Interview

Paul Andrew


  
イギリス生まれのPaul Andrew(ポール アンドリュー)はNY を拠点としたシューズ&アクセサリーデザイナー。Donna Karan、Calvin Klein)、Alexander McQueenなど名だたる一流ブランドで15 年以上の経験を経て、2013 年SS より自身のブランドをスタートした。ブランド始動後まもなく、Next Magazine アクセサリーオブザイヤー、Fairchild Publications× Footwear News “Launch of The Year 2013”を受賞し、2014年にはCFDA/VOGUE FASHION FOUND のトップオーナーズを受賞し一躍注目を集めた。2015 年、CFDA SWAROVSKI AWARD のアクセサリーデザイン部門にノミネート。現在、日本のRESTIR BOUTIQUEを始めとした世界中のセレクトショップやブティックにて取り扱われている。

 
―あなたがシューデザインに興味を持った理由を教えてください。
 
私の父親は英国王室の家具職人をしていました。素晴らしいアンティークの家具や、職人の技術、そういったものが身近にある環境で育ち自然とそういったものが私に影響を与えてきました。同時にイギリスのファッションマガジンを読みはじめファッションにも興味を持ちました。また、同時に建築にも興味を持ち、モダンビルディングをデザインすることにも憧れていました。それぞれあまり結びつかないと感じるかもしれませんが私が靴デザイナーになったのはというのはそういったこと全てが積み重なった結果だといえると思います。Paul Andrewの靴は完璧な職人技術で作られた美しいバランスで成り立っています。私にとってシューデザインとはビルをデザインするようなものです。まっすぐに立っていなければいけないし、そのバランスがとても重要なのです。技術に基づき計算された形がなければ倒れてしまいます。
  
―大学を卒業した後、Donna Karan(ダナ・キャラン)、Calvin Klein(カルバン・クライン)、Alexander McQueen(アレキサンダー マックイーン)といったトップメゾンで経験を積みました。そこでの経験はあなたにどのような影響を与えていますか?
   
それぞれのメゾンで特色は違いますし、学んだことは異なります。最初に経験を積んだAlexander McQueenでは1990年代後期に仕事をさせてもらったのですが、その頃彼はまさにファッション界で最も位のイノベイティブなデザイナーとして世界中から賞賛をされていました。彼は私に「常に既存の考えにとらわれることなくデザインをしなさい」と言っていました。NYに渡りCalvin Kleinではよりウェアラブルでミニマリズムともいえる考え方を学びました。Donna Karaは女性そのものに寄り添ったモノづくりをするブランドでした。カスタマーがどのようなライフスタイルを送り、どのような洋服を着るのか。そのどれもが全く違う考え方のブランドですがそのどれもが今のPaul Andrewというブランドを形作っているといえます。
私はブランドをスタートする時に500人以上の女性に調査をしました。どのような靴があなたにとってパーフェクトな靴なのかということを。なぜかというと今市場に出回っているほとんどの靴が1970年代に作られたデータをもとにしています。モダンな女性の為の靴をデザインする為に現代の女性を知ることを重要と考えました。Paul Andrewのシグネチャーともいえるパンプスはクラシックで一見とてもシンプルに見えますが目で見る以上に複雑な工程から出来上がっているのです。とてもシンプルに見えますがそういったディテールをどうするかによって履いた時の見え方や履き心地、そして歩いた時の美しさが全く変わってくるのです。そういう部分にこだわっているのはDonnaやCalvinの影響があるといえるでしょうね。
   

Paul Andrew Pre-Spring 2016

―シューデザインにおいてもっとも重要視する部分はどんなところでしょうか?
 
まずは靴そのものの価値、デザインの部分を考えます。それがどのような形に見えるかということです。なぜなら最初に人々が興味を示すのはデザインだからです。その次に考えるのはその靴を履いた時にどのように感じるかを考えます。デザインに興味を持ち靴を見たその後は靴の中に足を入れます。もし履いた時に快適じゃなかったらいくらデザインが素晴らしいものでも購入はしませんよね。だからそのふたつは同じくらい重要な要素だと考えています。
 
―ファッションショーを行っているブランドにも靴を提供していますがランウェイで使用している靴は未完成なものも多いと聞きます。ランウェイでも履き心地は重要視して作っているのでしょうか?
 
私はこれまで完璧にフィットしない靴を世に送り出したことはありません。たとえそれがファッションショーに使うものだとしても。
 
―ブランドデビューしてから僅か3年でブランドがここまで成長すると立ち上げ当初想像はしていましたか?
 
