Interview

Peter Jensen ~10年を経て クリエーションとビジネスの交点~

先日、Peter Jensenがブランド設立10周年の記念展で来日した。会場には25体のアーカイブコレクションを展示。また、10周年を記念して今までのPeter Jensenの歴史が存分に詰まったオリジナルブック「Peter Jensen &…」が発売された。
Peter Jensenとはデンマーク生まれのデザイナーPeter氏がウイメンズコレクションを2000年にスタートさせたロンドンブランド。パリメンズコレクションでのデビューからすぐにロンドンにショーの場を移し、今日に至る。コレクションには毎回ミューズを設定し、彼女達のモチーフをデザインに落とし込んでいる。またTOPSHOP、TOPMAN、FRED PERRYなどさまざまな有名ブランドと定期的にコラボレーションを展開していることでも注目を集めている。今回はデザイナーPeter氏に10周年を迎えての率直な感想など色々と伺ってみた。

―ではまず10周年を迎えてどのような心境かお聞かせください。

今年の11月18日、ロンドン、ヴィクトリア&アルバート博物館がデザイナーを招待して館内でファッションショーを行うイベント「ファッション・イン・モーション」が開かれ、私もそれに参加しました。そこでPeter Jensen の10年を振り返ることができる回顧展的なランウェーショーを行ないました。今回の日本でのイベントはこの回顧展の再現でもあります。10周年という歴史が生み出したアーカイブを見ていると、それぞれミューズを変えているため、各々が独立したコレクションであると自分自身でも思っていましたが、実際見かえしてみると赤い糸で結ばれているような感覚があり、シーズンを入れ替えてスタイリングをしても違和感なく仕上げることができたことは自分としても新たな発見でした。あとは10年の中で様々な方との出会いもありましたし、私はかなりのハードワーカーなのですが(笑)、今回改めてこの仕事が好きだということを実感することができました。

―今回10周年を記念して今までのPeter Jensenの歴史が存分に詰まったオリジナルブック「Peter Jensen &…」が発売されますが。

10周年を迎えたということで、それを形にするものは何かと考えたときに、見えるし、保存できるしということで本を選びました。あと売れるという理由もありますが。笑
本を作る上でやはり全体の構成をこと細やかに考え組み立てていかなければなりません。そのため今までのコレクションだけでなくプレスブックやインビテーションなど全ての資料に目を通しました。これが非常に大変で、とても困難な道のりでしたが、結果素晴らしいものができてよかったと思っています。また今後第2弾を出すという機会に恵まれればアイディアもたくさん沸いていますし是非やりたい仕事ですね。

Peter Jensen 2012 S/S Collection

―2012 S/S collectionについて教えてください。

今回のテーマは「NINA」になります。これはNina Simoneからきているのですが、彼女の人生における態度といいますかそういうところに興味を持ちこのテーマにしました。基本的にミューズ選びは分かりやすい人物ではなく、ちょっと世間とずれていたり、はずれていたり、ダークな一面をもっていたりといういわゆる個性的人物を選びます。NINAはそれにぴったりだと思い選びました。特に惹かれたエピソードがありまして、ご存知だと思いますが彼女はクラシックピアノを勉強してきたジャズシンガーであるのでピアノの練習をします。ある日近所の方がピアノの練習を邪魔したらしく、怒ったNINAは相手に銃を発砲して脅したというのです。それほどのストイックさを持っている彼女に魅力を感じました。また彼女はアフリカ系アメリカ人ですので、アフリカのものも取り入れ、加えて彼女が実際着ていたストレートでクリーンなシルエットのアイテムを作りました。
今回のショーは小さなプレゼンテーションという形で、生のピアノ演奏を交えて行ないました。空間作りが自分としてはうまくできたと思っています。

―10年経って、クリエーションの面で変わった点と変わらなかった点を1つずつ教えてください。

まず変わったことは、全てにおいてペースが速くなったことですね。コンピューターの進化であらゆる仕事がペースアップしました。ですので考える時間であったり、作品に落とし込む時間であったり、期中のアイテムが増えてきて仕事量が増加したり、コレクション数も増え、尚且つオリジナリティーを出しながら生産しなければいけなかったりと本当に忙しくなりました。
変わっていないことはクリエーション自体のプロセスは変わっていないと思います。さらに一緒に作り上げていくチームですね。グラフィックデザインを担当してくれているチームとも10年一緒です。

―ではモノを作る上で大切にされていることは何でしょうか?

重要なことはブランドそして自分自身のアイデンティティーをしっかりと持つことだと思います。色んな意味で批判もされますが、その中でクリエーションを続けていくためには批判に耳を傾けつつもやはり自分たちのアイデンティティーを持つことが大事だと考えます。コレクション作りではリサーチであったり、世界観の構成については特に大切にしています。

―ご自身でPeter Jensenのアイデンティティーとは何であると考えていますか?

アメリカの方がよく使う言葉でdaywearやeveningwearがありますが、私が作るものはdaywearであると思っています。カジュアルにもなり、ドレスアップにもなるどちらでも着られるようにデザインしています。それからプリントもこのブランドの特徴だと思っています。プリントをみてPeter Jensenだといってくださる方もいらっしゃるのでそこはアイデンティティーの1つであると思っています。私自身は色もそうだと思っていて、ネイビーやグレーなども使ってますし、特別派手な色を使っているというわけではありませんが、色使いでみせるというところは当てはまるのではないかと思います。周りからはちょっと毒気というか、そういったエッセンスが入っていると言われます。あとは若い方でも年を召された方も遊び心がありながらシックに着られる洋服であると思います。

―次の10年に向けてクリエーション、ビジネスの面それぞれのビジョンを教えてください。

ここまでゆっくりではありますが着実に成長することができました。今後の10年も自分でコントロールできる範囲内で仕事ができればと思います。一方でまだまだ拡大していきたいという思いもあります。従業員も増やしていきたいですし、お店も新たにOPENしたいですし、香水なども手がけてみたいと考えています。クリエーションとビジネスが交差する点でのもの作りを今後も挑戦していきたいと思っています。

Interview & text:Fumiya Yoshinouchi, Masaki Takida

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