Interview

INBAR SPECTOR

ロンドンコレクションでデビューして2シーズン、異端児の多いロンドンでも異彩を放つ注目のデザイナーInbar Spectorにインタビューした。

—今回はあなたにとって2度目のコレクションでしたが精神的、技術的に前回と変わったところはありますか

全てのコレクションは私自身の精神、そして魂としてそれぞれ別のストーリーを持っているの。時には以前のアイデアを違った視点からアプローチすることによって新たなアイデアを生むこともありますが。全てのコレクションは全く違ったものといえますがそのどれもに共通して腐敗した美しさそして実現することの出来ない完璧さを追求しています。

—ショーを終えてプレスやバイヤー達からの反響はどうでしたか

反応は自分の期待を遥かに上回る結果でした。中には私のコレクションを見て涙が出てきたという人もいたそうでそういうことを聞くことは私のモチベーションにも繋がります。人々の精神に触れることが出来るというのは私にとっての報酬といえるでしょう。

—コレクションのインスピレーション,背景についてお聞かせください

メインのアイデアとしては 達成することの出来ない美しさと完全さを嘲笑することの追求です。私はプロポーションと共に自惚れや嘲笑といったものを強調したかったのです。

—今現在どういったことにインスピレーションを受けていますか

ジャパニーズデカダンス(デカダンスとは衰微、衰退期を指す)からインスピレーションを受けています。ゴスロリスタイルや日本人のファッションに対するアプローチ全般が大好きです。

—私が思うにあなたのスタイルはクチュール(Haute Couture=注文服)とプレタポルテ(ready to wear=既製服)両方の要素を兼ね備えていると思うのですがクチュールを作りたいと思っているのですか,それとも何か違ったスタイルのものを作ろうとしているのですか

私は自分なりの解釈のクチュールを作りたいと思っています。確かに私の洋服はかなりクチュールから着想を得ています。ただ私見ですがクチュールという言葉は現代はあまり良い意味を持っていないのではないかと思います。私は退廃的なクチュール(decadent couture=Inbar曰くdecadent coutureとはクチュールの要素とアバンギャルドの要素を兼ね備えたもの)を築き上げることによって人々のクチュールに対する愛を思い出せることが出来ればと思っています。

—何かのインタビューであなたがメンズウェアにも興味を持っている旨を拝見したのですがメンズウェアに関して既に明確なビジョンをお持ちですか?メンズウェアを手掛けるとすればレディースに近いものになるのでしょうか

私の手掛けるメンズウェアははっきりとレディースのそれと近いものになるということが言えるでしょう。私が使用しているコレクションの多くはとてもユニセックスなものでメンズウェアではそれらを更に発展させたものとなるでしょう。

—今現在VFS(Vauxhall Fashion Scout)でショーを披露しているのですが近い将来BFCテント(ロンドンのメイン会場)またはパリでショーを行いたいと思っていますか

はい。近い将来BFCテントで是非ショーを行いたいと思っています。

—コレクションを終えてからあまり時間が経ってはいませんが(インタビューはコレクション約1ヵ月後)既に次のコレクションについてのアイデアはありますか,もしあるようであればお聞かせください。

私はもう既に次回(09A/W)のコレクションについて作業を進めているところです。しかし具体的なことについて話すのにはまだ少し早すぎます。インスピレーションやアイデアについてはプロセスやデザインを発展していく上でたびたび変わるものです。前回のコレクションと関係性はあるでしょう。しかし、よりエキサイティングで驚きを届けることが出来ると約束します。

—あなたにとっての理想的なInbar Spectorの女性像とはなんでしょう

残念ながら特に理想像というものはないんです。違った人が着こなすことによって衣服が違ったものに変化するのが好きなんです。人が衣服を着るということはその衣服に新たな意味そして独特さを加えるということなんです。人々が私のデザインした服をその人なりの解釈で着こなしてくれるのが好きなんです。

—あなたは自分のデザインするものにイスラエル人としてのルーツを感じますか

私が想像するに私の作品の中に少なからず影響を及ぼしているはずです。しかし私のスタイルがイスラエル人のスタイルだとは言うことが出来ません。私のデザインに大きな影響を及ぼしているのは(イスラエル人としてよりも)ユダヤ人としてのルーツの方がメインを占めていると思います。私の家族の多くはユダヤ人大虐殺の時にユダヤ人だという理由だけで殺害されました。そういった出来事は確実に私のデザインに影響を及ぼしているのだと思います。たくさんの人々が私の作品はゴシックだと述べますが私自身は中世のゴシックを意識したものだとは思いません。それは(ゴシックより)もっと病的なものであり希望や願望といったギャップから生まれてくるものだと思っています。

—最後にあなたのデザイン、スタイルを短い言葉で表現してください

・クチュールとアヴァンギャルドの中間に位置するもの

・ロマンチックでありそして工業的であるもの

・ダークだが人の温かさを秘めたもの



(Interview,Translation/Masaki Takida)

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