Interview

Shaun Samson 4/4

4.『ストリートウェアはずっと存在するよ』

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—ショーンは常に自らの服を「メンズ・モダン・ストリートウェア」と形容しているけれど、それについてもっと深く教えてくれる?

視覚的に、シェイプとかはストリートウェアなのだけど、そこで使われているテクニックとかフィニッシュはストリートウェアのものではないんだ。
それに、僕はいつも現代の音楽、現代のスケートボーディングとか、現在のサブカルチュラルなことをレファレンスにしていて、決して60sとか70sではないからね。だからそれが、「モダン」な側面。
そしてそれと同時に、未来にも目を向けている。メンズウェアのネクストは何か、ってね。

—その「メンズ・モダン・ストリートウェア」っていうのは、ショーンの服をよく表現していると思うのだけど、でも時々、ショーンの服は現代のストリートウェア以上の何かだ、って感じるんだ。新しいジャンルのストリートウェアというか。適切な言葉は見つからないのだけど笑。

そう、色々な人が僕の服を形容しようとしてくれているのだけど、ほんと言葉で表現するのが難しい笑。

—ではなぜ、メンズウェアに拘るの?

僕が男性のことのほうがよく理解できているからだと思う。それに、僕は男性で、男性として育って来たから、女性の事を知っているふりはしたくない笑。

—自分のコレクションはマスキュリンだと思う?

そうだね、フェミニンじゃないと思うし笑。マスキュリンだね。

—そうだよね。そこで、そのマスキュリンさっていうのも、今のものと昔のものでは大きく違うと思うのだけど、ショーンにとっての、モダンなマスキュリニティ、この時代の新しいマスキュリニティっていうのはどんなものなの?

そういう言葉は、時代遅れなのかなって感じるよ。人々のスタイルにおいて、必ずしもマスキュリンとかフェミニンである理由はないと思う。
例えば、レディガガは、マスキュリンでもフェミニンでもなくて、両者のラインを超越したものになっているでしょ。
チュニックドレスも、そのシェイプとかはフェミニンなものとされてきたけれど、今はマスキュリンにもなり得るし。
それこそ僕たちの仕事なんだ。ファッション業界にいる人にとって、そのような新しい領域を探索して、男女のラインもあいまいにしていくことは重要だと思う。
だから今、マスキュリンとかフェミニンっていうのは、あいまいなものだと思うね。そのような状態を表現する、新しい言葉も探求する必要があると思う。

—ほんとその通りだね。メンズウェアとウィメンズウェアの違いも少なくなってきていて、メンズウェアもウィメンズウェアから沢山の要素を取り入れているもんね。でもとにかく、ショーンの服はメンズウェアってことだよね?

間違いなく、メンズウェア。男性のための服。

—そこで、メンズウェアといえばスーツがくるよね。でも、ショーンはテーラードアイテムは全くしないよね?

そう、しないというか、今まで学校でもテーライングをみっちり勉強した事がないし、テーラーで働いていた訳でもない。だから、何年も経験を積んだすごいテーラーも沢山いるなかで、僕はテーラードアイテムもできるっていう風なふりをしたくないんだ。
だからテーラリングが嫌いなのではなくて、実際テーラリングが美しいデザイナーのことはすごく尊敬しているよ。ただ、Shaun Samsonではしない。それぞれ異なる方法でファッションを探求してるってことだね。

—安易にテーラリングを取り入れるのではなくて、しっかり自分らしいことをしていくっていうことだね。

そう、まだテーラリングの事をしっかりしらないのに、そういうふりはしたくないんだ。学校で少しテーラリングのプロジェクトもしたんだけど、実際に優れたテーラーになるには、もっと経験が必要だからね。
もし僕が何かデザインして、それをサヴィルロウの伝統的なテーラーのテクニックでうまく変換されれば、テーラリングアイテムも登場するかもしれない。
でも自分一人でできるとは言いたくない。

—フェイクにはなりたくないってことだね。

そう、フェイクな事はできない。
それもセントマーチンのMAをして良かった事だね。自らのアイデンティティーについて学んで、自分が何者であるかを見せる事を恥ずかしがったり恐れてはいけない。BAのときは色々模索したけど、MAのときに、自分がカリフォルニア出身で、自分の長所を生かしてやればいいって気付いて、それがうまくいって人々が評価してくれているからね。

—では今後の目標とか、究極のゴールは何かな?

