Interview

O.W.H.H.R.M. 1/2

インターネットを介して広がる、無限のデジタルワールド。毎日多くの情報を猛スピードで消費していく中で時折巡り会うことができる、最高に気になる何か。そして時にそれは、想像を超えるほど広大な別の世界へと繋がっている。

ある友人が、ランダムにキーをタイプしてイメージ検索を行う、という少し変わったネットパトロールから巡り会うことになった謎のストリートウェアレーベル。

古代文明や神話で知られ、ここ数年は政治経済のニュースで耳にする事も多かったギリシャから密かに発信されていたのは、膨大なカルチャーの歴史をマッシュアップして育まれた、確固たる思想に基づくスピリチュアルな美学。

思考を喚起させる強烈なグラフィックを通して投げ掛けられるのは、計算されたロジックに基づいたクリエイティブミステリーか、それとも現状へのカウンターとしての新たな宗教的プロパガンダか。

そのイコノグラフィーから何を感じ、どう解釈するか。

ギリシャ発のアンダーグランウンドストリートウェアレーベル、O.W.H.H.R.M.が届けるリアルとは。

―まずはあなた自身について、あなたは誰なのか、あなたのバックグラウンド、そしてどのような経緯でレーベル「O.W.H.H.R.M.」を立ち上げたのでしょうか?

いと高き、O.W.H.H.R.M. 616、そのモナド。

人生の初期から続けている創造表現をバックグランドに、やってきました。
このレーベル「O.W.H.H.R.M.」は、子供の頃から土の中に埋められていた種の実が結ばれ生まれたものですが、今はまだ芽の段階です。創造的苦闘、表現的苦悩というウィードを通して、今日のO.W.H.H.R.M.ガーメンツ、アンダーグラウンドクロージングブランドとしてマニフェストされています。

―レーベル名「O.W.H.H.R.M.」は何を意味しているのでしょうか?

O.W.H.H.R.M.に潜んでいる意味は、この試みと大きなミステリーの、真実で神秘的なエッセンス、その根本的なものです。

この言葉の本当の真実、隠された意味に関わらず、顧客や会員など興味を抱いた人々は皆、自らの解釈を創造することが求められています。

グラフィック自体が、沢山の手がかりやシンボルを含んだガイドであり、中には一目瞭然といえるものもあります。よりグラフィックを読み解き、またそうしようという興味を抱く事で、あるいはこのブランドが遂行された哲学的な観点に目を向ける事で、人々はその本質により近づく事ができるでしょう。

突き詰めると、O.W.H.H.R.M.とはひとつのシンボルであり、全体像として、また有りと有らゆる存在と共鳴するその本質的な意味においても、偉大な道筋と人生のミステリーを統一していくものなのです。そのような思考への投資をしなければ、先ほど述べた真実を放つブランドのイコノグラフィーの美学に引き込まれるでしょう。探し求めれば、見つける事ができるでしょう。

―何処で服を販売し、どのような人々が購入されるのでしょうか?またどのように広告しているのでしょうか?

まず、ブランドに直接連絡が為されたり、時折地元で開催されるガーメントのエキシビジョンを通して、直接ブランドから購入する事ができます。

また、ブランドと親密な関係であるギリシャのタトゥーコミュニティの中の、ごく限られた素晴らしいタトゥーパーラーでも、O.W.H.H.R.M.のマークやプロダクトを提供しています。彼らのサポートは本当に大切で、必要不可欠なものです。

最も嬉しい事は、その美学が「エクストリーム」であるにも関わらず、このブランドの服が様々なカルチャーの拠点で、また音楽やアートの分野で、全く異なるバックグラウンドを持った人々に着用されているということです。これこそ、ブランドの意味や美学におけるアクティブなエッセンスを立証するものです。

ブランドの服はほぼ人々の口から発せられる言葉とインターネットの存在により広がりました。ブランドの作品以外、広告のようなものは全くありません。

―低く設定された価格帯(€10−25)に加え、実際にウェブサイトにて「服を着てメッセージを拡散せよ」と記述されていることからして、ただお金を稼ぐためではなく、あなたは信念をシェアするために服をつくっているのだと思われます。レーベルに潜んだあなたの信念や我々へのメッセージとは何なのでしょうか?

まず第一にはっきりさせておきたいことは、お金とはクリエイティブ・ミッションを維持し、ブランドを存続させていくためにのみ、必要なものだということです。

それはお金が重要ではないということではありません。実際のところその全く逆なのですが、強欲な嫌いではなく、あえて意識的に言っています。ほぼ全ての人がいかにお金が重要かという事を知っていますが、それは本当の必要性に加え、我々人々が極めて頻繁に誤った方向へ操られる事により捏造された必要性が、共に上昇しているからです。

このように、低く設定された価格帯は、世の人々やこのブランドに興味を抱いた人々の経済状況への理解を示しているからなのです。またギリシャのようなところでは、おそらくこの種のイコノグラフィは高い価格ではどうしようもありません。犠牲をとるか、自滅するかということです。

