Interview

森栄喜 intimacy 2/3


 
(写真は)熱い思いもそよ風みたいにさりげなく広められる。観た人に自然に浸透してよりナチュラルに広めることが出来ると思います
  
→森栄喜 intimacy 1/3
  

―栄喜さんが撮る写真はポートレートが中心です。なぜそういった写真を撮るようになったのですか?
 
とても人見知りなんですが、基本、人が好きなんだと思います。写真を始めた頃は母親の写真ばかり撮っていました。風景写真にも人が入っていないと寂しく感じてしまいます。空の写真を撮っていたりもするんですけど、それも人が一緒にいるときに見た風景や、その人の部屋から眺めた風景、、、全部人物に関連がある写真なんです。
 
―なぜ男性の写真が多いのでしょうか?
 
最初はセルフポートレートのアプローチで撮っていたので自分を重ね合わせていた、だから男性が多かった。そこから自然に男性だけになっていった。やっぱり写真を撮ることで自分を肯定するという意味もあったので。男の子の写真を撮って発表することで自分も社会的に肯定されている気がする。そのままでも問題ない、自信をもっていいんだって。もちろん撮られている子も作品となることで力づけてあげられたらいいなというのもあります。
 
―男性を撮る時と女性を撮る時で感覚は違いますか?
 
女性を撮る時はセルフポートレート的感覚にはならないのでそこはやっぱり大きく違います。仕事だと撮る理由は関係ないので、女性も素直に撮れる。写真集や作品は思い入れや、なぜ写真を撮るのかという必然性が絶対に必要なので結果男性の写真が多くなるんです。
 

 
―では写真集「intimacy」を作ろうと思った理由を教えてください。
 
等身大のゲイカップルのイメージを発信したい。ゲイの子にもそうだし、そうでない人にも。写真集でまとめると残るし広められるかなと。あとはやっぱり悩んでたり苦しんでるLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の人に届けたいっていう思いですね。
 
―写真集を作るのにも凄く強い意志や想いが込められているんですね。
 
でも軽やかに表現していきたいし、作品にはそういうものが全面に出ないようにしています。前回の「tokyo boy alone」は男性を被写体として撮影する中で、自己の投影を試みました。「intimacy」はパートナーシップがテーマ、その流れで今は家族をテーマに写真を撮っています。その他に同性婚をテーマに写真で訴えるプロジェクト「Wedding Politics」も始めました。同性婚が法的に整うまで続けたいなと思っています。
 
―敢えて同性婚の法整備を訴える理由は何でしょうか?法的に認められる必要性はあるのでしょうか?
 
それはあると思います。でもそれが認められるからと言ってみんなが法的に結婚をする必要はないと思います。ただ、したい人が出来ない世の中は良くないと思います。遺産相続のこともあるし、子供も持ちたい人もいると思います。フォーマットの話ですがそれが認められないと自分達も認められてない、社会のシステムとして組み込まれていないのではないかと感じてしまいます。
 

 
―それは海外に行ったからこそ思ったことですか?
 
関連はあるかもしれません。日本は声を上げなくても少し我慢をすればそれなりになんとなく暮らせる。だからこそ写真で出来ることをやりたいんです。
 
―写真の魅力ってなんですか?
 
熱い思いもそよ風みたいにさりげなく広められる。言葉は鋭くて強いし、映像は音も入ってくるのでプロパガンダではないですが強力だし暴力的な側面もあります。写真は観た人に自然に浸透してよりナチュラルに広めることが出来ると思います。

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