Interview

POTTO “ワイルドスタイルとか恐山” 4/4

“コンセプトがないことってシンプルだけど実は凄い難しいことで”自分が問われる“。言葉でコンセプトにすると基準が建てられる。伝えやすくもあるしわかりやすい。でも僕は「良く分からなかったけど感動した」みたいな感情的なもの、感覚的なものの方が良いと思う”

→POTTO “ワイルドスタイルとか恐山” 1/4
→POTTO “ワイルドスタイルとか恐山” 2/4
→POTTO “ワイルドスタイルとか恐山” 3/4

―次回のタイトルは決まっているんですか

タイトルは全然決まっていないんですがやりたいことはもう既に決まっています。今回のショーとは関係はないんですけど関係はあるんです。

―全てのことは繋がっていますからね

本当にそうなんです。
でもみんなと同じようにやらないとあいつちょっと違うみたいになってしまいますよね。

―いやもう既になってると思います

そうなんですか?そこばかり言われてもそこは違うんですよね。変な括りがありますよね。ブランドとかもよくわからないです。難しいですよね。色々思うことはあるんですよね。言葉に出来ないだけでイメージはあるんです。違うことをしようと思ってやってるわけではないし、ただ自分が良いと思うことをやっています。でも邪魔している人みたいに思われてる気がします。

―それはないと思いますよ

「みんなでやりましょうよ」って流れがあるのに僕は外れてるみたいな。でもJFWが嫌だというのはないです。否定的な感情もないです。会場などの規制がなければ僕は別に参加しても良いと思うし、全体で盛り上がった方が絶対に良いと思う。でもファッションシステムやファッション業界みたいなものは無くなっても良いかなと思います。でも結局僕は喋れないから服を作っているんです。

―服を通して伝えたいことがあるということですか

それは定かではないんですけど・・・・

―でも今回のショーのムードは凄くハッピーな感じがしましたね

それは僕が作ったものではないですね。「そうなるのかな」という想像はあったんですけどあの空間は自分が意図的に作ったものではないんです。「楽しくしてください」とも言ってないですし、人の力なんですよね。勿論違った結果にもなり得たし。

―ある意味お客さんが作った空間でもありますよね

そうなんです。それはみんなが好き勝手してたということじゃないですか。何も押し付けられてないというか。結果的にそうなっただけ。

―自分的にはどんな空間になったと思いますか

良かったと思います。思ってたような感じかな―・・・?自分がコントロールできない部分を信頼したという感じかなと思うんです。ディレクションする人がいて色々規制があってそれに向かうというのは僕は面白いとは思わない。僕はその枠を超えないと新しかったり、面白かったり、良いなと思うモノは出来ないと考えている。でもそれをやるのは一人の人ではなくて偶然がうまく重ならないと出来ないことだと思うんですよね。

―それは服を作り始めた当初から大事にしてきたことなんですか

最初はそういうのがわからないままただ服が作りたいということで作っていた。でも「それでは駄目だよ」って色んな人に言われたんです。「コンセプトを持て」とか「意味をもて」とか「なんでこの襟はこうなるんだ」とか。理由はないんですよね。それはそれが良いと思ったからであって無理やり理由を付けようと思えば付けることは出来る。でも「それが良いと思ったからこうした」では駄目だと言われる時があるんですよね。そういうことを偉い人とかに言われると「そうなのかな」って。色々考えて、やり始めるんだけど、結局僕の中ではそれでは全然作れない。作っても面白くない。それは違うんじゃないかと思って意味のないことを駄目とせずに「自分が良いと思ったから」それで良いんだっていう部分を積極的にやるようになった。

―そうなったのは結構最近ですか

それはもう何年も前ですね。今はそんなことは言われないかもしれないけどコンセプトが大事と言われる時代があった。それで僕は2年くらいまともに洋服を作れなくなった時があった。コンセプトなんかいくらでも後付けで出来る。コンセプトに縛られてたまたま出来た良いものとかを捨てるのは違うんじゃないかって。理詰めで出来た良いものよりたまたま出来た良いものの方が僕は信用出来る。そういうのって理屈じゃないんですよね。出来る時は出来るし、出来ない時は出来ない。そういうのが恐山ということです。出来たモノを見逃さない。

