Interview

unruly 前篇


限定ショップなどコレクション(ランウェイ)とは違う舞台で着実にファンを広げているブランド「Unruly」。春夏という季節を経て大人になった少女を描いた新作コレクションが並べられた事務所にてデザイナーの菊地勇太氏に話を伺った。

—男性でありながらレディースの服をデザインするのはなぜでしょう

面白いからですね。自分にとってあまり現実的じゃない感じがするので。そういう理由が大きいと思います。無限に形もありますし。自分で着ると「あ、こうやった方がいいな」と思ってしまう部分がないんですよね、レディースに関しては。

—着れないからということですか

着れないと言うよりは(自分で)着ないからですね。

—男性のデザインする女性の服ですがそういったことで何か意識されることというのはありますか

レディースということを特に意識してはいないんです。たまたま(洋服の)垂れてる感じとかドレープの感じとかを作っているのが凄く好きでやっていた結果こうなったという感じですね。

—それがレディースの服だったと

そうですね。ただ自分の好きなものを作っていたらこうなったんです。勿論今はお客様がいるので着てくれる人のことも考えますが。パンツとかスカートとかは女性が履くものなのでちゃんとした原型を作ってやっていますが他の(アイテム)は原型等もありませんので。

—デッサン(デザイン画)は書かれないんですよね

そうですね。パターン用紙に書いて、それを組んで、切ったりしてみて、また紙の上において書いてみたいな作業の繰り返しですね。

—今回のテーマ)09A/W)についてお聞かせください

春夏の延長なのですが春夏は桜の季節の話で中2の女の子の話だったんですがその子が(春夏から秋冬という季節をまたいで、月日を経て)歳を重ねた感じのイメージが秋冬になります。その期間で思春期の女性がどれだけ成長したのかというのをイメージしました。

—特別中学生をイメージしているというわけではないんですよね

中学生の見た目というよりは精神的な部分のことですね。甘酸っぱかった女性が春夏の季節の間に色々覚えてきて少し枯れてきたというか、言い方は悪いですが(短期間に)色んなことを知ってしまったという感じですね。

—それが色にも反映されているということですよね

そうですね。春夏は桜の色をイメージした明るい色味だったのですが、秋冬はそれにだんだん茶が入ってしまったみたいな色を出しています。

—デザイン的にはどう反映されているのでしょう

全てにおいて細身になっているのと(秋冬というのもありますが)体を出す分量が(春夏に比べて)減っていますね。

—女性としても成長したからですか

そうですね。(例えるのは)難しいですが。枯れたというよりは成長して色んなことを知ってしまい、人生楽しいことばかりではないと。

—随分大人びた中学生ですね

そうですね。別に中学生でなくても構わないのですが(色々経験して)季節をまたいだ女性というのは春夏のときとは絶対違うと思ったので。中学生についてはピュアさ加減が一番かなと。どきどきするというかそういう感情を持っていることが大事だったんですよね。

—デザインをする上でイメージする女性像とはありますか

ないですね。服が出来上がってきてからモデルを決めるのですが結果的に毎回こういう人が似合うんだなっていうのはありますけど。

—それはどういう感じなのでしょうか

その時々によって違いますが(肌が)白い人が多いですね。全部服が出来上がってこういう人がいいなって考えたときに浮かんでくるのがいつも白い人なんですよね。ピュアそうな人もそうですし、ピュアそうに見えて少し悪いことを考えていそうな人もそうですし。

—では顧客像をイメージしてデザインすることはありますか

それはしますね。言われる事もありますし。ただそれがデザインに反映するのは1割くらいですね。卸をやっている以上どんなにお客さんのニーズに答えても(たくさんのお店があって意見は)全部違うので、自分があってそこから意見をちょっとずつ生やしているみたいな感じなので結局(Unrulyという)土台を崩さなければなんとかなるのかなとは思いますね。そこで買ってくれないということはそれは単純にうちの洋服が気に入られなかったんだなという風に思えるので悔いが無いというか。

—ブランドをはじめて3年経ったわけですがビジネス面やデザイン面などなにか変わったことはありますか

服を作りやすくなりましたが服を作る時間は減りましたね。それ以外の他の仕事が増えたので。納品もそうだし、お金の管理もそうだし、イベントの準備にしてもそうですし。(ブランドを)始めたころはパターンばっかり引いていましたので。当たり前なのでしょうけどそれ以外にしなければいけない仕事が増えたなと。

—でもその短い時間でもデザインを出来るようになったということですよね

それはやっぱりUnrulyというブランドが蓄積してきたからというのはありますね。自分のなかの決まりがブランドをやってることによってどんどん出来てきたので。なんとなくこのくらいのカーブが丁度いいんだなみたいな。昔はカーブだとか切り替えとかに凄く時間を割いていたのですがそういうのが無くなりましたね。

—どういったところからインスピレーションを得ているのですか

別に無いですね。美術館とかは良く行きますがそれはそれなんですよね。面白いなとか素敵だなとかは思いますが直接服に繋がるというのはないです。

—ではどういったところからデザインが生まれてくるのでしょうか

無意識にそういったことが蓄積されて作る時期に出てくるのかもしれないですね。自分の中から出てくるものだけであれば少ないと思うので、日常で本読んだり、美術館行ったりというのが少しずつ蓄積されていっているのかもしれないですね。

—シーズン毎のテーマというのは先に決めるのですか。それとも洋服が出来た結果のテーマなのですか

テーマを決めるのは最初ですね、想い出みたいな感じというか、理想像というか。例えば中学生の時に自分は本当はこうしたかったけどこう生きてたなって思ったら、自分がその時思い描いてた理想像を洋服で表現してみようかなと。

—でもデッサンはしないんですね

そうですね。自分でパターンを引くのでする必要がないんだと思っています。誰かに見せるのであればいるのでしょうけど。

—頭の中にあるイメージを忘れたりとかはないのですか

それはないですね。自分はパターンをするときは一気に引くので。型数もそれほど多くないですし。次回は多分もう少し増えると思いますけど。

続く

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