「テキスタイルから発想する」ファッション・ブランドHaaTは、日本でつくるテキスタイルに焦点をあてた企画展を開催する。
HaaTは、スタート時(2000年)から、「日本でつくるテキスタイル」にこだわり、産地の作り手とともに開発し、新しく、楽しく、現代の服に活かしてきた。
そのテキスタイルは、日本の素材にブランド独自の視点を加え、さらに着心地の良さや軽さを出すための創意工夫を重ねることから生み出されてきた。同企画展では、15年にわたるアーカイブの中から、厳選した服や小物を選び、その技法とともに紹介する。また、ファッション・テキスタイルのミクロの世界に誘う、雫や水滴のイメージが加えられた展示など、ファッションや素材に興味のある方々はもちろん、今学んでいる方にも、新しい発見を楽しめる空間が広がる。
会期: 2014年8月31日(日) – 9月8日(月)11:00 – 18:00
※6(土)は18時半よりトークイベント開催、22時まで開場
会場: LA COLLEZIONE 南青山3F 東京都港区南青山6-1-3
主催: ISSEY MIYAKE INC.
企画・構成: HaaT、トータルディレクター皆川魔鬼子
空間デザイナー: h220430 板坂諭
テキスト編集: 清水早苗 協賛: マックスレイ株式会社
HaaTはテキスタイルデザイナーの皆川魔鬼子とHaaT企画チームで、2000年に立ち上げた「テキスタイルから発想する」ファッション・ブランドです。
誕生:1983年に初めて訪れたインドで、クラフトマンの熟練した技や、精緻な手仕事、政府の保護政策に皆川は感嘆しました。当時の日本と言えば高度成長期のまっただ中、大量生産の工業化が進み、日本中の産地も忙しく、あらゆる素材づくりに不自由はありませんでした。合繊も多く手がけ、量産でのものづくりの楽しさがありましたが、ナチュラルな素材の魅力を忘れたくはありませんでした。
日本では手の技による素材作りが難しくなってきていた2000年当時、機械織りでも技法と加工の工夫次第で、手の温もりが感じられるテキスタイルが出来るのでは、と皆川は考えていました。どうすれば手の感触を残せるか。生産工場との試作の繰り返し、原料探し、希少な伝統の技を持つ職人との取り組みを通して、天然素材中心のテキスタイルを使用した服が作りたい、という想いからHaaTをスタートさせました。
3つのハート:ブランド名、HaaTには3つの意味が込められています。
メイド・イン・ジャパンのHeaRT (心)、インドのクラフトマンシップを現代に伝えるHaaTH (ヒンディー語の手)、この2つを合わせもつのが、HaaT (ビレッジ・マーケット)。日本で開発する上質なテキスタイルを中心に、インド製のものづくりも継続して行っています。
自然との対話から生まれる素材:
HaaTは、ビレッジ・マーケットを意味するその名の通り、未来と伝統、東洋と西洋の交差点です。
その繊細で優しい眼差しは、国境を越え、世界各地の気候や風土、自然、そして、特に手仕事の文化に目が向けられます。
北の澄んだ風が、空に舞う雪のイメージが、軽やかに衣服に表現されます。小花の蕾や花びらの溢れる色彩、そして、巣のために鳥たちが集めた小枝さえも、インスピレーションの源となります。陰影豊かに描かれる、奥深い森に生い茂る木々や、幻想的な水辺の草花、立ち上がる泡。他方、遊牧民がまとう大胆なストライプ、メソアメリカの村々に見られるドットやボーダーなどが、日本の技術と混ざり合い、生き生きとしたテキスタイルによみがえります。
トータルディレクター皆川魔鬼子:
1971年より三宅デザイン事務所にてISSEY MIYAKEの素材作りに携わり、衣服におけるテキスタイル・デザインの道筋を築いてきました。2000年、HaaTを設立し、「何よりも素材を大切にし、素材の質にこだわる」という、ファッション・ブランドのなかにおいては、希有なコンセプトを打ち出しました。素材作りから始め、デザインは、できあがった素材が最大限に生かされるように、シンプルに留められています。HaaTの温もりの感じられる表情豊かなテキスタイルは、多くの人々を魅了してきたと同時に、ファッション・テキスタイルにも、多大な影響を与えてきました。
「紡績、染め、織り、編みなどの技術者と私達の創意工夫のキャッチボールで素材作りをしてきました。日本での素材作りが難しくなっている中、今一度見直してみたい。また、一緒に取り組んできた技法から生まれたテキスタイルを、感謝の気持ちを込めて、ご紹介したいと思います。」
展示内容
HeaRT(メイド・イン・ジャパン)の中から、厳選した服や小物を選び、技法の紹介とともに展示します。日本の最先端技術を駆使しつつも、温もりのあるテキスタイル。2000年秋冬から最新の2014年秋冬まで、毎シーズン開発してきた、今まで見たことのない新しいテキスタイルの魅力、合わせて小物類(インド製他も含む)もご紹介します。
左)2000年秋冬のファーストコレクションより、有松絞りのジレ
右)2014年秋冬コレクションより、京都西陣の階段絣柄をジャカード織りで表現したテキスタイル
技法の数々
1. ミシンステッチ技法で防染した絞り染め
2. 増やし目、減らし目で形状を作る編技法
3. 形状変化を楽しむ羊毛の縮絨
4. 手仕事のように繊細な機械刺繍
5. 原点である縞と格子の織物
6. 経糸と緯糸が複雑に織りなす色柄交織の表現
7. 一本の糸を結んで多色にできるアレンジワインダーの織物
8. 深黒染め、泥染め