ブランド設立当初に描いていた大きな夢が少しずつ実現しつつあると感じています。CFDAで賞も受賞しましたし、影響力のあるセレブリティ―達にもたくさん履いてもらっています。しかしまだまだブランドとしてやることはあると思っていますし、様々な可能性があります。人間に例えれば赤ちゃんのようなスタートしたばっかりの会社なのです。私はそれらひとつひとつをスローペースで一歩ずつ着実に実行していきたいと思っています。
 
―東京ではRESTIRで来日パーティーも行われ、たくさんの顧客とも触れ合ったと聞きました。日本人の女性の印象はどのようなものでしたか?
 
私はここ最近頻繁に旅行し、実を言うと東京はこの2週間のうちに7つ目の都市なんです。世界中の様々な都市を旅してきました。その理由は自分のカスタマーに直接会いどんな女性が購入し、どういうところに惹かれたのかというのを直接聞きたいからです。カクテルパーティではたくさんのお客様に会うことが出来、また話をすることが出来、とても素晴らしい夜でした。私は日本の女性はとても洗練されていて自分を持っている人が多いと感じています。私は理想のシューズとしてシック、エレガント、ジョイフルという3つの言葉を挙げています。それはまさに日本の女性にもピッタリな言葉だと思います。
 

Paul Andrew Spring 2016

―デザインのインスピレーションはどういったところから。
 
毎シーズン異なる都市が私のインスピレーション源となります。ラストシーズンはNYでクライスラービルディングなどから影響を受けています。今シーズンは香港がテーマです。昨春に初めて香港を訪れました。街自体にとてもインスパイアされ、NYに戻り、ウォン・カーウァイの映画、花樣年華(In the mood for love)を見ました。マギー・チャンが映画の中で着ていた美しいドレスの数々がとても印象的でそういったものから着想を得ています。次の冬はイスタンブール、アラベスクディテールがモチーフです。もしかしたらその次は東京をフィーチャーしたコレクションになるかもしれませんね。
 
―近々メンズシューズもローンチされるようですね。
 
この夏にデリバリーがスタートします。メンズがローンチされ、店頭に並ぶのがとても待ち遠しいです。メンズシューズのデザインは私がずっとやりたかったことの一つですから。モダンな考え方を持った、現代の男性の為にデザインしたメンズシューズを探していましたがそういったものが今まではマーケットにはありませんでした。今マーケットに溢れているのはクラシックでトリッキーなものばかりです。スタッズやバックル、装飾過多なものや派手なカラーリング・・・・。私のデザインした新しい靴がマーケットで受け入れられることを望んでいます。ファーストシーズンはアメリカではBARNEYS NYでエクスクルーシブで発売されます。フランスではColette、ドバイではLebel Shoe Districtなど洗練された世界のブティックで販売が決まっています。
 
―メンズとレディースで考え方に違いはありますか?
 
全く違いますね。デザインに対する考え方、靴を作る工程、工場も違いますし、使われる素材も違います。私はメンズの靴をデザインするのがとても好きです。私にとってメンズシューズのデザインはとてもパーソナルなものなのです。
 
―なぜブランドを始めてからメンズコレクションをローンチするまでに3年もかかったのですか?
 
それはメンズコレクションを始めるまでの過程をとても大切にしていたからです。どのようにブランドを確立し、ブランドを成長させていくのか。その結果としてのメンズシューズのコレクションなのです。私は何事も急いで進めることはしたくありません。ブランドが成熟するためには長い時間をかける必要があります。メンズをやらなかったのはブランドとしてメンズをやる準備ができていなかったからだといえます。2014年にCouncil of Fashion Designers of America/Vogue Fashion Fundを受賞し30万ドルの資金を手にしました。プライズのおかげでメンズシューズコレクションをローンチすることが出来ました。ただメンズシューズは私が今後手掛けていく数多くのプロジェクトの1つに過ぎません。

Paul Andrew Pre-Fall 2016

 
―今後ブランドのカテゴリーをより広げていくということでしょうか?
 
そうですね。今後様々なカテゴリーに挑戦していくと思います。ハンドバッグもそうですし、スモールレザーグッズにアイウェア、さらにインテリアやファーニチャーなども手掛けることになるでしょう。つい先日、カントリーサイドに家を購入し、今現在家の内装を手掛けている最中です。そういうことからもそういったことをデザインすることになるのはとても自然なことといえます。
 
―今後の展望はありますか?
 
これまでと同じようにゆっくりと着実に成長していくことを望んでいます。つい最近ウェブサイトが新しくなったのですが今後オンラインショップもスタートすることになると思いますし、ゆくゆくはブランドのブティックもオープンしたいと思っています。ただ先ほども言いましたがブランドとしてはまだ赤ちゃんの段階です。それに物事を急いで進めることはしたくありません。ゆっくりとブランドを確立していければと思います。
 
 
Paul Andrew:https://paulandrew.com/

 

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