Interview

小野智海 ~名前の無いブランド~ 1/2

先日_______の3回目のコレクションとなる2012 S/S collectionを発表したデザイナーの小野智海氏。「形を作ることだけがデザインではない」という、「デザインとは何か」を問いかけるアイテム。そもそもこのブランドにはブランド名は無く、ブランド名の所にはテクストを黒く塗りつぶしたような棒線だけという斬新なコンセプトを持つブランド。

デザイナーの小野智海氏は東京藝術大学美術学部芸術学科卒業後、渡仏、Ecole de la chambre syndicale de la couture parisienne卒業。Lefranc Ferrant、 Maison Martin Margiela で経験を積み帰国。その後2009年に自身のブランド_______ を設立し今日に至る。今回は小野氏と謎に満ち溢れたブランド_______に対しインタビューを敢行。小野氏が体現する表現や思考内容を掘り下げることを試みた。

→_______Untitled title.№2
→_______Untitled title.№3

―なぜブランド名がないのでしょうか。お店に置くときもメディアに露出する時も不便なことがあると思うのですが。また今後ブランド名を付ける予定はありますか

ブランド名を持たないことは、一つにはブランドとしてのアティチュードを示すために、また複数性や多様性を保つために、そして共感を通した理解によって結びつけられる何かであることを望むからです!ブランド名を付ける予定はありませんが、メディアや流通に関してはアイデンティファイできるように流通用のコードを設定していきます。

―文化服装学院を中退後、東京藝術大学美術学部芸術学科を卒業しています。結局ファッションデザインという表現方法を選んだのはなぜでしょうか。また芸術大学ではどのようなことを学んだのでしょうか

文化服装学院では、服を作る上での基礎的な技術を学び、大学では、美術史や美学などの理論を主に学びました。美術理論を学ぼうと考えた理由は、ファッションを別の視点から捉え、制作の方法論を検討するためでした。表現方法としての、ファッションという選択は変わっていません。

―美術理論を学んだことによって、ファッションの捉え方に大きな変化はありましたか。

理論を学んだことは、ファッションを分析的に理解する上では助けになっていると思います。しかし、ある理論なり思想を知ると言うことは、根底にあるその作者の感覚や感情を捉えること、作者の生に触れるような経験として理解することだといえます。理論を分析の手法として理解することよりも、その様な経験として理解することによってこそ、思考することの土台が作られ、またファッションに関する捉え方も作られるように思います。

―なぜマルタンマルジェラだったのでしょうか。またマルタンマルジェラではどのようなことを学び、今の作品作りに影響しているのでしょうか

マルジェラに関しては、彼の服や考えに興味を持っていたからです。マルタンや彼のチームからは学んだことは多くありますが、最も学んだことは、公平さやクリエーションに対する勇敢さと言った姿勢だと思います。マルタンとそのチームと共にクリエーションに関わることが出来たことは、とても幸せな経験でした。

―その他影響を受けたクリエイターやカルチャーはありますか

影響とは、日常的な事柄や自身を取り巻く事柄との関係であり、服を作ることはその関係の中から生み出されていくものだと思います。一つ一つを取り上げることは難しいですが、服を作る上で、一つの表現に至る背景や文脈は、ファッションのみならず、多くのジャンルの中に、たとえば或る一つのテクストと街で見た光景の中にある繋がり、、、また様々な時代の空気に感じられる繋がり、それらの或る共通性の中から見出されます。それは、日常的な経験の中の多様なものから導かれるものであり、様々な影響=関係の中で培われるものだと思います。また、何かを通して見知らぬ遠くの人同士が影響=共感し合えることは、とても素晴らしいことだと思います!

―どのようなところからインスピレーションを得られるのですか

インスピレーションを何かから得ると言うことは、あまり重要ではありません。自分を取り巻くものへの感覚的な理解と反応と言う意味においては、作ることはむしろrespiration=呼吸し、perspiration=発汗することであり、時に他の人とconspire=息を合わせることの一連の運動だと言えます。inspirationとは、その過程で感じる時に偶然を含んだ瞬間だと言えます。それは、小説の一文であれ、あるいは壁のシミであれ、様々な所から得られます。私にとっては、何ということよりも、考える環境、たとえば地下鉄の車内の様な流動的な環境、に身を置くことから始められます。そして、何かをaspire=熱望することの方がむしろ重要だと考えています!

―ショーブランドにかかわってきましたが自身のコレクションのプレゼンテーションの仕方について展示会形式だけでなくファッションショーや、インスタレーションのようなことは考えていますか

はい。それはどのような形かは分かりませんが、、、将来的にはイメージを共有する方法として、様々なアプローチの仕方を提示していきたいと考えています。

―洋服を作る際、性別というものを意識した服作りをされていますか

A 服をめぐる性別には、色彩、素材、柄、仕立て方、アイテム、フォルムやシルエットにおいてそれぞれに性に応じた違いがあります。無論それらは、恣意的なものであり非常に緩いグリッドではありますが、時に非常に強く作用する時もあります。男らしさや女らしさと言った服による雰囲気としての性別の表現は、個々の認識や肉体的特徴によって、またアイテムの取り入れ方によって異なった表現になります。性別とは個人の生を表現する上での選択と態度の問題だと思いますが!服を作る上では、肉体的特徴による構造の解釈や一つのレトリックとして意識しています。

―コレクション№2のルックブックは洋服以外のものでの表現も多く、シーズンのイメージと言うよりはブランド自体の世界観を表現したイメージブックのような気がしました。このビジュアルのコンセプトを教えてください。なぜこのようなものを作ろうと思ったのでしょうか。また構成や演出、肉等の掲載するモノ、モデル選びなどどこまで小野さんの意向が反映されているのでしょうか

確かに、ルックブックと言うよりはイメージや方向性を示したものと言えます。概念としては、本と言う形式によるプレゼンテーションだということです。なぜかというのは、イメージや考えが共有されることを願ったからです。モデルやモチーフの選択、構成や演出などは共同作業の中で作られたものです。幸せな共同作業においては、個々の視点がうまく反映されながら同時にその境界は曖昧なものとなりますが、私自身の考えは十分に反映されたものと思います。

―コレクションを作る際最も重要な要素はなんですか

自由であること、ブレイブであること、そしてハッピーであること!

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