Interview

Damien Poulain / oodee

イーストロンドンを拠点に活動するフランス人グラフィックデザイナー/アートディレクター、Damien Poulain(ダミアン・プーレイン)氏。本の出版、レコードスリーヴのデザインなど、特に印刷を主体としたプロジェクトを中心に活動している。
2011年にDamien Poulain氏によって設立された 、インディペンデントな出版局’oodee’。 Damien Poulain氏が自ら企画、及びパブリッシャーとして発表しているメインプロジェクト「POV FEMALE」 は、昨年よりスタートした写真集のシリーズ。女性の視点をテーマにロンドン、東京、パリ、ニューヨーク版をそれぞれ順に出版していく予定だ。
今回、ロンドン版に続く第二弾シリーズとして『POV FEMALE Tokyo』をリリースした。東京を拠点に活動する5人の女性フォトグラファーに焦点が集められている。
様々なコミュニケーションツールに携わり、幅広く活動するDamien Poulain氏。「 POV FEMALE」東京版の出版と共に来日した彼に、‘oodee‘での活動を通して、自身のクリエイションについて話を伺った。
【POV FEMALE Tokyo】
参加写真家:福山 えみ / 細倉 真弓 / 小嶋 真理 / 野川 かさね / 原 未来

―まずoodeeを立ち上げたきっかけを教えて頂けますか

私は過去数年仕事で写真家と関わる機会が多かったのですが、そのほとんどが男性写真家でした。写真界を見ると男性の写真家が支配しており、女性の写真家が活躍する場が少ないと感じていました。仕事以外で若い女性の写真家の作品を何度か見る機会がありましたが、私は女性たちの撮った写真が凄く好きだったんです。ですので私は女性の写真家たちを集め、何か出来ないかと思ってプロジェクトを始めました。
そもそもは女性の写真家をとりあげたいということから始まり、その後でoodeeと言う名前を付けたんです。

―男性写真家の写真と、女性写真家の写真でどのような違いがあると感じていますか

括りが大きすぎて一概に言うことは出来ませんが男性写真家の方がよりタフで、直感的、女性写真家の方がより繊細で、直情的な作品を撮るのではないかと感じています。

―今回は東京の写真家をセレクトしエキシビジョンを行いましたが、写真家はどのように探されたのですか

TwitterやFacebookで探すこともあります。真弓さんはまずイタリアで見つけて、未来さんやかさねさんはオンラインで見つけました。他の二人に関してもtwitterやオンラインで探しました。元々彼女たちのことを知っていたわけではありません。凄く長い時間をかけて彼女たちを探しだし、良い写真家が見つかればコンタクトをとり、実際に会って話をし、自分達のプロジェクトの為に作品撮りをしているのかどうか聞きました。実は彼女たちの他にも何人かコンタクトを取っていて、その中には有名な写真家もいましたが話をした結果、このプロジェクトに合うと思った5人を選びました。

―その選んだ基準とはどういったものだったんですか

まず若くなければいけません。そしてギャラリーやマガジン等の作品だけではなく個人的なプロジェクトとして作品撮りをしている人でなければいけません。ギャラリーの為に写真家を発掘しているのではなく心から作品を作っている写真家を選んでいるのです。売り物にしようとしてやっているプロジェクトではありませんので人々に共感を得ることも凄く多いのです。ロンドンのシリーズでは作品を見に来たお客さんで写真を見て泣いている人もいました。個人的な想いもより強いものとなっています。
そういった活動をしていますので私の事をフェミニストと呼ぶ人もいるんですよ(笑)。
数年前に日本では女性写真家が表に出てくるようなムーブメントが少しあったのですが今回のエキシビジョンに参加している写真家はそれに影響を受けている人もいます。今回のエキシビジョンがきっかけでまた次のムーブメントに繋がれば良いなと思っています。

