Interview

Waltz 秋藤 真弘 ”20歳のオーナー/バイヤーが奏でるWaltz” 2/3

踊りだしたくなるようなお洋服。人と人とのフィーリング、そのあとでステップがある。お洋服も人と衣服のフィーリングがあってこそリズムが生まれる

→Waltz 秋藤 真弘 ”20歳のオーナー/バイヤーが奏でるWaltz” 1/3

―自分でお店を始めると決めてからはどのくらいの準備期間があったのですか?

大体2ヶ月から3ヶ月くらいですね。学校に通いながら良いブランドを探したり、什器を探したり。
お店のやり方は例えば田島さんに聞いたり、あとは本を一冊買いました。”起業するにあたって”みたいな。
そこからデザイナーさんへのプレゼンテーションをしました。最初から弱気になってはいけない、「僕のお店はこういうものなんですけどどうですか?」って。そうしたら思いの外皆さんよい反応をしてくれて。

―そのプレゼン内容はどんなものだったんですか?

洋服というものはまず身体が全てである。裸で居るのが一番楽だけどそれでは外は歩けない。ではその中で最低限美しくなれるようなお洋服ってなんだろうと考える。そうなるとやっぱりワンピースだと思うんですよ。それが僕の中で女性が一番奇麗に見える服。
僕のお店自体がこういうのをコンセプトにしてというよりは僕自身が体が一番なのだからそういうものを解放するようなお洋服、着ていて楽なものを提案する。肌触りもそうだけどわくわくするような洋服、動きたくなるような洋服。楽しくなるような洋服が好きなんですと言ったらみんな納得してくれて。

僕はラグジュアリーブランドも好きですし、ブランド物も尊敬していますが、そういう服を着ることで自分が美しくいれるとは思うんですけど着ることによって体が柔らかくならないと思うんですね。内側から美しくなる為にはそういうのを演出出来るようなお洋服を着て、着た上で美しくなってからシャネルとかを着るとより美しい女性になれると思うんです。その段階は飛ばしては行けない。もともと美しい要素を持っている方は別として日本人だとコンプレックスを持っている方が多い中でスタイルとかではなく体が美しくなきゃいけないのになんでそういうものを提案するということがないのだろうか。拘束するような洋服が多いのかなと思うんです。そういうお店がないからこそ自分でやってみたいと思ったんです。

―二十歳という若さでファッションの経験もない秋藤さんに疑念を抱く方はいなかったのでしょうか?

それはなかったですね。そこが逆に面白いと。どこかで経験を積んでもいないし、感覚のみなのがあからさまに出てる。だからこそ言ってることに説得力がある、何も偽っていない。
実際そういうことを言っておきながらいざお店に行ってみるとぎゅうぎゅう詰めに洋服があったり、他のブランドさんの売れるようなピースがありますよねとどのデザイナーさんも言っていたのですがそういうのが絶対にないというのがわかったらしくじゃーいいですよって。お店にも遊びに来てくれていいお店ですねって。

―今お店でやっているものはレディースが中心だと思いますがなぜレディースなのでしょうか?

メンズも好きなんですけどやはり僕の中で体が美しくなければいけないのはまずはレディースだと思うんです。そこで男どもがこぞってやばいやばいみたいな方が楽しい。女性が美しい方が僕も好きですし。
ただメンズも自分がメンズなので秋冬からはもう少しやります。メンズの究極のスタイルを追求したらやっぱりセットアップなのかなって。だからうちのお店ではメンズはセットアップを中心に提案します。

―メンズはどんなブランドを扱うのですか?

