Interview

Commune de Paris 〜パリジャンによる新進気鋭のクリエイティブ集団〜

Commune de Paris(コミューン ドゥ パリ)は2010年にSebastien氏, Alexandre氏, Edouard氏という3人の若きパリジャンによってファッションとグラフィックアートの世界で活動するクリエイティブ集団。日本での正式展開が始まったAW2011には、「ディエチ コルソコモ・コムデギャルソン」からの別注のアイテム制作を手掛け、パリの老舗陶器メゾン「ASTIER DE VILATTE」とのコラボレーションではトリコロールペイントを施したポップでシックなコレクションを発表するなど、様々なブランド、アーティストとコラボし作品を展開している。
2012年4月21日より(4/30迄)RESTIR BOUTIQUE 1Fにて『COMMUNE DE PARIS(コミューン ドゥ パリ)』日本初のPOP UP STOREが開催されることを記念しSebastien氏, Alexandre氏の2人が来日。今回は彼らのブランドについて、さらにはクリエイションの思索の過程についてなど様々伺った。

―Commune de Parisを立ち上げるきっかけ、それぞれの出会いについて教えてください

Alexandre (以下A): ”Commune de Paris”はSebastien, Alexandre, Edouardという3人の若きパリジャンによってファッションとグラフィックアートの世界で活動するクリエイティブ集団として2010年に発足しました。
私とSebastienは10年来の知人で私はストリートブランドをやっており、Sebastianはグラフィックの分野で活躍していました。EdouardはグラフィックアーティストのエージェントをしていましたのでSebastienがEdouardと出会いそれぞれパリ出身でしたのですぐに意気投合したのです。
お互いに違うフィールドで活動していましたが、マーケットデザインやプロデュースに対する考え方と方法、そして実現に向けた野心が一致し”Commun de Paris”というプロジェクト(ブランド)を立ち上げることになったのです。

―3人それぞれの役割を教えて頂けますか

A:私は洋服のデザインをしています。Sebastienはブランドのアートディレクターでありグラフィックを担当しています。シーズン毎のルックブックも彼のディレクションによるものです。Commune de Parisは3人ですが毎シーズンアーティストやブランドとコラボレーションしていますのでEdouardはそのマネージメント業務をしています。

―コラボレーションするアーティストを選ぶ基準を教えてください

A:様々なアーティストやブランドから私たちの哲学、そしてスタイルにあうアーティストを3人で話し合い選択しています。シーズン毎に新しいアーティストとのコラボレーションをしていますが、過去のシーズンでコラボレーションしたアーティストとも引き続きコラボレーションしていきます。
アーティストを選択することは”Commune de Paris”のストーリー、歴史を築きあげていくことに直接繋がっていきますのでその行為自体が私たちのブランドにとって物凄く重要なのです。

Sebastien (以下S):私たちのコラボレーション哲学はそのブランドをプロモートする為ではなくクリエイターとしてお互いの関係を築きあげていくことにあります。

―Commmune de Parisのブランド名は革命政府から取ったとのことですがそのブランド名に込められている想いを教えて頂けますか

A:フランス革命は18世紀の終わりから始まっているのですが1871年パリで民衆が蜂起し誕生した革命政府、それが”Commune de Paris”です。世界初の労働者階級の自治による民主国家とされ、後の社会主義や共産主義の運動にも大きな影響をおよぼしたと言われています。その期間は政府がいない時期であり、同時にパリジャン達の“個”のスピリットが溢れていた時でもあるのです。その想いから名前を付けています。その時期には様々なアーティストが生まれパリの街を創り上げるという一つの目標に向かったのです。市民が政府と戦っていた時代であり悲劇的な歴史でもありますので私たちのクリエイションにはリベラルな皮肉を含んだアート表現もしています。ただそれがネガティブではなく遊び心を含んだ表現になっています。
それと共にCommune de Parisと言う名前には英語でCity of Parisという意味もあります。私たち全員パリ出身ですので3人でパリという街を表現するという意味も含まれています。

2012 S/S Collection “AVIS” A LA POPULATION”

―コラボレーションするアーティストはパリのアーティストに限られるのですか。それともその他の国のアーティストともするのですか

A:勿論私たちはパリに住んでいて、3人ともパリ出身なのでパリのアーティストとコラボレーションをすることはごく自然な流れでした。しかし私たちは常にオープンな姿勢ですので良いアーティストがいれば別にそれが他の国であろうとこだわりません。スイスのアーティストやドイツのアーティストともコラボレーションしていますし、出身地が大事なのではなくスタイルが重要なのです。機会があれば色んな国のアーティストとコラボレーションしたいと思っています。
S:最終的な目標はみんなでプロジェクトを創り上げるということなので特に国籍は気にしていません。

