“価値というか物語を付け加える作業です。だから服を見たいという感じでショーに来たら物足りなく感じる部分はあったかもしれません。でもファッションの縮図を描きたかった”
―プレスリリースには
2013年の夏の東京。
2011年の春の東京。
あふれる光、公園通り。
幽霊たち。
価値のないものが価値をもっていく。
あとから物語がつけ加えられる。
と書かれていました。これはどういう意味だったんでしょうか?
あふれる光、公園通りは小沢健二の歌詞です。
―1部では価値のなかった服が2部では価値を持ったということですか?
1部で価値がなかったということではなく服自体がもともと価値なんてない。たとえば布を巻いていても完成する。その布自体に価値はない。勿論高級な布もあります。でもその価値というのは結局物語。ものはただあるだけ最初から。それに本来とは全く関係ないことをどんどんみんなが付け加えて価値ができていく。そういうのをショーでやっていたんです。
―ショーではその付け加えている作業だったということですね。
そうです。だからただの麻の袋みたいな服から、だんだんちゃんとした服になっていった。
―そうなんですね。あのやり方だとその服の流れがあまり頭に入ってこなかったんです。
それはあるかもしれません。ライブを見に来たような感覚みたいな。
僕が服を作って、それ自体は勿論ちゃんと作っているんだけど、できた服に僕の物語をどうだってことはやりたくなかった。こんなこと考えていて、こんなかっこいいもの作って、こんな技術があって、こんないい生地使いました。ってことではなくてものは自然にある。そのものに全然関係ないところから全然関係ない言葉が色んなところから加わり、価値が生まれる。
―ショー全体が価値を付ける作業ということだったんですか?
価値というか物語を付け加える作業です。
だから服を見たいという感じでショーに来たら物足りなく感じる部分はあったかもしれません。でもファッションの縮図を描きたかった。2000年の歴史というか。
「これはそこで取れた糸でこうして作って織って、綺麗なシャツを作りました」、それも素晴らしいと思う。でもそれがファッションかといわれるとちょっと違う気がする。
それはそれであってそれがぽんと世の中に出て、それが今度物語を持ってくるというのは違うと思います。
―難しい。
わかりやすい例でいうとキリストを包んだ聖骸布ってありますよね。それは元々ただの布です。死体のシミがついているだけ。それがキリスト教というものがあり、聖書という物語があり、それを信じる人がいて、そこから歴史ができて、ただの布が凄い価値のあるものになった。大事にされる。みんながそれを本物か偽物かみたいにする。そういうことです。
それがファッションかというと難しいですが全てのものごとには物語がある、歴史もそういう感じでできているんです。
―なぜそういうことを今やろうと思ったのですか?
ずっとそういうことを考えていました。病気なのかもしれないけど。
―物の価値についてですか?
そうではないです。形にないもの、人の想いや物語とか。
今はお金も価値のひとつの基準になっていますが今回はお金は全然関係ない。目に見えないものとか、人の想いとかっていいなって。
―それをわかりやすくストーリーにしたと
それをショーの中でやってみたかったのが今回です。
―今までのショーと一番変わった部分は何だと思いますか?
今までというより前回と変わったことは前回よりある程度自分がやろうとしていることを表現しました。前回はその人が着る為の服、今回は誰の為にというのはなく、あえていうならここにいない人の為の服。弱い人の為の服でもある、死んだ人とか、ここにいない人。
弱い人に共感するものがある。人の為に服とか作りたくないし、「俺お金持ってるよ」と言われても別に何も思わないし、そういう人に良かったねーといわれてもなにも思いません。
―”弱い人の為の服”とはどういうことですか?
弱い人に着てほしいとかそういうことではないんですけどなにかを共感してもらえるようなことをやりたい。それを前から思っていました。
―岡山に移り住んだからこういうのをやりたいと思ったからではなく?
そうではないですね、ずっと形にしたかったことを今回やっとできたということですね。その時、その時で形を変えながら温めてきた。今回のやつはかなり前からやりたかった形です。
―次のアイデアはもう決まっているんですか?
次は3月にやりますよ!
―絶対にやらないですよね?
いや絶対にやります。
―岡山ではやらないんですか?
やりたいんですけど誰も興味がないので難しいですよね。
―8月には瀬戸内芸術祭でもショーをやるんですよね?
やります。考えてはいますがなかなかハードルが高いですよね。なにも決まってないし、モデルも決まってないし。
―モデル希望があれば連絡してほしいと
そうですね。どんどん連絡してほしいですね。(興味がある方は→potto@i.softbank.jpまで)
―ショーまでの間高松で生活されるそうですが、そこではなにをやるんですか?
基本は作り続けているだけです。テントみたいなところがあってそこで作ってそれを展示して、あとは絵になる服を展示します。