Interview

日本の技術とクリエイターが出会う合同展示会『EN』

ENとはMercedes-Benz Fashion Week TOKYO(以下、MBFWT) 2014-15 A/W開催期間中に行われた、日本の技術とクリエイターとがセッション行い制作したコラボレートアイテムを展示し、国内外に向けて発信をする一般観覧可能なトレードショー/エキシビジョン。
徳島県の藍染め革製品や江戸切子、浅草の職人の手によって制作されるステーショナリー海外メゾンへ生地提供をしている尾州のウールなどの日本の職人の技や開発技術とファッション業界に関わりの深いクリエイターが共創した、新たな価値を吹き込んだ14組のライフスタイルアイテムが一同に並び国内外の来場者から注目を集めた。
”EN”はどのようにして生まれ、どのように形となっていったのか、プロデューサーであるKIRA氏に話を聞いた。
 
  
■EN Exhibitor/Creator
M.SCOOP/ミマツ工芸(佐賀)× plantica  
カイハラ(福山)× iTADAKi
華山(有田)× L  
KINUYA(徳島)×F
指物益田(墨田区)×SyuRo   
SIWA | 紙和(山梨)×JOINTRUST
添島勲商店(大川)×FUGAHUM   
タケヤリ(倉敷)×THE UNION
手捺染 久山染工(京都)× PLASTICTOKYO  
Tokyo LIFE/ライフ(東京)×archi
中伝毛織(尾州)×ARTYZ   
堀口切子(江東区)×HAN AHN SOON
MARUITEX/丸井織物(能登)×RESISTANT  
000/笠盛 (桐生)×JUN OKAMOTO

 
 
―今回“EN”という企画を行うに至った経緯を教えていただけますか?
  
日本の伝統工芸やファッション、それぞれがそれぞれの業界でおもしろいことをやっています。ですが日本の素晴らしいもの作りを外に伝えるにはという点ではなかなかうまく見せれていない部分があるのではないか。みんな試行錯誤しているタイミングだと思うんです。ではファッション業界として日本のもの作りを伝える、ファッション業界の視点でやれる方法は何か、コラボレートというものがたくさん世の中に出回っている中で、もう一度その意味をよく考え、この技術に対してはこのブランドが合うんじゃないかということをしっかり考えて展示するような企画をやろうと思ったのが始まりです。
こういうイベントをやろうということに対して14社の枠があり、それに対して僕が日本のもの作りをやっている、日本の伝統工芸を見ていく中で面白いなと思った人たちにこういう企画をやりますという説明をしたうえで参加してもらっています。先に産地さんが決まった上でそれに合うブランドをセレクトしていきました。
  
―産地とブランドの組み合わせは誰が考えたのでしょうか?
  
それは僕がマッチングさせました。ファッショントレンドでコレクションで1シーズンで終わっていくものが多い中でプロダクトという部分をフィーチャーしてベーシックになるようなアイテム開発をこの業界からやれたらいい、最終的に流通にしっかり載せていくことを考えてやっています。とはいえ、プロダクト的なアプローチはテ-ブルがありそこに日々置くにはどういうデザインがふさわしいのだろうかとか、どういう素材を選ぶのがふさわしいのかというアプローチなのですが、ファッションデザインはアイキャッチ―から入り、ドライブ感みたいなものがファッションの特性としてあります。そこの中間で話題にもなりアイキャッチにもなり、でもそこから長く使われるようなストーリーがものに宿る、そういった着地になればいい。そういう組み合わせを考えました。
  

―イベントの準備にはどのくらいの期間をかけてやっていったのでしょうか?
  
半年くらいです。ですが物作りをする期間は3か月しかないものもあったりかなりタイトな時間で進めていきました。
  
―組み合わせから先はどのように進めていったのでしょうか?
  
組み合わせから先は工場とブランドでやり取りしてもらっています。勿論僕の方でここの良さはこれだから、これを売りにした方がいいよという最初のアイデアは投げましたが、それを踏まえたうえでそれぞれが自分のものにしてもらって出てきたものというのは結果的に僕らが驚くようなものに仕上がっていたのでさすがだなと。
  
―“EN”で発表された物は実際に店頭に並ぶのでしょうか?
  
発売に関してはそれぞれのデザイナーさんと産地さんとでコミュニケーションをとってもらっています。自社でブランド展開されている方もいるので、そこが自社オリジナルでやりたいですという場合には在庫積んで売っていく可能性もあります。基本的には今回作ったものは全て商品として流通させるイメージで作っています。今の時点ではプロトタイプの物もありますがいずれは形にして販売していきたいと思っています。
  
―クリエイターを選ぶ基準はどのようなものだったのでしょうか?
  
通常のブランドコラボレーションというブランドの世界観を100%出すという方式ではなく、今回はあくまで主役は産地の方ですので、彼らをうまく料理することが出来る方、かつファッションデザイン以外で器用なデザインができる方、というのを想定してセレクトしています。これまでプロダクトプロデュースをやったことがないブランドさんもいますがそういったことをやることでデザインのベースアップも出来るかなと。ヨーロッパ各地に卸しているようなブランドさん、世界で活躍されているブランドさんと国内から海外に出ようというブランドを組み合わせることでお互いのエジュケーションになるようなものになればいい。お互いがお互いに“EN”(縁)をきっかけに会話をして、摩擦が起き、問題を解決して、お互いの知識や財産に繋がればいい。其々がないもの同士を補えるよう微妙なところで組み合わせていきました。
  

―実際に摩擦はあったのでしょうか?
  
良いものを作る為に激論はありました。これはファッションのアプローチかもしれないけどうちではこういうやり方は出来ないとかそういうのは何度もありました。
産地の方はファッション業界のことを知らない、自社の強みをわかっていない。一方ファッションの方は産地のことを良く理解できていない。まずはお互いの強みを知ることから始まりました。何度も会話を重ねていった結果、結局最後には良いプロダクトが完成したと思います。
  
―今回参加した産地の方々はこれまであまりファッションに絡んだことはないのでしょうか?
  
ファッション業界のことなんとなく知っていますがいまどのようなことが起きていて、誰が有名なデザイナーだとかは全く知りません。だからこそフラットに話ができたんだと思います。
お互いに遠いようで近い、近いようで遠い。でも混ざる必要はありません。こういうイベントイベントで少しでも繋がれば日本の流通の知識がお互いにシェアされて溜まっていきます。それを重ねることで少しでも補足されていければいいのではないかと思っています。
  
―実際にイベントをやってみて、来場者たちからの反応はどうでしたか?
  
企画の趣旨自体にも凄く良いレスポンスをいただいています。さらにそこから先、アウトプットされたものが、凄くハイクオリティなものが出来上がったということでこれまであったようなイベントとは違うという見方をしてもらえています。こういうパッケージで他の場所でもやりたいですとか、海外でもどうですかという話も頂いています。
  

―“EN”としての今後の展開はあるのでしょうか?
  
継続してやっていきたいと思っていますがJFWの企画の一環ですので今後の予定はまだわかりません。僕自身の会社SELFでは4月1日からこのコンセプトを使い、別の名前で1年かけてプロジェクトとしてやっていきます。150社くらいある産地のメーカーを振り分けして、毎月なのか、2か月に一回なのか、まだ決定していませんが5社ずつくらい出していく。今回はイベントの特性上14社一遍に出さなければいけなかったので、もっと深く、濃く、それぞれに焦点をあてることができればいいなと思っています。
  

Interview & Text:Masaki Takida

 
 

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