Interview

Diane Pernet -A SHADED VIEW ON FASHION- 4/4

デザイナーは自分が言いたいこと、伝えたいことがはっきりするまで何も作らない方がいいのではないかと思います。自分の意思がはっきりしないうちに作品を作ると芯がぶれてきます。自分が何者なのかそれをはっきりと理解してから始めるべきです。

→Diane Pernet -A SHADED VIEW ON FASHION- 1/4
→Diane Pernet -A SHADED VIEW ON FASHION- 2/4
→Diane Pernet -A SHADED VIEW ON FASHION- 3/4

―ファッションが以前よりエキサイティングではなくなったことには何か理由があると思いますか?

世界の景気も悪いし、商売が儲かる儲からないという数字だけで見ているところがあるからなかなか挑戦をしづらい世の中になってきているということが一つに挙げられると思います。
グローバルクリエイティブクライシス(世界的な創造の危機、欠如)と言えるかもしれませんね。
ファッション業界がビジネスマンに浸食され、クリエイティビティがないがしろにされて数字にばかり注目が行くのが問題なのではないでしょうか。

―最近ではMartin MargielaとH&Mのコラボレーションが話題になりましたがこういったファストファッションとデザイナーズブランドのコラボレーションに関してはどういった意見をお持ちでしょうか?

実際に店頭で商品を見ましたが悪くないと感じました。勿論その理由にはアーカイブから代表的なピースを取り出し生産したからというのもあるでしょう。
有名デザイナーのコピーをして類似品を売り出していたのが気になっていたので以前はファストファッション系のブランドのお店に足を踏み入れたことはなかったのですが5,6年前に初めて入った時にファストファッションはもしかしたらファッションの門戸を広げる取組をしているのかもしれないと思いました。例えばそういったコラボレーションによってMartin Margielaだったり、(Sonia) Rykielだったり、Marniだったり、本物を買うことが出来ない人もファッションを楽しめたり、欲しかったものをちょっと違うものではあるけど安く購入が出来楽しむことが出来る。そういう機会が作れるのであれば、デザイナーとブランドがお互いに納得してお金の面でも合意しているのであれば問題はないと思います。
勿論本物を求める人やクオリティを求める人、買うことが出来る人は本物を買えばいいと思いますが、そうでない方は自分が楽しむ目的で安いものを買えばいいと思います。
中でも良かったと思う例はUniqloとUNDERCOVERがやっていたコラボレーションです。自分に子供がいたら着せたかったなと思うくらいかわいい洋服が並びよいコラボレーションだったと思います。
そういう意味でもそういったコラボレーションには意味があるのかなと思います。

―あなたのブログは世界中のファッション業界関係者たちから支持されています。ここまで幅広く支持されるようになった理由はどんなところにあると思いますか?

私のブログは私が住んでいるパリからの発信だけではなく世界中に多数のコントリビューターがいますので他の国からの情報も手に入れることが出来ます。それにクリエイティビティに特化した情報をアップしていますのでそういった記事がたくさんの方々の興味を惹く理由なのかなと思います。

―毎日数記事が更新されていますがこれまでにブログをやめようと思ったことはありますか?

それはありません。
今の一番の興味やフォーカスの対象はフィルムですが、でも私はみなさんに情報を与え続けることが好きですし、その時に自分が与えているだけではなくてそこから返ってくるものも大きいのです。
ブログは毎日の小さな怪物(Daily Little Monster)ですのでやり続けることはとても大変ですがこれからも頑張って更新していきたいと思います。


Headpieces for Peace by Jessica Mitrani

―今後どのようにフィルムフェスティバルASVOFFを発展させていきたいと思っていますか?

近い将来まずやりたいと思っているのがマスタークラスといって人々が学べる場を作ることです。そこでは講師を呼んで講習会をやりたいと思っています。その延長線上にあるのがこれはまだ資金がないのですぐには出来ませんがディレクターとファッションブランドを繋げるエージェント、その間に入る役割みたいなことも出来たらと思っています。ファッション業界とフィルムディレクターだったり、ミュージシャンだったり、フィルムにかかわっている人たちがファッション業界の人とつながる場所、プラットフォームを作っていけたら良いなと思っています。少しずつですがそういったことを体系化していけたら良いなと思います。

―ASVOFFで上映されるようなファッションフィルムを撮るにはファッションに精通していなければならないのですか?普通のフィルムとファッションフィルムはどのように違うのでしょうか?

ファッションに精通しているかどうかは全く関係ありません。
世界観を作るのが監督であり、洋服のことはファッションを理解しているスタイリストがいれば良いのです。
ファッションフィルムと普通の映画にはそれほど違いはありません。ただ、いくらフィルム自体が凄く素敵なものだとしても、洋服が最悪であればそれはやっぱりファッションフィルムフェスティバルにはいれられないものもあります。ですので勿論ファッションフィルムフェスティバルにおいては洋服、ファッションというものが主人公にならないといけませんがかといって作る人がそこに精通している必要はありません。


The Most Part of You by Jaime Rubiano and Jason Last for Garage Magazine

―上映される作品はどのように選んでいるのでしょうか?

公募で送られてきた中から選んでいるものや私自身のコネクションで頼んだりして作ってもらった作品もあります。
公募に関しては色んな作品があり勿論あまりよくないものもあります。逆に全く期待しないで凄く良いフィルムが送られてくることもあります。だから公募は凄く大切だし今後も続けたいと思っています。

―最後にデザイナーになりたい人に何かアドバイスをいただけますか?

私はデザイナーは自分が言いたいこと、伝えたいことがはっきりするまで何も作らない方がいいのではないかと思います。というのも自分の意思がはっきりしないうちに作品を作ると芯がぶれてきます。シーズンを経過することによりどんどん薄れていってしまうと思いますので自分が何者なのかそれをはっきりと理解してから始めるべきです。
国際的に、世界に向けてアピールしたいのであれば皆にアピールすることが出来るまで待てばいいですし、それが今だと思えば今発表すればいいでしょう。続けて成功していくためにはクリエイティビティとプロダクティビティ、オリジナリティの3つの要素が必要です。3つのうちの何かが突出しているだけでも駄目ですし、そのバランスをうまく保っていけるかが大事なのです。それがうまくいけばデザイナーとして成功することが出来る可能性は増すと思います。

ASVOFF HP:http://www.ashadedviewonfashionfilm.com/
Diane Pernet Blog:http://www.ashadedviewonfashion.com/
Diane Pernet’s ASVOFF’s Videos:http://vimeo.com/asvof/videos

Interview & Text:Masaki Takida, Tomoka Shimogata

Comments are closed.