YANTOR、それにTARO HORIUCHIもサイズをメンズサイズで頼んだり—–untitled titleもメンズサイズのものを頼んでいます。

―TARO HORIUCHI, YANTOR, ———untitled title, Hidenobu Yasuiと扱っているブランドは(日本、海外含め)美大出身の人が多い印象です。

そうですね。でもそれはたまたまで意識はしていません。
洋服を見るのは勿論なんですけど僕はデザイナーさんとお話がしたい。デザイナーさんのアトリエに電話をするとプレスの方が出るのが普通なんですけど「デザイナーさんと一度お話をさせてください」といってお話をします。その時に色々な話をするんです。

僕はコンセプトやブランドとして見てなくてお洋服だけを見て直感で良いと思うものを選んでいる。それで会った時に実際「コンセプトどうなんですか?」って聞くと内から出る強さとか、自然とか、キーワードが結構似ている。僕も自然が好き。木の葉のシルエットとか、いしころのシルエットとか計算式にはあまりあらわせない、自然のみが出せるもの。それって凄く美しい。最終的に人間ってそういうの欲するよねって。他のブランドさんもそういうのが強く出ているのかなと。

―ちゃんとデザイナーさんと話をしてからじゃないと服は買えないと。

そうですね。そこは絶対です。今はデザイナーさんが思うことを服に起こせているブランドも少ないと思います。デザイナーさんが理想とする物を服に落とし込む作業はとても難しい。実際ちょっと売ろうとしている服になっていたりする。そういうのが見えると嫌な気持ちになる。
服の美しさもあればデザイナーさん本人が美しくいようとか、美しい物が好きという感覚がないとやっぱり僕もリアルタイムでお客さんだったのでわかるんですよね冷たいなこの洋服って。
そういう服は着ていて格好いいけど安心しないというか、何回も着ようと思わない洋服だったりする。だからこそデザイナーさんと話をしてデザイナーさんがどういう服を作りたいのか、どういう服を作っていきたいのか聞くんです。
やっぱり美しいとか、体がどうとか、そういうのを言ってくださったデザイナーさんは良いなって思いますね。

―YANTORだけは他のブランドと少しテイストが違うのかなと思います。

絶対的な違いはレディースも着れるけど基本的にはメンズであるということ。ビジュアルも男性で作っていますし。
この人達って計算され尽くした洋服って作ってないと思うんですよ。でも計算され尽くしていない服が逆に服好きに受けるというか、ふいに生まれたからこその美しさと言うか。

―話をした上で結局やらなかったブランドもあるのですか?

それは今のところありません。元々そんなにたくさんのブランドさんとアポをとったわけではありませんので。僕が良いなと思ったデザイナーさんにアポを取ってその結果間違いなかったというか。やっぱり服にもそれが現れている。
僕もバックボーンがない分自分がこういうものですよというのを本人が伝えないと伝わらないと思ったのでデザイナーさんと話がしたいと思ったんです。他のお店さんであればHPを見せたり、実際にお店を見せたりも出来ますが僕は何もなかった。だから僕がお店みたいなものだったんです。形がないから。僕が行くしかない。直接デデザイナーさんと話をするしかない、そう思ったんです。

―お店をやることで一番最初に名前が浮かんだブランドはなんでしたか?

やっぱりそれはKa na taですね。話を振ってくれたブランドさんなので。こういう服は着たことがなかったんですけど洋服を見た時に一目で「このブランドヤバいな」って。「完全に体メインで考えている」と思った。それでこのブランドがあればいけるかもしれないと思ったんです。
その後に声をかけたのがTARO HORIUCHIさんです。結局SSは断られてしまったんですけどAWからはやれることになって。
その後に今扱っている他のブランドさんに声をかけさせてもらいました。断られるかなと思ったのですが意外と断られなかったですね。

―Waltz(ワルツ)という店の名前の由来を教えてください。

鬼束ちひろさんの曲で”私とワルツを”という曲が凄く好きなんです。ワルツはダンスの基本でもあるので基本が大切、それとファッションをかける。踊りだしたくなるようなお洋服。ワルツのステップというのはアンドゥートゥロワのリズムがリピートしているんです。ファッションもサイクルでリピートしていますよね。その中で生きているファッションの人間。ワルツを踊っていても結局のところステップを意識して踊っている人っていないよねって。人と人とのフィーリング、そのあとでステップがある。お洋服も人と衣服のフィーリングがあってこそリズムが生まれる。

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