Interview

ent ホリエアツシ

ロックバンドSTRAIGHTENERのVocal,Guitar,Keyboardホリエアツシのソロプロジェクト「ent」。
2009年2月、日本のエレクトロニカ/ポストロック・レーベルPrecoより1stアルバム“Welcome Stranger”をリリース。翌年には、海外アーティスト等によるリミックスを追加収録した同作のUS盤をアメリカのエレクトロニカ・レーベルn5MDよりリリース。
2010年には映画『ソラニン』の劇中音楽を担当し、「ソラニン」サウンドトラックfeat. entをリリース。
またファッションブランドSise、Enharmonic TAVERNのショー音楽、劇団OOPARTS(鈴井貴之主宰)の舞台「CUT」のテーマソングを書き下ろすなど、様々なフィールドで活躍している。

2010年1月25日に「ent」として2枚目となるアルバム「Entish」をリリースした。
エレクトロの精巧さと生のギターやピアノサウンドの温もりを兼ね備えたトラックに、
パーソナルでセンチメンタルな歌が折り重なる、オルタナティブポップサウンドを鳴らす。

「ent」として2枚目のアルバムをリリースするにあたり、作品製作に関するエピソードやファッションとの関連性などについてお話を伺った。

―今回「ent」としての2枚目のアルバムですが前作と比べてテーマなどの違いはありますか

前作は2009年にリリースしたのですがその時はSTRAIGHTENERというバンドの名前を伏せて、匿名的なプロジェクトとしてスタートして、インディーのエレクトロニカやポストロック専門の輸入盤を扱っているレコード屋のレーベルから出しました。その時は自分を表現するというよりは自分の聴きたい音楽を自分で作れたらいいなっていうコンセプトで。自分と趣向が同じようなリスナーの人が聴いてくれたらいいなって。偏見を持たずに聴いてほしかったんです。今回はそこから3年経って、この3年間でentとして映画のサントラとか舞台の主題歌を作るというような違うフィールドの仕事にも関われて。そこでent = STRAIGHTENERホリエアツシというのをオープンにしたので、だから今作はもう大々的に名乗って自分の音楽として自分を表現していこうと思って作っています。

―製作も自分を投影している感じで作られたんですか

日常という感じですね。バンドの音は非日常だと思うんです。ライブでもお客さんは普段の日常からは逸脱した中に身を投じたいみたいな、そういうモチベーションで来てくれる。だからバンドの時はそれにこたえたいという気持ちでステージに立つし、入り込んで曲を作るんですけど。entで表現したいのは素の自分で日常的な風景の中に流れるような音楽をやりたいな、作りたいなっていう。

―2月にやられるソロでのライブは心意気が違うんですか

そうですね、基本entは宅録なんで、レコーディングに時間をかけてじっくりじっくり作る。ライフワークなんです。いつまでに完成させなければいけないということではなく日常的にやっていることと言うか。それを人前に立ってライブで演奏するとなるとバンドの時とだいぶ違って、心許ないというかとにかく敷居が高いですね。

―Entishというタイトルについて教えてもらえますか

「ent」というのはロードオブザリングに出てくる木の牧人、エントという種族からとっています。そのエントが喋る言葉エント語が「Entish」なんです。映画には出てこないんですけど、指輪物語の原作には書かれてるのかな。あの世界観がすごく好きで。

―曲を作るなかにロードオブザリングのシーンなどからインスパイアされたりとかはありますか

entの音楽はあんなに壮大ではないけど、レコーディングでシンセでストリングスの音を入れるときにメロディや和音の混ざり方がロードオブザリングのサントラのオーケストラっぽくなってテンション上がるときはあります。