究極の目標は、とても低い価格のものから本当にその値段に値する高い価格のものまで、ブランドの美学に置いて重要なアイテムを展開する事です。連絡をくれる人々の大多数は、低い価格への懸念を越え、そのピースが価格以上の価値を有していると信じてくれており、そのような意見こそが真実なのではないかと思います。それでも、価格帯は上がっていく予定です。なぜなら全てのプロダクトは、極めてスピリチュアルで知的なインプットだけでなく、肉体的な労力を使って創造され、シルクスクリーンのハンドプリントというオールドスクールな方法で製作されているので、そのクリエイションにより多くのコストを必要とする新しいアイテムも既に存在します。

「服を着てメッセージを拡散せよ」というメッセージと、その中のメッセージについては、基本的にブランドのアートワークとウェブサイトやブログにポストされる「デザイン・プロパガンダ」を通して表現されています。

それらの意味は、精神のあるべき姿のように、ワイドにオープンであるべきで、あらゆる体験へ向けたものです。「バランスのとれた」精神が危険に陥る事はありません。全ては知識であり、知識は経験を通してより重要なものになります。未知を抱きしめてください。

―あなたの服は強烈なグラフィックプリントを特徴としています。その狂気的なグラフィックへのインスピレーションはどこからやってくるのでしょうか?また自身ではそのグラフィックスタイルをどのように形容しますか?

人類の表現の初期段階から今日に至るまで、既に存在する様々な美学を融合することが、グラフィックのインスピレーションになっています。様々な既存の美学が、ポシティブでありネガティブでもある熱狂的で荒々しい情熱と、フレッシュな視点、そしてシンボリズムや秘教やオカルトに根ざした哲学的な視点を通して、フィルターされるのです。

それはカルチャーの乱用でありながら、長年に渡り人間の精神におけるカルチャーにより為されてきた、そのような乱用の衝撃に対する反動でもあります。それは一種のなぞなぞであり、またアレゴリーなのです。

―あなたのアーティストとしての作品は、ドローイングやイラストレーションから音楽製作や執筆まで多岐にわたっています。そのようなマルチアーティストとしての活動についてもう少し詳しく教えていただけますか?またあなたのアートは服とどう結びついているのでしょうか?

O.W.H.H.R.M.以外の創作活動は全て、服のグラフィック内で伝えられているセオリーそのものであり、ただ異なるフォームで実践されているのです。またクリエイションという広大な土地を探求するために、創造表現のほぼ全てのファセットにアクセスできるインターネットは非常に重要です。

アートは自己というものの体験であり、他者とのコミュニケーションでもあります。コミュニケーションが常に一貫してうまくいき、意味のあるものになるという訳ではありませんが、それも含めて物事の手段であり、物質的な形であっても知的なものであっても、実を結ぶまで努力し続けなければなりません。

―「幽玄」「オルガスム」といった文字からHentaiモチーフまで、多くの日本的要素がグラフィックに融合されており、更に『攻殻機動隊』や『北斗の拳』といった日本のフィルムもお好きなようですね。何故そのような日本のカルチャーに魅力を感じているのでしょうか?

ギリシャ人と日本人のハーフである姉から純粋に影響を受けた事に加え、80年代中頃、ギリシャのテレビでの日本アニメの量は莫大なものでした。『ニルスのふしぎな旅』を演出した押井学が、後に『攻殻機動隊(1&2)』といった大傑作を監督したということ、このなぜ日本のアートとアーティストがこれほどまで刺激的なのかを示す一例に気がつけば、その理由は容易に推測できるでしょう。

日本人のアートにおいてのみ、多くの異なる要素が共存し、その結果ほぼ間違いなく素晴らしいものになっています。それはどこか、ギリシャ神話や一般的な神話と大変よく似ています。アニメや漫画、日本のアートについて議論し始めると一生続いてしまいますね。

―私の知る限りでは、あなたは幅広い音楽を聴きながらも、特に現代のオランダ人ブラックメタルバンドに入れ込んでいるように感じますが、それは何故なのでしょうか?また悪魔崇拝に集約される初期ブラックメタルバンド的思想に対する、あなたの見解はどのようなものですか?

言及されているオランダ人バンドというのは、おそらくDe Magia Veterum、Cloak Of Altering、Gnaw Their Tongues 、Seiromのことだと思います。このそれぞれのプロジェクトから生み出される音楽は、そのレイヤーのオンパレード、エクストリームな音や感情値の変化を有している、今までで最も刺激的な音楽です(前の質問で述べた、異なる要素の複雑性や共存にどこか似ています)。更に、それらのバンド全てがたった一人の同一人物による異なるプロジェクトであるという事実も、より一層それらの音楽を魅力的で素晴らしいものにしています。

ブラックメタルや「エクストリーム」な音楽が持つ激しさ、コンセプト、そしてメロディーは概して、O.W.H.H.R.M.とその他の創作活動へとても大きなインスピレーションとなっていますが、他の音楽ジャンルを疎外している訳ではありません。

初期のものだけでなく新しいものも含め、悪魔崇拝のイデオロギーをどのようなフォームでどの程度であれ表現しているブラックメタルやデスメタルバンドのことは、尊敬してやみません。それらの作品に溢れる強烈さがより大きな意味を有し、単なる言葉や曲を越えた精神的な衝撃さえも宿ったものになっているからです。そのようなバンドが生みだした差異や論争は、アートや物事を見て考える方法に注意を払っている人々への、ブレークスルーや進化を意味していると思います。

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