Interview

Christian Wijnants 2/3

 
色使いはとても大切にしており、最初に進めていく工程の一つです。シーズンの初めには膨大な時間をかけて色についてのリサーチをします。色が決まることによってシェイプも決まっていきます

→Christian Wijnants Interview 1/3
 

――クリスチャン・ワイナンツと聞くとニットウェアというイメージが強いのですがご自身のニットに対する拘りというのはどういったものですか?
 
毎シーズン新しい編み方に挑戦していきたいと思っています。今季もボスニアの職人とコラボレーションしましたがハンドニットの可能性を追求してきたいです。
私のニットが他のブランドと特に違う点は、編む糸が全てイタリアの上質なものを使っていることです。編む糸が上質なものだと完成したもののクオリティが全く変わってきます。何度着用しても糸の劣化が少ない。より長く着ていただけますし、見た目にもクオリティが違います。ニットに使用する糸には特にこだわっています。
 
――テクニックだけでなく素材に対する拘りも強いということですね。
 
そうですね。それに色に対する拘りも強いです。
製品染めに元々興味があり、7,8年前からニットを染めることをスタートしました。それぞれのコレクションはアトリエ内にある染色スペースで自分たちで色だしまでしています。
 
――コレクションの工程について教えてください。
 
色使いはとても大切にしており、最初に進めていく工程の一つです。シーズンの初めには膨大な時間をかけて色についてのリサーチをします。自分たちのイメージに合うように染色も自分たちで行い、何度も染めのテストをします。カラーパレットは最初に進めていく工程の一つであり、一番時間をかけて進めていく工程の一つでもあります。色が決まることによってシェイプも決まっていきます。
テキスタイルもとても重要です。毎シーズン違うテクニックを使いますし、時にはテキスタイルデザイナーや技術者ともコラボレーションして生地を作っていきます。
時間がある時は美術館にも行きますし、できるかぎりの時間をリサーチに費やしています。ですが時間は限られていますので次のシーズンの為だけでということではなく今後のコレクションの為に常にリサーチを積み重ねています。次回のコレクションに使うことが出来なくてもその次のコレクションに使うかもしれませんし、さらに次のコレクションで使うかもしれません。リサーチはとても大事にしています。そしてリサーチをしたイメージを一つにまとめるために、ムードボードを作っています。コレクションのストーリーやフィーリング、ボードにイメージをクリッピングしていきます。コレクションの制作期間中には何度もボードを見て、イメージを膨らませていきます。
小さな会社で、私はデザイナーですがそれと同時にオーナーでもありますので、デザインだけをしているのではなく会社をマネージメントもしないといけませんし、事務仕事もしないといけません。今はまだデザインだけに集中できる環境にはありませんので特にムードボードは重要なのです。
 

――毎シーズングラフィックもとても印象的ですがグラフィックはどのようなところからインスピレーションを得るのでしょうか?
 
グラフィックは3Dで作ったものを2Dに落とし込むものが多いです。例えばニットを編んで、そのニットをスキャンしてそこからグラフィック加工をしてプリントにしたりしています。グラフィック単体ではなく、ニットとグラフィックがリンクしているものが多いです。絞りの技術を体得したことで絞りの生地をスキャンして絞りのプリントを作ったりもしました。単純にニットと布帛でなく、それぞれの関係性も大事にしていきたいです。
 
――レディースのみの展開だと思いますがこれまで発表してきたニットウェアの中にはメンズでも着られそうなものも多いと感じています。メンズウェアのコレクションは発表しないのですか?
 
お客様方からそれを聞かれることも多いですし、みんなが期待しているのは理解しています。中にはユニセックスで展開しているものもあります。ですが、メンズでフルコレクションをやるかといわれたらまだその体制は整っていないと感じています。1年後か2年後かはわかりませんが近い将来メンズも発表出来たらと思っています。
 
――ベルギーのアントワープを拠点にされていますが、アントワープという街はデザインしやすい環境にあるのですか?
 
デザイナーにとってとてもいい場所だと思います。伝統的な文化も大切にされていますし、ヨーロッパの中央にも位置していますのでパリやロンドンなどのインスピレーションに溢れる大文化圏にも数時間で移動することが出来ます。
そのような場所に位置しながらもそういった街に比べてとても静かな街ですので自分の仕事に集中できます。
例えばパリでやっていくには伝統と歴史があり、ファッションでありながら伝統に縛られることもあり、ある意味オールドファッションな部分もあります。アントワープはそういった点ではもっと新しい街で自由にデザインすることが出来ます。より実験的でもあります。アントワープはルールも階級もありませんしフリーダムです。そういった意味では凄くデザインをしやすい環境だと思っています。
 

――アントワープ王立芸術アカデミーという学校を選んだ理由はなんですか?

私自身アントワープの第一世代、いわゆるアントワープ6(アン・ドゥムルメステール、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク、ダーク・ヴァン・セーヌ、ダーク・ビッケンバーグ、ドリス・ヴァン・ノッテン、マルタン・マルジェラ)に凄く影響を受けてきています。まだ14歳くらいの頃にアントワープという街に興味を持ち、そこの学校出身のデザイナーの作品は素晴らしいものばかりで、中でもアン・ドゥムルメステール、マルタンマルジェラ、それに特にドリス・ヴァン・ノッテンの3ブランドのコレクションは大好きでした。彼らが発表しているものを見るとこの場所は自分が学ぶべき場所だと感じたのです。
 
――実際学んでみてどうでしたか?
 
想像していたものとは全く違いましたね。入学時は若かったので本当のファッションビジネスとは何かということを理解できていませんでした。想像とは違い、学校生活はとてもつらく厳しい時間でした。学年が終了するごとに生徒がふるいにかけられ、卒業するときには凄く人数が減っています。学校を卒業することだけでもとても大変なことです。毎日ハードワークをして、常に進歩していく姿勢を示さなければいけませんでした。とても大変な時期でした。
本当のファッションビジネスというものは簡単なものではありません。とてもタフで、ハードなビジネスです。たくさん働かなければいけませんし、常に情熱をたやさずやらなければいけません。そういう意味でアントワープの学校での時間はファッションビジネスをやっていく上でのとても良い準備期間になったと思います。アントワーを卒業できるということは精神的にとてもタフであるということの証明でもあると思います。タフな世界でやっていけるだけの準備がしっかりできているということなのです。
 
 

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