Interview

O.W.H.H.R.M. 2/2

人生はリアルです。また、我々が生きているこの人生において存在する、如何なるものも全てリアルです。不確実性が存在するように確実性も存在し、不確実性は我々を確実性へと焚き付けてくれるものであり、安定もまた不安定なしには存在し得ません

→INterview with O.W.H.H.R.M. 1/2

―好きなアーティストやデザイナーは誰ですか?

アートや美学のゲームやインダストリー全体をより理解するために、ほぼ毎日のペースで新旧問わずアーティストやデザイナーをリサーチして学び、コンスタントに自身のアップデートを行っていますが、正直なところ、素晴らしい方、良い方、またそれほど良いと思わなくても重要な人など、言及すべきアーティストは数えきれないほどいますし、彼らは皆自身の方法に基づきとても独創的だと思います。

―O.W.H.H.R.M.の服以外は何を着ていますか?

着るのはカジュアルなものから極めてカジュアルなストリートウェアのみで、あまり着用されていないヴィンテージをほんの少し加えるくらいのものなので、何も特別なところはないです。いずれにせよ魅力的な服はたいてい経済的に手が届かないので、それよりも目標は常に興味あるものを製作し、人々が欲するいかなる方法でも楽しむ事ができるようにして、他者により多くを与えるという事です。

Tシャツやフーディの中では、着るのはO.W.H.H.R.M.のみです。その服を纏った真実の男性と女性は正にこれが何を意味し、どのように感じるかがわかると思います。

―ハイファッションに興味はありますか?

非常にあります。常に興味を持っていました。実際のところ、Tシャツやストリートウェアタイプの服はほんの第一段階として始まり、ハイファッションピースへ向かう手段のひとつなのです。しかしまだそこまでに至るには、コラボレートし、インプットをヴィジョンに落とし込めるほど興味を持つことができる「適切な」人々が必要です。紙の上では多くのアイディアが行き来していますが、ハイファッションピースをカッティング、ソーイングするという全体の経験、知識、そして「方法」は、現時点でのブランドの持つ知識を越えるものです。

ですのでO.W.H.H.R.M.に取り憑かれることに興味がある人は誰でも大歓迎です。O.W.H.H.R.M.に種を与えてもらえれば、O.W.H.H.R.M.から収穫を得る事もできると思います。

―他に今ハマっている人やもので、まだ人々が知らないであろうことを教えてください。

Maurice De Jong、先述の音楽プロジェクト(Gnaw Their Tongues、De Magia Veterum、Cloak Of Altering、 そして「エクストリーム」な音にあまり耐性のない方にはSeiromをおすすめします)をしている彼です。最もインスピレーションに溢れたクリエイティブな存在で、10倍分の注目をするに値します。

―アテネを拠点とされていますが、そこでのアンダーグラウンドファッション、ストリートカルチャー、ミュージックシーンを教えてください、またそれらはあなたにとってエキサイティングですか?

ギリシャの音楽シーン、特に地元での地位を既に固め、世界的な影響力も秘めているInveracityやDead Congregationといったデスメタルバンドによる「エクストリーム」なシーンは存在しますが、それ以外には本当にエキサイティングだと呼べうる類いのアーティストやアートは存在しません。多くはただ小綺麗なだけのように感じます。

素晴らしいスキルやポテンシャルを持ち作品制作に尽力しているクリエイターもいるのかもしれませんが、そこから強烈さやスピリットが感じられるものはほぼ存在せず、少なくともエキサイティングな体験を得る事ができるほど響き渡るスピリットではないです。何か特別な、違いのあることに挑戦している人はほとんどいません。

でも、時が経てばこの状況もおそらく変わってゆくでしょう。

―政治経済に対する興味はありますか?ギリシャは過去数年非常に厳しい経済状況に直面しており、アテネでは暴力的な抗議活動も多く起こっています。現地の実際の状況や雰囲気はどのようなものですか?また個人的には、あなたがウェブサイトで言及している「神話」がどこかギリシャの現在の状況にも通じているように感じます。ブランドはそのような厳しい現状から影響を受けていると思いますか?

勿論あります。政治経済は大きな興味と重要性を備えたサブジェクトでありサイエンスです。

今現在ギリシャで起こっているような大きなスケールの政治的経済的問題から、影響されず興味も抱かずにいるのは不可能でしょう。密かに、また時には明らかに、誰もが損害を被っています。本当に大きな混乱です。現在のような危機が巻き起こる遥か前、実際の物事が穏やかで楽しく、望みに溢れているように見えていた頃から、既にギリシャは非常に大きな政治的、経済的、文化的な失墜に陥っていました。歴史的政治的な事件による盛衰が、非常に長きに渡ってギリシャを共依存シンドローム的な被害を受ける国にしてしまったという事実も、よく考えなければいけないことです。そのような事を認めない人々は、無知であると同時に、引き起こされたこの現実に対する罪を負っていることを白状しているようなものです。

ブランドのウェブサイトの『神話』の部分は、ブランドが示唆する事のステートメントのようなもので、ミシェル・フーコーの『狂気の歴史』からの引用文を適宜改変したものです。また同時に我々の存在や文明、またそれらがいかに導かれて来たかという事に対する普遍的な真実を表現しており、ギリシャの内外問わず、我々の存在の現在状況に対する関連性を見つけることができます。このブランドは、この世界の文化的なプロダクトであり、世界のある側面やその美しさと醜さ両方の価値、より正確には醜さを通した美しさを、象徴しています。

上述のステートメントから、このブランドは勿論、ブランド以外としても、現在のギリシャの厳しい状況にあらゆる面で大いに影響を受けているということが容易に想像できると思います。これが例え何であったとしても、体験して守らなければならないひとつの現実なのです。

―最後に、あなたは自身のレーベルを『The Realest – The Illest & Most True』、また『Facts Arts Crafts』と形容しています。不確実性と不安定で溢れたこの現代社会において、あなたにとっては何が『リアル』なのでしょうか?

人生はリアルです。また、我々が生きているこの人生において存在する、如何なるものも全てリアルです。不確実性が存在するように確実性も存在し、不確実性は我々を確実性へと焚き付けてくれるものであり、安定もまた不安定なしには存在し得ません。善もリアル、悪もリアル。全てはあなたの立ち位置と、それらの性質をどう扱うか次第です。トリックとは、挑戦し、そのような事実に気づき、たとえ到達するまでにどれほどかかろうとも、このミステリーで溢れた人生を最大限味わって進んでいく為に存在しています。コンスタントな行動から生まれるあらゆるクリエイションは、この人生という儚い空虚にリアルさを与えうる、ひとつの方法なのです。

大切なのは忍耐、持続、努力。そして意識して強く感じていることへ最大限挑戦することです。

Interview & Text:Yasuyuki Asano

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