―過去から影響を受けているのはわかりますが、現代のものからも影響を受けているのですか

A:勿論昔の伝統や、古いアート等から着想を受けていますが、モダンアートでしたり、今の空気感を織り交ぜることによりクラシックでありながらモダンなものに創り上げています。私たちは0からクリエイトすることは出来ません。クリエイションというものは常にリクリエイション(再創造)することなのです。過去にクリエイトされたものに自分たちなりの解釈を加え、現代によみがえらせるのです。私たちは常に過去のクリエイションをリスペクトしています。

―クリエイションをするにあたり伝統的な職人的手段を取り入れていると聞きましたがそういうことも関係しているのですか

S:プリントの仕方ひとつとってもとてもクラシックな手法を取っています。またグラフィックもハンドライティングに拘っています。ASTIER de VILLATTE(アスティエ・ド・ヴィラット)とコラボレーションをしていますが、彼らはパリ市内に工房を持つ唯一の陶器ブランドです。グローブや傘なども作っていますが全てパリの老舗の職人にお願いして作ってもらっています。過去をリスペクトするということはその職人技もリスペクトするということです。それが未来へのスタンダードへと繋がると信じています。

A:私たちのデザインする洋服はシンプルでクラシックであり、奇をてらったものではありません。アヴァンギャルドに仕上げるのではなく、クオリティを重視し、ファブリックやカラーコンビネーションでモダンに仕上げるのです。洋服は勿論アクセサリーやプロダクトに至るまで特にディテールは拘っています。例えばボタンはスペインとフランスの間の山奥にあるおばさんが一人で、手作業で木から創り上げているので全てのボタンが違うモノになるのです。

―洋服は自分達が着たい物をデザインしているのですか

A:洋服はクラシックなスタイルで私たち自身が着たい物が前提にあります。しかし一番重要なことは最終的全にてのコレクションが一つのテーマに向かってリンクしていることです。洋服は勿論ですがグラフィックを使ったスカーフや小物など全てを含めて一つのコレクションと考えています。

2012-13 A/W Collection “ANONYMOUS”

―これまでのルックブックにあまり人が出てきていません。ルックブックと言うよりはアートブックに近いような印象を受けるのですがどのようなコンセプトで作られているのですか

S:コレクションにはそれぞれのシーズンに明確なテーマが定められそれをアート的アプローチで表現しているのがルックブックです。

A:一番最初に発表されたコレクションはテーマがアートでペインティングをイメージして創り上げたものです。フレンチアートやクリスチャンの7つの大罪から着想を得ました。

S:全てのシーズンにはそれぞれのストーリーがありそのシーズンが終わることでコレクションが終わるのではありません、全てが積み重なっていくのです。一番最初のコレクションは人が出てこない。完全にアートです。でも次のコレクションは顔を隠している。シーズン毎に人類がパーツを見つけていくのです。2012SSでは陰になっており顔が隠れている。2012AWでは人間が出てくるのですが目だけが隠されています。

A:全ての過去の作品はウェブサイトに掲載されていますので私たちの過去の革命の歴史をそこでは見ることが出来ます。Commune de Parisのストーリーは続いています。そして過去のストーリー(コレクション)からまた新しいストーリー(コレクション)が生まれ、更に発展を遂げるのです。まるで一つの本を創り上げていくようなものです。

―発表されたばかりの2012年秋冬コレクションについて教えてください

2012S/Sは”Notice to the Public”というテーマで革命軍の動き、ムーブメントを表現しました。2012秋冬コレクションのテーマは「anonymous」です。匿名と言う意味なのですが、このコレクションは何かを表現したいけど表現できない人を表しています。コレクションを作る為に自分の名前を名乗る必要はありません。コレクションを作ることによってクリエイティブである自分を表現しているということを伝えたいのです。

―今回日本に来日するのは初めてだったとのことですがポップアップストアを通してどのように感じたのでしょうか

A:今回が初来日ですがRESTIR, 伊勢丹と言う素晴らしいお店で私たちのブランドのポップアップショップが出来、日本の皆さんに見てもらえる、知ってもらえる機会が出来凄く嬉しいです。短い期間でしたがたくさんの人に良いリアクションを頂き、様々なフィードバックを頂けたので今後に繋げていきたいと思います。

HP:http://www.communedeparis.fr/

Interview & Text:Masaki Takida Fumiya Yoshinouchi

Comments are closed.