Interview

映画「エヴォリューション」 監督ルシール・アザリロヴィック

 2016年11月26日(土)より、各映画祭で大きな反響を巻き起こしたルシール・アザリロヴィック監督による圧倒的な映像美で描かれた禁断のダークファンタジー映画『エヴォリューション』がアップリンク渋谷、新宿シネマカリテにて公開される。
森で暮らす少女たちを描いた前作『エコール』から10年ぶりに来日した監督のルシール・アザリロヴィックに話を聞いた。
 

© LES FILMS DU WORSO • NOODLES PRODUCTION • VOLCANO FILMS • EVO FILMS A.I.E. • SCOPE PICTURES • LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015

 
―映画の構想は前作「エコール」制作前からあったそうですが作品にするまでに10年以上の歳月がかかったのはなぜですか?
 
「エコール」撮影以前に「エヴォリューション」という作品の構想はありました。その時は病院のイメージや、病院にやってくる男の子というイメージがあったくらいでそれを温めていこうとした時に、友人から「エコール」の原作を読んでみないかと言われて読んでみたらそっちの方に意識がいってしまい「エコール」の撮影をしました。「エコール」が終わってから「エヴォリューション」に取り掛かり始めて、病院から海のイメージまで広がったのですが、ストーリー作りや映画の制作に時間がかかったというよりも、説明するのが凄く難しい内容なのでなかなか受け入れてもらえなく、予算を集めるのに凄く時間がかかってしまったんです。
 
―タイトルの「エヴォリューション」(進化)にはどんな意味が込められているのでしょうか?
 
タイトルの“エヴォリューション”には二つの意味が込められています。
一つはダーウィンの進化論ではないのですが生物学的な進化という意味での“エヴォリューション”です。人類は遥か昔海に存在し、進化の過程で陸に上がり哺乳類へと進化しました。海の生き物と人間の混成によるハイブリッドな生物を生み出すという意味での“エヴォリューション”。もう一つはこれから成長していく男の子の心の成長という意味での“エヴォリューション”です。
 
―作品の内容はどういったものから影響を受けているのでしょうか?
 
作品の内容は特に風習などから影響を受けているということはありません。自分の中で実際にあった、感じたものを組み合わせて作っていきました。それからあえていろんな設定を逆にしています。映画に出てくる女性達は普通の女性のイメージではなく、危害を加えるような存在です。男の子はデッサンをしているのですが彼は空想の中で現実を描いていますが私の映画は映画の現実の中で空想を描いています。少年の不安な気持ちを描くというのがまず最初にあり、そこから母親との関係など広げていきました。
 
―映像美が印象的な作品でしたが撮影手法やロケ地などでこだわった点はありますか?
 
映像的に美しい場所を見つけることが出来た、ロケ地に凄く恵まれたということが大きいと思います。海の中のシーンもそうですし、美しい自然がある、火山の島で、黒くごつごつした岩、白い壁の村、そういった対比が私が描いていた通りのロケ地に出会えたんです。あの島を選んだのはその村があったからというくらいぴったりなものでした。文明から孤立していてまるでおとぎ話の中にでてくるような、それでいて病院的なイメージもある、あまり観光客もこないような場所でした。頭の中にあったイメージはセラドール監督の「ザ・チャイルド」という映画に出てくる村です。
撮影監督はマニュエル・ダコッセという人なのですが彼は仕事が早く的確に私が意図していたものを実現してくれた。照明は自然光を使う。カメラはフィックスで動かさずアップにするところはアップにするということをよく話し合い、構図的には60年代の日本映画の構図を彼に勉強してもらい本能的に撮影していきました。今回はデジタルでの撮影だったのですがテクスチャーに凄くこだわったのであまりにもはっきりしたものがでないように少しぼんやりとした夢のような映像を撮ることをこころがけました。
 
―前作同様子供に焦点を当てた映画ですがなぜそういった子供に焦点を当てた映画を撮ろうと思ったのですか?
 
私自身その年齢だった時期に色んなものを感じた、その頃の自分というものが強く残っています。映画を撮ることでカタルシスを得ようとしているのかもしれません。「エコール」だけでなくその前の「ミミ」も子供を主人公にしているのですが、9歳から11歳くらいの子供というのはとても感受性が強く、大人の世界に入っていくにあたり色んなものをはじめて体験する時期です。そういうのが凄く面白いと思っているのでそういった子供達に焦点をあてた作品を作っています。
 
―この作品は世界中で評価され、映画祭も様々な賞を受賞しています。映画が評価されたことに対してどのような感想をお持ちですか?
 
先程お話した撮影監督のマニュエル・ダコッセの力が非常に大きいです。たくさんの映画祭で撮影賞をいただき視覚的なパワーがあると評価されたのだと思います。脚本を書くのに凄く苦労したので脚本賞もいただけたら嬉しかったのですがそれはかないませんでした。
 
―次回作の構想は既にあるんですか?
 
あまり具体的な話はまだ出来ないのですが今書いているものはあります。今回「エヴォリューション」を作るのにあまりに時間がかかってしまった。また同じように時間がかかってしまうんじゃないかと思うと少し怖いですね。
 

 
映画『エヴォリューション』
(2015年/フランス/81分/フランス語/カラー/スコープサイズ/DCP)
脚本&監督:ルシール・アザリロヴィック(『エコール』(2004)『ミミ』(1996))
プロデューサー:シルヴィー・ピアラ、ブノア・カノン
撮影監督:マニュエル・ダコッセ
美術監督:ライア・コレット
出演:マックス・ブラバン、ロクサーヌ・デュラン、ジュリー=マリー・パルマンティエほか
配給・宣伝:アップリンク
 
2016年11月26日(土)より、アップリンク渋谷、
新宿シネマカリテ(モーニング&レイト)ほか全国順次公開
 
公式サイト: http://www.uplink.co.jp/evolution/
facebook: https://www.facebook.com/evolutionmovie.jp/
Twitter: https://twitter.com/evolution_movie
 

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