクセスしやすい上にクールなイメージを持った街だと思います。

―G-STAR RAWにとって日本のマーケットはどういうものなのでしょうか?

デニムでいうと凄く洗練されていて一番良いデニムが揃っている特別な市場だと思います。G-STAR RAWが今後よりグローバルに展開していく為にはヨーロッパだけでなく日本やアメリカの市場でしっかりと展開していくが非常に重要なことだと考えています。
また日本ではほかの国と比べもう少し日本用のコミュニケーションをしていきたいと思っています。例えば祐真さんのプロダクトもそうですし、11月には少女時代を起用した広告が発表されます。祐真さんとのコラボレーションはアンリミテッドなリミテッドエディションでハイレベルな方に向けたものですが少女時代はマス向けでありリミテッドではありません。そういったふうに双方からアプローチしていきたいと思っています。
今の時代はSNSのインパクトも大きいですし、メディアもどんどん細分化されています。10年前は雑誌のみが重要でしたが今はウェブマガジンやブロガーたちもどんどん発信していっています。コミュニケーション戦略もフレキシブルにやっていかなければならないと思っています。私たちはグローカルを目指しています。大きいマーケットではグローバルなキャンペーンをローカライズしたキャンペーンが必要なのです。音楽にリミックスが必要なのと同じように。グローバルキャンペーンはアリゾナ・ミューズ、ローカルなキャンペーンは祐真さんと少女時代というように両方のアプローチを同時にやっていくことが大事だと思っています。

Interview & Text:Masaki Takida

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