Interview

Y.M.Walts 馬渕明恵 〜ビジョナリー・ブランド〜 3/3

今私達のような立場の人が作り上げたものを見て、学生さんたちがああなりたいと思ってくれれば一番良いことです。継続して、やりたいことを実現している姿をきちんと見せて行くことが、今の私にできる事だと思っています

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Y.M.Walts 2012 S/S Collection

―メンズブランドでも経験を積まれているのですね?

オーダーメイドを引き受けていた時は、割と閉鎖的な場所で物作りをしていたので、違う刺激を求めて次のステップを考えるようになりました。
自分の中で30才までに独立するということは決めていて、それまでにあと何が自分に必要かと考えた時、仕立ての勉強をしたいと思いメンズに行こうと決めました。もちろんメンズはそれまでやったことが無かったのですが、やり始めるとパターンもカーブがレディースと違っていたりで面白くて。袖の振りも違いますし、いせが入るので本当に機能性を重視します。

—そこではどのような仕事をされていたのですか?

そこではコレクションラインのパターンを担当していました。企画は別にいるんですけど、私は絵を描いて、それを企画の方にみせて。その後決められた素材をもとに立体でパターンを組んでいくという流れで。それからトワルを組んで、プレゼンして直しがあれば修正してという感じで仕事をしていました。今も作り方は変わらないですね。あと何をやりたいか意見を求められた事があったので「レディースやりたいです」と言ったんですけど、それは無理と言われて。(笑)
「じゃあドレープでできるものを」ということで、カットソーを中心にコレクションの企画の仕事もさせてもらいました。CADもそこで実践の中で覚えていきました。経営もしっかりしているブランドで、会社、ブランドとしてこうあるべきだなということは今でも思っています。ものを作るプロセスのことをしっかり考え抜いて、過程にある無駄を省いていく。その時間の余剰を良いもの作りに反映していくという手法は大切だと思います。
その後2年くらい在籍した後、独立しました。

—色々とブランド外での活動もされていますね?

区の起業者向けのセミナーに講師としてお話させて頂いた事もありますし、
ついこの間も文化服装学院で講演のような形で学生の前で話す機会がありました。150人くらいの前で自己紹介から様々話したんですが、人前で話すことで自分が何を考えていたのか明確になったりするのでいい経験になりました。

—そこではどういったことを話されたのですか?

“デザイナーの役割”というテーマで話しました。私自身デザイナーとしての独立を小さい頃から考えていていました。より明確になったのは高校を卒業した時でしたけど。そこでデザイナーになるということを目標にして、その目標を叶えるためにはその過程で何をすればいいか。それを考えて実践していたのが文化での学生時代でした。
この講演では、デザイナーとして独立までには何を探して、何をすればいいかということを考える必要があるので、それを考えるためにもまず自分がどういった世界観を表現したいか、どういった物を作りたいかということをまず頭に思い浮かべてほしいという話をしました。10年後でも20年後の事でもいいので、そうしたビジョンをもってほしいと。少なからず自分のしてきたことを参考にしてもらえればと思い、自分の経歴やブランドのことを話しました。

—今の学生の印象はどうでしたか?

学生の方って不安でいっぱいだと思うんですよね。学校の先生にもアパレル業界は厳しいと言われているみたいで、その対処法も漠然としていて解決策にならない。それで焦りが出ているように感じました。私は学生からすればなりたい人になっている訳で、そこで良くあるデザインの話をしても学生は「自分には才能がないのかな」というようにネガティブに捉えてしまう。そこで私は目標を決めて、ゆっくりとその目標に向かって努力すれば焦ることはないし、デザイナーとしてやっていけるということを中心に話をしました。

—馬渕さん世代の学生と今の学生に違いはありませんでしたか?

そうですね。違いは特にはないと思います。将来についても漠然としている感覚で、それは私も同じでしたし。ただ本当に素直な学生が多かったです。

—学生でも上の学年になると結構現実を直視して素直でいられなくというのが実感としてあるのですが。

学年が上がるとやはり違ってきますね。本当にシビアですよね。就職率も下がっているし、どこに就職するのといった感じですから。私の話も真剣には聞いてくれますけど、現状考えると「じゃあどうすればいの」という感じで、、、、。販売員になることがせめてもの目標だと言っている子もいて。だからとにかくモチベーションを上げることができる内容のことを話そうと思って、色々工夫して講演しました。

―アパレル業界に問題意識を持ってることはありますか?

現状のアパレルへの問題意識は言えば切りがないですけど、そこは言っても仕方ないかなとも思います。そこも踏まえて、やるしかないなと。自分が何もしていないのに悲観的な人が多くて、そういう人ほど文句が多かったりするので、まず行動を起こすことが必要だと思います。
今私達のような立場の人が作り上げたものを見て、学生さんたちがああなりたいと思ってくれれば一番良いことです。継続して、やりたいことを実現している姿をきちんと見せて行くことが、今の私にできる事だと思っています。

―今後のヴィジョンはありますか?

アトリエ兼ショップをやりたいですね。Y.M.Waltsの服だけじゃなくて、鞄職人やアクセサリーデザイナーなど、同じ世界観を共有できるクリエーター仲間と一緒に、人が集まる空間を作りたいです。お店の奥にはアトリエがあって、技術者を引退した人などを招いて技能推奨する場を設けたいです。そこに学生さんなどがプロの人たちに何か聞きたいことがあればいつでも来てもらって、ワークショップの様にその場で教えるみたいな場所。
私自身は、おばあちゃんになっても、お店の一角でY.M.Waltsのブライダルドレスを作っていたいです。(笑)

Interview & Text:Fumiya Yoshinouchi, Tomoka Shimogata

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