Interview

災害とクリエイション、デザイナー達の今 vol.2

“今回の出来事であなたのクリエイションに変化を与えましたか。また今後なにかしらの影響はありますか”

元々震災が起こる前から「人に何か刺激を与えるものを作りたい」と思ってやっているので震災で特にどうこうというのはないというのが正直な意見です。震災があったから何かするというのも悪くないのですが僕自身は震災にあう前から死ぬ気でやっているので今もし明日何かが起きて死んでしまったとしても特にどうってことはないくらいに思っています。
でもそういうことが起きて改めて考える人が周りに増えたから自分も改めて考えさせられた部分はあったと思います。ただ特に直接的にということはなく間接的にですね。
僕らはルックブックの撮影をしている時に地震が起きてガラスが割れたりしたくらいで撮影も出来て、展示会も予定通り行っている。経済を止めちゃいけないからどうのこうのってみんなやってたりしますけど僕は一生懸命服を作っている。その服を見てもらう為に展示会をやらないなんてそんな馬鹿なことはないと思っています。勿論経済を止めてはいけないという思いの為にやってる人も良いと思うし、確かにそれも一理あるなとも思うんですけど。
ただ地震が来たから特別どうこうっていうのはないし、初めから地震があっても平気なくらい悔いなく生きて行こうよくらいの気持ちはあります。だから僕はチャリティをするつもりもありません。
WHOLE COSMIC WHOOP Director / TATARImokke / 西家康隆

こういうことがあって展示会を開いて良いのかどうかということも話しあいました。でもやっぱりこういう展示会を開くことによって、東京で発信しているんだっていうことを示さなければいけない。ファッションでも街おこしをしたい。ファッションで出来ること、ファッションショーであったり、経済活動をやっていますよということを訴えたいという気持ちもある。
ただ今の日本ではやりたいことは出来なくなってしまう。根本的に私は原発に対する反対ということを言いたい。その問題がなくならないと例えば洋服も海外に持っていけなくなるし、放射線のチェックをしないと出せないとかファッションにも多大な影響がある。日本は原発は絶対に大丈夫だということでそれを作って結果的に失敗してしまった。「原発は失敗です」ということを認め、それをなくして生きようということを発信してくれないと毎日原発のことをチェックして不安に思って生きないといけない。そんな状況では本当はファッションどころではない。自分は海外でやるというよりも日本で生きて日本で生産拠点を持って日本のモノ作りを海外の人達にも評価してもらいたい、だから日本でやりたいという思っやってきたのにその日本がこんな状態だったら凄く悲しいこと。だからもう少し日本人、一人一人が原発の問題に対して考えて欲しいし、そういうことを定義することとしてファッションショーがあっても良いのではないかと思っています。
この件で私のパートナーと電話で話をした時「今はそういうことは言うのは早すぎる。まだ被災者のこととかもっとやることがある。今はそんなことは言ってはいけない」と言われました。でも私はそうじゃないいまだからこそ言わないとと思っています。
以前私は原発のデモに参加したこともあるし私が二十歳の時にチェルノブイリの事故があったんです。その時も「原発って何だろう」って考えた。その時は英語学校に通っていた時期で原発の話をディベートしたりしたのですが日本ではそういうことは話してはいけない雰囲気があった。それは凄くおかしいと思う。根本から日本は変わっていかなきゃいけないと思う。それって凄くファッションにも繋がっているのではないでしょうか。周りと同じ洋服を着ようとか、着なくちゃみたいな風潮があったりする。そうじゃなくてやっぱり一人一人が個性、「自分はこれが着たいんだ」とか「自分はこういう意見だ」そういうことを言う為に洋服もあると思う。今は変わらなきゃいけない時だから自分も何を言われてもはっきり言いたいことを言いたい。
そういうことを言いたいと思ったのもクリエイションの変化ですしショーをやりたいと思ったのもやっぱり今回の事が凄く大きい。元々はインスタレーションを予定していたのですがショーで言いたいことを伝える。それは元々今回のコレクションで言いたかったことにも繋がっています。「Let it Be」(なすがままに)ということなんですが、瞑想で昇華をする、瞑想で無になる。そういうエレメントを落として洋服を作っています。無になる時もあるし、言わなくてはいけない時は言わなくてはいけない。両方のチョイスが必要だなと言うことを凄く思った。でもそれを過激じゃない形で言いたい。白い洋服のコレクションの時は強さを表現したのですが、もっと柔らかい部分で原発に対するメッセージをショーで伝えることが出来たら良いなと思っています。
HISUI / 伊藤弘子

自分自身としてはまだ作るモノに対して目に見える形で出てきてはおらず考えることは多くあるけどモノ作りに対して何かが変わって来ているという感覚はありません。ブランドを始めてから1年が経ち発表が出来ていない時期が長いのですがその期間の中で作りたい洋服に対しての意思が変わって来ている。やっと自分の作りたい物が固まってきたところなのでそれを崩したくない。生活の中でのファッションというものを市場と触れることによって、学生を終えて、やっと考えれるようになった。だからこれからは生活の中でどういう洋服が活躍できるかというのを考えていきたいと思っている。その展開の中で困っている人に自分の持っている力で何か協力出来るかいずれ考えることが出来ると思う。しかし今の段階では具体的な形で協力出来るかというのは見えないでいます。
自分自身のクリエイションを信じて発表していくことが被災者の人達に対しての応援になるという意見もありますが自分は正直そうは思えない。被災者がいてその周りでそれを心配している人達がいてその心配している人達の輪の中だけで盛り上がっているような感覚があるが自分自身はそういう感情にはなれない。
ただブランドという会社としての社会的な責任としてどんな形であれメッセージを出して発表していってるブランドは素直に凄いと思います。
Junya Suzuki / 鈴木淳哉

個人で出来ることはあるのかもしれないですがそれがクリエイションに影響することはないです。以前あるブランドにいた時に新潟の震災で生地屋さんがなくなってしまったという話を聞きました。東北もシャツの工場が多いのでその中で出来ることをしていけたらと思っています。
元々ファッションに求められていることってそんなにたくさんではない。ただその中でもファッションなりに出来ることはあるのかなとも思っています。
Luciole_jean pierre / 大塩純平

One Response to “災害とクリエイション、デザイナー達の今 vol.2”

  1. Yosshi  より:

    ファッションには、できることがあります。
    金でなく、マインド、五官、夢を上げること。
    この震災で、何が、デザイナーにとり、大切か、
    考えさせる、機会と自分自身でも、思います。
    ファッションをやるとは、あくなき、人間の追及です。
    災害、戦争、あろうが。松野