Interview

鈴木道子 Nocturne #22, #23 ~古典の現代における再解釈~ 2/3

ファッションって軽いイメージが世間にはあると思うのですが、私たちは気持ちを込めてクリエイションをしている、人に勇気を与えることができるような仕事をしたいと思っています

→鈴木道子 Nocturne #22, #23 ~古典の現代における再解釈~ 1/3

―Nocturneという名前はショパンの曲からということですがなぜそのブランド名にしたのでしょうか?

Nocturneという名前はショパン以外にもたくさんの方が使っていて、誰が使ってもいい名前なんです。Nocturneとは夜を想う曲、それを私は洋服でやろうと思い付けました。私は人間誰しも闇の部分を持っていると思っているのですが、人間はそういうものだと認識すれば前向きに生きていくしかなくなる。それでショパンは21までなのですがそれに続く22にしようと付けました。

―#22, #23と2つのラインがありますが仕事に違いはありますか?

#22はすごく気を張って作っていて、ヴィンテージの#23のラインは楽しく作ることが出来ています(笑)。
#22は自分でデザインして、パターンを引いてと、全て自分で受け持っているので自分の想像を超えないものが出来上がります。一方#23は古着の生地を使い、その都度ここはこうしようと臨機応変に対応しながら制作しているので、事故というか予期していないものができます。自分のイメージ通りにならないのですごく楽しいです。自分の想像の範囲内で作るものはどうしても神経質になってしまいます。

―#22, #23は同時に制作しているのですか?

同時にしています。#22で疲れてきたら、息抜きというか#23でバランスを取り、という感じです。できることなら#22はやりたくないですよ。憂鬱です(笑)。

―ではどうして#22を続けているのですか?#23は楽しく作れ、尚且つ評判も良い。#23だけでも成り立ちそうですが。

やはり#22は私そのものだ、ということがあるのかもしれません。#23は古着のもつ時間の経過だったりといったように力を借りてやっている。#22は自分で全て作っている、自分を曝け出さなくてはいけないところが恥ずかしいのですがそれがクリエイションだとも思っています。

―Nocturneは服ではなく人にスポットが当たるような服をデザインするという難解なテーマです。もちろん鈴木さんが提案する服というのは安易に地味な服ということではないと思います。どういった風に解釈すれば良いのでしょうか。

シンプルなものを提案することは勇気がいることです。下手するとつまらないと言われてしまいますから。Nocturneはパターンも変わったものが多いので服好きの方には評価していただけます。それに私が作ってきたものをずっと見てくれていた人は一度好きになってくれたらずっと好きでいてくれる。
ですが新しい人には少し伝わりにくいようです。一見すれば本当にシンプルな服なので。ですのでそこをどう伝えていけるかが今後の課題です。

―Y’s Red Label時代と作る姿勢に変化はありますか?

基本的には変わりません。

―Y’s Red Labelのときも道子さんそのものを表現していたということですか?

そうですね。Y’sのパタンナーのときも反抗的と言われていて、私自身は“Y’s”を作っていたつもりなんですけど違ったみたいです。結局どこにいても自分の思うものしか作れなかったんだと思います。だからいつの間にか別のラインを担当していたんです。

―Nocuturneはメンズのファンも多いそうですが基本的には全てレディースですよね?

メンズも少しは作っていますが基本はレディースです。特に作り方は変わらないのですがこれからメンズも少しずつ増やしていこうと思っています。

―ものを作る上で大切にされていることはありますか?

ショップに行って接客もするのですが、そのときに堂々と勧めることが出来るアイテムかどうかが大事だと思います。妥協したものや自信のないものは出してはいけないと思っています。お客さんとの距離が近くなったことで反応も直接伝わるようになり、よりその意識が強くなったと思います。

―ショーには一般の方も招待されたのですか?

お店に来てくれている方を中心に招待しました。大阪からも来ていただいた方もいました。

―東京コレクションでの初のショーをやり終えてみて率直な感想をお願いします。

正直気が重いというのが本音です。お店に出すまでの作業の中で問題があればお客さんに迷惑をかけてしまうことになるので、どうしても神経質になってしまいます。ちゃんとした製品を作るために職場はかなりピリピリしていると思います。

―どうしてショーをやろうと思ったのですか?

ブランドをどうしていくかということを考えると、お店だけではやはり認知度は上がらないと思います。“お披露目”という言葉の通り広めるではないですけど、より多くの方に知ってもらう機会を作りたいと思って行なうことにしました。

―ショーは教会で行われましたが場所を先に決められたんですか?

そうです。ゼクシーを使って教会を探しました(笑)。
以前から教会でショーをやってみたいという思いがありました。はじめは洗礼とか受けないとダメなのかなとか考えたりしましたし、私は無神論者なのでそれでも大丈夫かなとか心配もありました。神様は信じていませんが教会と言う場所の持つ神聖さに魅力を感じます。空気が澄んでいて、でも人が集まる場所というところってあまりないと思うんです。

―教会ってファッションショーでも借りることが出来るんですね。ショー後の教会の人の反応ってどういうものだったんですか?

初めてのファッションショーだったようなのですが、教会の方々も「感動しました」と言ってくれました。やれて良かったなと思います。
ファッションって軽いイメージが世間にはあると思うのですが、私たちは気持ちを込めてクリエイションをしている、それを話して理解していただけたことがよかったのかもしれません。”誰かのために”という思いはデザイナーも神父の方も同じだと思いますし、人に勇気を与えることができるような仕事をしたいと私も思っているので、根底には通じるものがあるんだと思います。

―ショーをやるのにおいて場所は大事ですよね。

そうですね。Y’s Red Labelのときも特に場所には拘りを持っていました。でも東京ってあまり場所が無くて、公共の場所も使い辛いという現状なんです。

―今回のショーには師匠である山本耀司さんも来られていましたが何か感想をおっしゃっていましたか?

「原点だね」と言われました。もしかしたら自分も戻りたいのかもしれません。新しいものを作り続けることって凄く難しいことですから。

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