―日本人の女性写真家の特徴ってありますか

勿論他の国の女性写真家とははっきりと違う部分があります。ただそれは各人に共通しているものではありません。感性と言う部分で日本人的なものがあるかもしれませんがそれを言葉で表現するのは難しいです。光も違いますし、建築も違いますので全く違うものになるのは間違いありません。私はカテゴライズすることよりそれぞれの写真家たちのパーソナリティーにより興味を持っているんです。それぞれの都市に住むと写真にどういう影響が出るのかそれをこのエキシビジョンでは感じてもらいたいんです。

―ご自身が雑誌のディレクションとデザインを手掛けているそうですがどういったところに拘りを持っているのでしょうか

デザインに関して言いますと、取り上げている写真家さんの中の一人のみが目立つことのないように表紙は全てが同じフォーマットでデザインしています。ただし内面はそれぞれの写真家たちの作品に合わせたものになっています。

―これ以外のプロジェクトでDamienさんはどんなことをされているのですか

色んな写真家の本を作ったりしています。勿論そのほとんどが男性ですけどね(笑)。それにイラストを手掛けたりやったり、おもちゃを作ったり、ジュエリーを作ったりもしていますしインスタレーションもやりました。本当に色々なことをしていますね。
このエキシビジョンは1つのプロジェクトですがこれと同時にいくつものプロジェクトを同時進行でやっていてそのどれにもに同じだけの精力を注いでいます。
この写真家のプロジェクトは自分が最もやりたいことであり、お金も全て自分で出していますのでこのプロジェクトを続ける為にもたくさんのことをしなければいけないんです(笑)。

―今後のプロジェクトの予定を教えて頂けますか

日本の後はパリでエキシビジョンを行い、その後ニューヨークでもエキシビジョンを行います。1年に一つの都市をフィーチャーするという考えでやってきましたがパリは今年中にやりたいと思っています。なぜならパリフォトエキシビジョンがあるからです。通常は写真家を探すのにも凄く時間をかけてやっていますし、デザインも自分一人でやっていますので1年で1都市が限界なんです。
一番最初のロンドンは長い時間をかけて告知もしたのでより時間をかけてやりました。ロンドンの事をやっている間にはお菓子でマスクを作るというプロジェクトを半年かけてやったり、それでまたこのプロジェクトに戻ったり、本当に少しずつ少しずつプロジェクトを進めていきました。

東京の本のシリーズはロンドンで凄く時間をかけてやっていたのもあって告知をしてから僅か4日間でほとんど売り切れたんです。ニューヨークだったり、日本だったり、ドイツだったり、それに中国からもオーダーを頂きました。100部しか作らないことでプレミアム性があるからというのも一つの要因だと思います。

―今年中にパリでもやりたいとのことでしたがパリの女性写真家たちは既に見つかったのですか

まだ全然ですね。
ただ東京の後にパリでこういったことをやるのは凄く良いと思っています。ロンドンから東京も全くカルチャーが違いますし、東京からパリも全く違う、パリからニューヨークも全く違うカルチャーが違いますしそれぞれの都市がお互いの都市を魅了していますよね。まるでファッションショーのような感じですね。

―今注目している女性写真家はいますか

特定の人はいませんが常に好奇心を持って探しています。
正直に言うと僅か1年程前に写真の事を学び始めたんです。それまでは写真の事に関してあまり深いことは知りませんでした。でもそれから色々な人や作品に出会い写真のことを学び、現在も学んでいる最中です。自分にとってこの1年は本当に実りのある1年でした。
ただこの人が特に良いとかはまだ決めたくはありません。

このプロジェクトをやることによって他の人達にインスピレーションを与えることが出来るというのは本当に素晴らしいことですし、そういったレスポンスも頂いています。このプルロジェクトに参加している写真家たちは才能に溢れている人ばかりですし、有名になっていく人もいると思います。まだプロジェクトは始まったばかりですし、彼女たちも若く、作品もあまり多くありませんので仕事を彼女達と一緒にしたりとかはないのですが今後一緒に本を作ったり出来たらなと考えています。具体的なことは何も決まっていませんが「何かやろうよ!」と声掛けはすでにしていますけどね(笑)。

http://damienpoulain.com/
http://oodee.net/

Interview & Text:Tomoka Shimogata, Masaki Takida

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