―一番思い入れのある曲やエピソードはありますか

「At The End Of The Blue Sky」は一昨年鈴井貴之さんの劇団の舞台の為に書き下ろした曲なんですけど、その曲が今回の作品の中では一番最初に作った曲で、リスナーを選ばずにピュアに良い音楽を作ろうっていう今作のコンセプトの始まりになった曲です。
ブランドのコレクションの為に作った曲も入っています。「9646」はSISEの2011年の春夏コレクション、「Dragon Fruit」はEnharmonic TAVERNの昨年秋のインスタレーションでのランウェイの為に書き下ろした曲です。別のジャンルのクリエイターと話をしながら音楽を作るのは刺激的な経験ですね。洋服を作る人にも多分、洋服の向こう側に思い描いている世界があって、彼らはそれを洋服で表現する。僕はそれを音で表現するという。そのインスピレーションがなければ生まれなかった曲だと思うのでこういった機会はこれからも大事にしたいです。

―SiseもEnharmonic TAVERNも見に行かせていただきました

Siseは映画「鉄コン筋クリート」から着想をえたコレクションでしたが、僕もそれを見て、映画だから既に音楽もちゃんと入っているし、主題歌もあるんだけど、映画を見ながらもひたすらギターを弾いていて、自分なりの解釈でこの場面はこういう音で表現しようとか、主人公の感情の動きをリズムになぞらえたりとか、イメージしながら作っていました。

―Enharmonic TAVERNはどういう関わり方をしているのですか

ブランドのスタートから音楽担当として携わっています。洋服のデザインだけでなくカルチャーとして発信することをコンセプトに掲げるブランドなので、洋服の世界観に音楽も共存しているんです。

―今後も音楽とファッションを絡めた活動を「ent」としてやっていくのですか

色んな人と絡みたいですね。音楽も音楽だけでは厳しい時代なので。実際僕らの世代はファッションと音楽って凄く近いものとして捉えていて、映画と音楽はもともと密接ですが、ファッションと音楽って今結構離れて来ている気がするんです。洋服に興味ある人は洋服にお金使うからなかなかコアな音楽には手を伸ばさないし、音楽に興味がある人は内に入りがちだったりライブにお金を使うからファッションにはあまり興味が無いという人も多いと思うんです。
音楽とファッションがもっと密接で、アートとしてカルチャーとして共通して皆が楽しむものであればいいなって。

―ファッションショーを見に行かれたりもするんですか

自分に関係がある人だったり、好きなブランドのショーは見に行ったりします。
結構前ですがFACTOTUMのショーを見に行きました。FACTOTUMもデザイナーさんがコアな音楽ファンの方でショーでかかっていた音楽は誰の曲かわからなかったですけど格好良かったですね。

―ホリエさん自身のファッションのこだわりとかアイコンとかはいましたか

凄く移り気な人間なんです。音楽もそうなんですけど一つのスタイルに拘るというよりは色んなものを取り入れたいというか。それがミュージシャンとしてバンドとソロプロジェクトの2枝にわかれているというところに現れていると思うんですけど。ファッションも色々な服を着たいんですよね。ミュージシャンでアイコンというか好きなのはトム・ヨークです。トム・ヨークのスタイリングを真似たりとかはしないですけど、あと10年歳をとったらああいう風になりたいなって思いますね。

―うちの読者はコアな人が多いと思う、アンテナを張り巡らせている方が多いと思うのですがそういう方にメッセージはありますか

ないです。アンテナを張って自分の好きなものや面白いものを自分で探してる人には特に言うことはないです。そうじゃない人にはいいたいことはいっぱいありますけど。
既存のもの、与えられるものに満足せずに、自分の感性で面白いと思うものを探して生み出していってほしいです。

ent
2nd Album Entish
2012.01.25 on sale TOCT-28037 ¥2,500(tax in)

1. 9646
2. Zoe
3. Water Screen
4. Dragon Fruit
5. Airwalker
6. Frozen Flowers
7. Strange Weather
8. Last Stop
9. Lens
10. At The End Of The Blue Sky

■初回盤封入特典
Entish TOURチケット先行予約・応募抽選券(シリアルNo.入り)
応募締切:2012年1月29日(日)23時

■LIVE
Entish TOUR
2012年2月29日(WED)名古屋アポロシアター
2012年3月1日(THU)大阪梅田シャングリラ
2012年3月3日 (SAT)代官山UNIT
Info : http://entjp.net

Interview & Text:kyoko.h, Masaki Takida

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