Interview

YUIMA NAKAZATO 後篇

大袈裟ですけど人が自然の一部だということを衣服を通じて意識させる

—日本に戻ってきて(JFW最終日に)CLASKAで展示を行ったわけですが反応というのはどうだったのでしょうか

今回日本では2回目の展示となるのですが、以前もクリエイションをぶつけた展示みたいなのを東京でやったことがあって、今回も同じような反応というか外国人の方がすんなりとクリエイションみたいなものを受け入れてくれるというのは感じましたね。ただ日本人の方の反応というのは一旦距離を置いて見るというか、今まで海外で感じたことの無い反応をするんですね。一瞬拒絶をするというか。不思議なことに海外から来たジャーナリストやバイヤーだとかは話しかけてくれてすんなりとクリエイションというのを認めてくれますね。一拍置く間隔が日本人の方の反応からは感じましたね。

—そこでコンタクトは無かったんですか

そういうのは外国人の方ばかりで、ここまで顕著なのかと思いましたね。自分のことを知らない人ばかりだったのでいきなりあそこに(展示が)ぽんとあって良く分からないというのもあったと思うのですが。それでもやっぱり反応してきてくれた人はいるわけで・・・

—なにか動きはありましたか

チェコ人の方がいてチェコでショーをやらないかという話とか、海外系の雑誌の人は写真を送って欲しいとか、展示をしたいとかそういう話はあったんですが日本からの話というのは残念ながら全く無かったですね。

—お店に置くという話はなかったのですか

あったのですが結局価格が問題で無しになってしまったんです。

—東京と海外でやってみてどうですか

学生の頃はそういう反応になるというのもわかっていて、(学生の頃に)一回東京で出したことがあったので。だからこそ東京でそういう反応の中戦っていくのがベストなんだろうなというのがあって。やっぱり東京でやる意味があるんだと思って帰って来たのですが、自分の今の規模と持ってるエネルギーを考えると、そこでエネルギーを削がれてしまうっていうのでなく、もっと作品にエネルギーをぶつけないと太刀打ちできないというのがあって。そういうのでこのまま東京で見せていくというのにちょっと疑問は出てきていますね。やっぱりそういう反応の中でやっていくのは精神力を使うので「自分がやってることは正しいんだ」というのは時にフラストレーションが作品に(いい意味で)転嫁されたりとかもあると思うんですけど精神力を使うのでちょっと模索段階ではありますね。

次のシーズンはパリでショーを行うんですよね

その予定です。具体的に決まりつつはありますがまだちょっと言えませんね。マイペースさと少しずつ階段を昇っていくことは忘れてはいけないと思っていて、焦らずに自分のペースで行きたいですね。

—自分のデザインアイデンティティというのはありますか

一番影響を受けているのは自分の両親なんですね。両親と共に(芸術家として)もの作りをしていてそれだけで(金銭的な面で)生活が出来ていてそういう環境にいたというのは自分の中で凄く影響になっていますね。

その中でも最も影響を受けたのは(小学生から中学生の頃に)自分の家の近くの森が少しずつごみ処分場になっていくのを見たことで。そこには絶滅危惧種とか生息していてごみ処分場をつくってはいけないという法律があるにも拘らず権力で自分の大好きな森がどんどんごみ処分場に変わっていくのを目の当たりにしたというのが自分の中でインパクトが大きくて。その記憶というか森が無くなっていくというのは安易にいわゆるエコとかナチュラルとかいう言葉は出したくないのですが根っこで一番自分の中心になっていて、自然からインスピレーションを受けて作品に転嫁するというのはいつも自分の中の軸となっています。でもそれを 安易にうたいたくなくて。だからコンセプトを聞かれたときにはそこにはあまり触れないのですが。卒業コレクションを作るときも屋久島に杉を見に行ったんですね。そこからコレクションがスタートして木が一番大きなテーマだったからそれを軸にコレクションを立てたくてコレクションのタイトルは「Wooden Dimension」で木の要素をそこに出したくてただ安易にそれはコンセプトに出したくなかったんですけどそこはデザインのアイデンティティで物作りの原点になっていますね。

—デザインをする上で最も重要な点はどこでしょう

大袈裟ですけど人が自然の一部だということを衣服を通じて意識させる。衣服を通じてどこまでそれが重要かという人はいると思うんですけどただ自分の表現手段が今は衣服なのでその中で最大限表現して発表して。すぐにはそれは伝わらなくてもいいと思っているんですけど徐々に時間をかけて伝えて行きたいなと思っています。

ファッションてだけでなく衣服を通じてみんなに何かを伝えたいってことですか

安易に取られたくないので少しずつ表現方法を探りながらゆっくりと考えていこうとは思っていますが。ものをつくること、生み出すことは環境問題と矛盾していて、矛盾を抱えながらものをつくっているんですけどそこは自分が表現するということで、精神的に思いを込めるということで許してもらうじゃないですけど、良いものを作ることでどうにか矛盾を認めてもらうというか・・・

—次回はレディースでショーをやるんですよね。

次回はレディースで靴とアクセサリーとトータルでやります。

—メンズコレクションというのは考えていませんか

メンズも将来的にはやりたいなと思っているのですが今のところすぐにメンズをやろうというのはないですね。

—コンセプトありきのデザインですか、それともデザインありきのコンセプトなんですか

まずインスピレーションを得て、コンセプトが出来上がってデザインが出来上がっていきますね。

—それはいつも一緒ですか

いつも同じですね。

—今後の活動予定を教えてください

6月の頭から7月の頭までなんですけど(オランダの)アーネムモードビエンナーレに参加予定です。最初靴だけということだったんですけど洋服も含めトータルでということになりました。

—それまでに新作を作るということですか

前回の卒業コレクションをそのまま持っていって出すという感じですね。6体のトータルコーディネートでそれと同時にアントワープの靴屋ココドリロというところで販売とインスタレーションをやって更にゲントという街で、街をあげてのファッションのイベントがあるのですがそこでインスタレーションをやるというのがありつつ、あとは次のパリに向けて作品制作に集中するために断ってというか時間を作ってですね。

—今あげたのは全て自分で行くんですよね

そうですね、自分で行きます。でもそれは全て6月にまとめてやってしまってという感じですね。

—向こうでも勿論デザインするわけですよね。

デザインもするし知り合いのモデルを使ってフィッティングもしたいなというのはありますね。

—今後の展望を教えてください

ひとまずはパリにぶつけてその後はまだ考えてないですね。少しずつ少しずつやっていきたいです。
HP – http://www.yuimanakazato.com/

(Interview,Text/Masaki Takida, Photopgraphy/Takahito Sasaki)

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