Interview

spoken words project 飛田正浩 〜ファッションの純度を高めるという事〜 2/6

卒展もspoken wordsしたかったので、真っ白な服に“ワイフ”って書いてあったら、人はどう思うんだろって言葉と服と人の関係。そういうイメージの服を作りました。“リリー”って書いてあったらそれはユリにみえるのかとか。抽象的で先生にはあまり伝わらなかったんですけど・・・

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―でも浪人4年間ってとても辛いですよね。

もちろん本人は辛いと思っているのだけれど、周りに気を使われる方がもっと辛かったですね。あと単純に両親にも迷惑かけているって思いは常にありました。
その時はグラフィックが好きな先生と関わったらグラフィックに興味もって、広告が好きな先生と仲良くなったら広告に進もうかなって思ったり、ファッションやりたいから芸大を目指していたはずなのにファッションがすっぽり抜けていて。工芸科っていうのがあって、そっちにも興味があってそっちに行こうかなって。自分自身で模索していた4年間でした。
いざ美大に入ってみると、ファッション性が全くなくなって、グラフィックとかCMプランナーいいなと思ったりしました。すっかりファッションが抜け落ちた時期でした。
美大に入れば自分の好きな事をしていい4年間だと勘違いしていた所があったので、バンドを組んでそのバンド活動に4年間費やしましたね。そのバンドはブルースロックっぽいのをやっていたのだけれど、どこかしらで『spoken words』って詩の朗読をする活動があるって聞いて、それをライブでやり始めたら、「そんなのがやりたいんじゃない」ってバンドメンバーに反対されて解散しちゃって。笑

—それが現在のブランド名に繫がるわけですね。バンド解散後は?

学校中に例えば【MEN】って書いた紙を張って、見た人が男?人間?イベント?エロい事?など「何だろうこれ?」と思うようなアートとしてのspoken words活動などは続けていました。日本語だと直接すぎちゃうから英語で書いて、見た人によって意味合いを見た人自身が考えてほしいってプロジェクト。

—それが『spoken words project』になるんですね。その時から服は作っていたのですか?

毎学年留年の危機で、布をベースに何かしらの作品をギリギリ提出していて。それが意外と意図して作ったわけではないんだけれど服っぽいのだったりして。面白い事に。オブジェが人体っぽい、とか。そこで学んだものがいまの技法のベースになっていますが、本当に不真面目な生徒でしたね。

—縫製なども学んだのですか?

其の頃のテキスタイル科って、伝統工芸に近い事を学ぶ学科で、所謂友禅や纈染めみたいな。ファッションやインテリアやライフスタイルじゃなくて、布をつくりましょうって授業が進むから卒業後は路頭に迷う人がいましたね。ファッションデザインの授業もあったけれど、デザイン画の書き方の授業とかのみで、あまりファッションファッションした授業はなかったですね。

—飛田さんは卒業後ブランドをすぐにはじめられていますよね。

今でこそ少ない気がするのだけど、当時の僕の周りの美大生とか物を作っている人たちって、バイトしながらでも自分の作品つくりたいって人らが多くて。彫刻で食えないけど昼間運送の仕事しながら、夜に石削ったりして生活している。音楽やりたいって人も、就職せずに貧乏ながら好きな事をやることに抵抗がなかった。だからブランドをやると言うよりは自分の作品発表のレッテル的に名前をつけて。
僕もバイトで予備校の先生をするのだけど、実を言うと作品として服を縫い上げたってのが卒業制作までないんですよ。卒業制作のときに初めてミシン買って縫ったら、そういえばこれやりたくって美大入ったんだって気がついた。そしたら水を得たさかなのようにこれでいこうって。自分で染めたり、立体裁断してみたり、ギャラリー借りて展示会をし始めたりしていました。
そこから後にアパレル業界という巨大な森にビビるのだけれど、なんとなく好きな作品作ってバイトで食えばいいのかなって軽い気持ちで始めましたね。

—卒展ではなにを出品されたのですか?

コンセプトがちがちの服を作りました。
まず自分一人で何が出来るだろうって考えて。イベントやバンドはみんな、4年生になるにつれて徐々に減っていって、自分一人でできることはなんだろうと考えましたね。それでいままで学んできた事の集大成として“ファッション”だと思って。

ずっと親父にデザイナーになるって事を否定されて、どうしたら表現を職業にできるかなって模索していました。中学生の頃はコピーライターになりたいって思っていた時期もありましたね。糸井重里さんとかいいなって。笑
ファッショブランドのコビーとか、当時an・anやPOPEYEなどでコピーライター育成企画をやっていて、そこで常連になっていました。アンアンの50周年のときにギャルソンについて書いて林真理子さんに選ばれて、ギャルソンのコートが送られてきたり。でも考えてみたら結局ファッションに繋げていたんだなと。

まあそうした背景もあり、卒展もspoken wordsしたかったので、真っ白な服に“ワイフ”って書いてあったら、人はどう思うんだろって言葉と服と人の関係。そういうイメージの服を作りました。“リリー”って書いてあったらそれはユリにみえるのかとか。抽象的で先生にはあまり伝わらなかったんですけど・・・。制作は自然な流れだったし、作ってみて「これだな」って思いましたし、女性に着せるワクワク感というのは其の時から今に至るまで忘れがたい感覚ですね。今も服に言葉を乗せる事には興味はあるけど、言葉は非常に強いので面白いけどなかなか難しいですよね。日本語だとさらに意味が伝わってしまうから。

—より具体的に、難しいと感じるのはどのあたりですか?

急にメッセージ性が出てしまう、ポジティブにもネガティブにもとられてしまう。丁寧に順番を経て提案していかないと、重いテーマになってしまうかなって。あとは、そもそもそこまで服に背負わせていいのかという問題もあります。ファッションが好きな人はそのメッセージ性であったり、ストーリーまでしっかり受け止める、多くは無いですけど。でもそこが広がっていくのがおもしろいと思いますよ。でも実際シリアスにとらえてくれる現場が少なかったり、それを嫌う現場があるのも知っています。でもだからこそそこに可能性があると思うんですが。言葉を必要としない、言葉以上を持った服とか。それが今の気分です。

—服に文字をいれるというのは卒展以降されましたか?

卒展以降ちょこちょこやりました。難しく考えてしまうからなかなか手が出せない。いつかやりたいとは考えているんですけどね。

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