Interview

nusumigui 山杢 勇馬 3/4

「みつぼしれすとらんのふれんちもいいけど、おかあさんのつくるあげたてのからあげをぬすみぐいするのもよくない? そんなことない?」。かちかちのモードじゃなくてもなんか手作り感あるものでいいんじゃないかって

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―nusumiguiというブランド名について教えてください。

最初のブランド名は実はnusumiguiではなくつまみぐいだったんです。つまみぐいに関しては彼女とのなんでもない会話から生まれたんですが特に理由はありません。でも”つまみぐい”の名前で検索するとアダルト系のサイトばかり出てくる。嫌だなと思ってnusumiguiにしました。

―ブランドのコンセプトを教えてください。

特にないんですけど最近気づいた、これかと思ったのは僕のブログにも書いてあるんですけど「みつぼしれすとらんのふれんちもいいけど、おかあさんのつくるあげたてのからあげをぬすみぐいするのもよくない? そんなことない?」です。かちかちのモードじゃなくてもなんか手作り感あるものでいいんじゃないかって。
だから毎シーズンのテーマも特に設定していません。考えるんですけどテーマを決めるとそれにある程度共通なものをもってこないといけなかったり結局首閉められて出来なくなりそうな気がするので。

―シーズンを無視した服作り、同一シーズンに作品を発表していますがそれは敢えてなのでしょうか?

それは始めからです。僕からすればみんながなぜ1シーズン後のことを考えてデザインしているのかがわからなかったんです。
「今着るものを今作れば良いじゃん。これから暑くなるのになんで冬物が店頭に並ぶんだろう」って。疑問でした。
それを聞いたら呆れられて説明されました。相談はしたんですけど「別にそれでもいいんじゃない」って言われたので別に自分はそれに沿ってやらなくてもいいだろうと。

―ではなぜルックやシーズン毎の物語を作ろうと思ったんですか?受注もしていませんし、ルックを作ったところで即売ですのでそれを買えるかどうかもわかりません。

そんなに意味はないんですけどああやって見た時にただ単に着ている人がいるより物語にした方が自分的にいいなって思ったんですよね。
自分的には作った服全部に愛着があるんです。作品として撮っておきたい、写真に残したい。これ売れ残って欲しいなとかそういう気持ちがあるんです。だから毎回写真に残そうとしているんです。

―その物語はどういう時に考えているのですか?

日々考えていて、iPhoneのメモ機能で書き留めています。僕はリサーチもしないので日々の日常しかない。例えばゴミが気になったらスタバのごみって書いたり。あとはほんと人間観察。あの人の服よいなって思ったら大体の感じで覚えてスケッチしています。
それに未だに納品も自分で手持ちで鞄一つで納品しにくるんです。色々動いて色んなものを見る。ほんと日々の日常からなんです。

僕は小さい頃から妄想するのが好きだったんです。高校の時はくだらない妄想ばかりしていました。男子校だったのでどうやったら女の子と付き合えるのかとか、理想の告白プランとか考えていました。
1ヶ月くらいメールもやり取りしていて、何回かご飯にも行って車でデートに行く。「今日こそ告白しよう」と気合いを入れて、葛西臨海公園に行って観覧車に乗る。夜の首都高で移動している最中に運転しながら告白するんです「好きです」って。でも告白したけど返事が返って来ない。見ると彼女は寝ているんです。でも起こしてまで言う必要もないかって。結局車は彼女の家まで着いてしまう。「今日楽しかったね。ばいばい」ってなった時に僕がドアを開けて帰ろうとしたら「ちょっと待って」と言われて窓をあけたら「わたしも(好きです)」って。この告白いいなって。そういうのをよく考えていました。結局実現していないんですけど。
花火も好きで、上がった時に言うんですけど「聞こえない」みたいな。一テンポ置くのが好きで。
そういう妄想に老けていました。

―twitterでは宝くじがあたったら自分の作品を買い戻したいとつぶやいていました。

そうですね。買い戻したいです。それでもう一度それをリメイクしたいです。

―それぞれの作品に思い入れがあると同時に服としても好きなんですか?