実際のところ、今の状態がとてもハッピーなんだ。あまり大きくしすぎると人々も飽きてしまうだろうし、今のままアンダーグラウンド的に、変わらず続けていきたいと思う。
でも、ディフュージョンラインとか、ブランケットとかピローとかホームウェアラインは、してみたいと思っているよ。

—それはいいね、楽しみ。コレクションの発表もしばらくはロンドンで続けると思うけれど、いつかはパリでしたいと思う?

いや、僕はこのShaun Samsonは、ロンドンのレーベルだと思ってる。だから、ここロンドンで続ける事が大切なんだ。
プレスオフィスはパリだけど、僕のレーベルはここロンドンで始まったのだし、ブリティッシュでありたいと思ってる。

—なるほど。では現在のロンドンのファッションシーンについてはどう思う?

すごくエキサイティングだと思うよ。特に、新しく始まったLondon Collections: Menは、ロンドンのことをインターナショナルに示す事ができる場だと思うし、新しい才能溢れるデザイナーが沢山いる。

—ロンドンには勿論、ウィメンズの素晴らしいデザイナーも沢山いるけれど、個人的にロンドンのメンズウェアシーンは今本当におもしろいと思うんだ。ある種のムーブメントになっているし、しかも多くのデザイナーがストリートウェアをベースにしている。

そう、それは新しいマーケットだね。オープニングセレモニーとかキャンディとか、そういうショップが、このニッチな新しいものを人々に届けてくれているから、人々もどこへ行けばそういうものが買えるのかわかっているんだ。

—どうして今、ロンドンのメンズはおもしろいのだと思う?

ファッション全体が、今はストリートウェアを見ているのだと思う。それはfacebookやtumblr、ファッションブログなどインターネットの影響で、ファッションがより皆にとってアクセスしやすいものになったから。
それにファッションは人々のエスケープでもあって、人々はロンドンやパリや東京での生活を夢見て、彼らキッズはインターネットでハイファッションだけじゃなく、スタイリストやライター、ブロガーなどファッションショーに行く人々を見ている。だから人々にとって、ショーのランウェイだけじゃなくて、ショーに行く人々のスタイルも魅力的なんだと思う。

—では最後に、もう一度ストリートウェアの話に戻って、ストリートウェアの未来はどうなっていくと思う?

うーん、わからないけれど、これからどこに向かっていくのか興味深いよね。今ストリートウェアは、すごくトレンディで人気になってきているけれど、本当にそうなってしまったら、そのうち皆興味を失ってしまうよね。だからこの流れがどれくらい長く続くのかみてみるのは面白いと思うよ笑。

—今はある意味、ストリートウェアは過度に人気になっているとも言えるよね。ショーンはストリートウェアのバックグラウンドがあって、だから今ストリートウェアをデザインしているけど、もしこの今のストリートウェアの波が過ぎ去ってしまったら、どうする?

ストリートウェアはずっと存在するよ。常に若い人々がいて、新しい世代が生まれてくる。人々がストリートウェアに飽きても、次の世代がストリートウェアに足を踏み入れる。常にそういうサイクルがある。だからストリートウェアは常にここにあるよ。
そしてデザイナーとしては、自分自身に正直でないといけないと思ってる。

—では、ショーンにとってのストリートウェアとは何?

キッズがストリートで着ているもの。ストリートで起こっているんだ。僕はキッズが遊びに出かける時ストリートで着ているものをリサーチする。学校、仕事、教会、家の中じゃなくて、外でふらつくキッズが着ているもの。それが僕の考える、ストリートウェア。
そして僕はいつも、そのストリートウェアをレファレンスしている。ストリートで人々が着ている服がインスピレーションなんだ。

—ありがとう、これで質問は終わり。色々とややこしい質問もしたけれど、僕自身時々、考えすぎるのもよくないなって思うんだ。ショーンの服を見ると、もちろんバックグラウンドも感じるけれど、同時に、ただ純粋に楽しくてかっこいいから。

ありがとう笑。でもそんなことないよ、僕はこういう話をするのも好き。自身の事を学ぶ事ができるから。こういうインタビューとかで、自分では考えない質問を投げかけられると、自分自身について見直したり考えたりすることができるから、おもしろい経験だよ。

—これで本当に終わり笑。ありがとう!

どういたしまして笑。

Interview, Text & Translation:Yasuyuki Asano Photo:Yuta Fukuda

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