―コレクションブランドはコンセプトを強く打ち出してやってるところの方が多いですよね

そうですね。それは僕が思うにそうやった方がわかりやすいんですよ。今回は明確にそういったコンセプトがない中で物作りをするのは実は凄い難しかった。出来たモノをどう扱うかっていうことなんですよね。これで良いのかどうかっていう。それがコンセプトがあると「これは合わないから駄目」、「これは合ってるからいい」って分けることが出来る。コンセプトがあるからって良い悪いじゃないと思う。コンセプトがないことってシンプルだけど実は凄い難しいことで”自分が問われる“みたいな。それを言葉でコンセプトにすると基準が建てられる。伝えやすくもあるしわかりやすい。でもわかりやすいということはある程度の枠があってそれは超えられないなって思うんです。そのコンセプトに共感したところでそれ以上のものは出てこないんですよね。「良く分からなかったけど感動した」みたいな感情的なもの、感覚的なものの方が僕は良いと思う。

―見る人の感想も入った時間帯によって今回は違う気がします。人がどれだけ入ってるかによって空気も違って感じただろうし

最初の方に来た人は物凄く難しい顔をしていましたね

―それ凄くわかります、あの狭い空間にあれだけのモデルがいてお客さんの方が少なかったら何していいかわからなくなりますよね。後半は人が多かったしお客さんでPOTTOを着ている人もいたので誰がモデルかわからなくなっていましたね

でもその人もきっとモデルだったんですよ。なんでもいいんですよ。色んな人がいた方がいいんですよね。
でもあんなに人が来てくれたというのは凄く嬉しいこと。3時間って長いなと思っていたし「Sっぽい」とも言われてたし、「1個のことを3時間もやるなんて何地獄だ」とかも言われてたんですけど思ってたよりすぐに3時間経ってましたね。

―3時間という長さはなぜだったんですか

そのくらいが丁度良いかなと思ったんです。短すぎると来づらいし長すぎると誰もいない時間が出来たら嫌だなって。

―あれをケースに入れて周りをお客さんが見るという形だったら全然違う印象になっていましたね

そうですね。そうしたら全く違うモノですね。博物館じゃないけど、観光記念館みたくてそれだったら単なるエゴですよね。今回のショーはモデルの人とお客さんはあまり境目がない。本当は試着室も用意していたので着てくれても良かったんですよ。

―その着る為の服はあったんですか

モデルの人が脱いでその脱いだ服をお客さんに着てもらうんです。

―今回はああいう形で見せましたがあれ以外にも空間の案はあったんですか

最初はありましたね。マネキンを使って1日中やるという。その中でモデルをいる時間を決めて。でもそれはもっと展示よりなもの。服だけの時にお客さんが来て鏡が置いてあるからそれを着ることが出来る。基本的にお客さん参加型ということに変わりはないです

―僕は最後までいなかったんですが最後まで残っていた人はいたんですか

それなりにいたんですが最後はヌケメ君のカラオケ「Say Yes」で終わりました。

―400人も来たそうですが今回のショーで人が来てくれる、たくさんの人がPOTTOというものに興味を持っているというのはわかりましたよね

いやそんなことはないです。お店には不思議なことに全然きてくれないんですよ。「わらけるわ―」って(モデルで出たVISIT FORの)西脇さんに言われました。

―でもお店って毎日行くわけではないですよね。ショーはそれに比べたら特別な日だから「行かなきゃ」ってなると思うんですよね

でもショップには僕がいますよ。悩み相談とか受け付けるし恋愛相談にものりますよ。パターンの相談もそう。言ってくれたらなんでも。責任は持たないですけど客観的に良いことは言うと思います。背中押して欲しい人は押します。何か作ってたりするけどそこは気にしないで欲しいし、僕も気にしない。「連絡しないで来ちゃってごめんなさい」みたいな雰囲気になる時もあるんですけど全然大丈夫です。開いてる時は常に開かれてるのでどんどん来てください。用事がなくても来てくれて嬉しい。人がいて狭い時もあるし、忙しい時は恋愛相談とかも若干いい加減になる時もあるかもしれないけどそこは気にしないで欲しい。でも基本的にはちゃんと考えます。

このインタビューでは「また(ショーを)やりますよ」っていうことと「(イベント等)呼ばれたら行きますよ」ってことは伝えたかった。何かまだ他にも伝えたいことがあったような・・・でもわからないのでとにかく僕は服を作りつづけます。それが恐山ということです。
でも結局作りたくない時も服を作るんです。

―作りたくない時でも作るんですね

作ってしまいますね。病気みたいな。それってもう自分の意思じゃないんですよ。作りたいときだけ作れるなら幸せなんですけど全然そうじゃないんですよね。

最終的に僕はみんな好きですということです。

―人類みな兄弟ということですよね

兄弟ではないですね。ただ動物だけでなく虫も好き。ゴキブリは嫌いですけど。

Interview & Text:Masaki Takida, Tomoka Shimogata

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