気持ち悪いですけど凄く好きですね。全部が全部自分が着たいものというわけではないですけど、過去で売れたものでも自分が着たいものはたくさんあります。

―洋服が出来るまでの過程を教えてください。

毎日素材を探しに何かしらどこか色々行っています。古着の倉庫も紹介してもらったのですがそれだと状態が良すぎる。手を加えなくていい、このままでいいんじゃないかって思ってしまうんです。僕が使いたいのは紙一重のださいやつ。そうなるとリサイクルショップやおばあちゃんとかがいってるような古着屋みたいなところになるので下町に毎日います。浅草とか巣鴨とか。糸も廃工場みたいなところからもらったり。でも普通の生地を買う場合もあります。
ある程度これでいいかとなるまで素材を集めてそれが集まったらアトリエに広めてこれとこれとこれとこれみたいに組み合わせる。コラージュみたいな感じです。例えば自分で作った鞄があるんですけどたまたまその生地の上にその棒があった。だからそれを作ったっていう。ほんとコラージュですね。

―服以外の材料はどこで手に入れるのですか?

ホームセンターですね。木は自分で拾って来たりもします。

―パターンは引けるんですか?

引けないです。
最近は一面取って布に置いて切ってみたいなやり方をしています。後ろを違う生地にしたいとなったら後ろを解体してそれを布の上において切ってもう一度繋げるみたいな。最初はくっつけていました。
ちょっと違った形にしたい時は、この辺太くするなら大体このくらいだろみたいなそんなやり方です。

―パターンを学びたいとは思わないのですか?

HISUIの伊藤さんには会うたびにパターンを学んだらという話をされます。興味はあるんですけど面倒くさがりなんです。パターンを学んだら可能性が広がるかなとも思うんですけどまだいいかなと。アシスタントもパターン引けないので。

―nusumiguiはユニセックスブランドなのでしょうか?

メンズブランドです。色んな人に言われますけど。そこにはこだわりがあります。
生まれ変わっても男がいいと思っています。変なこだわりがあるんですけど。
でも実際に僕の服を買ってくれる人は女の子が多いです。

―サイズはフリーですよね?

そうです。全部自分で着ていますが自分基準です。基本はニットなのでオーバーサイズも多いので冬物であれば多少大きい人も着れますけど。

―ぬすみぐいのモットーはなんですか?

ハッピーです。ラブもそうですね。

―服作りより工作の延長の感覚なんでしょうか?

そうかもしれないですね。道具がただミシンになったみたいな。付けたいもの付けて。悩むところもありますけど楽しんでやれていますし。売れる売れないに関しては悩まないですけどこれでいいのかなとか。展示会前は凄く悩むし、逃げ出したくなります。最初はやる気満々なんですけど日が近づくとやばいなっていつも思います。

―昔から図画工作等みずからの手を動かしたりするのが好きだったんですか?

好きでしたね。何でも作っていました。今も覚えているのがパンの景品、シールを集めるともらえるやつ2m×2mの象の人形があたったんです。その段ボールに1年くらい住んでいました。切り抜いて家にしてそこが自分の部屋だと言って住んでいました。それが小学校3年生。その中にひたすら人形とかあって。妹と一緒にままごととかもやっていましたしなにかしらペットをひきつれていました。家に帰ると犬の人形があってなんかの設定であそんだり。でもちゃんとミニ四駆もやっていましたよ。
それに可愛いものは好きだったんですけどセーラームーンは好きじゃなかった。

―一番好きだったのは?

グレムリンのギズモです。でも一度旅行に行った時になくなってしまった。多分車降りる時に落としてしまって。それでずっと泣いていたんです。そうしたら一週間後くらいにギズモが帰って来たんです。今思うと親が買って来たんですけど父親が「帰って来たよ」って。でもちょっと大きくなって帰って来たんです。でもそのときまだ小さかったのでギズモ成長したんだって思っていました。今思うと父親の優しさだったんでしょうけど。

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