Interview

村田 明子 / MA déshabillé 4/7

これを着ていたから救われたみたいな機能ってファッションにはある。そういう意味で例えば誰かが外国に行って不安になった時にMAを着ているから守られたって感じてもらえるようなことまでたどり着けたら


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―その後何年かは自分探しをしていたんですか

モロッコに行ったり、ミャンマーに行ったり、チュイルリー公園を散歩したり、そんな無目的極まりない日々が続いていました。
ヴィンテージを掘る事は続けていました。オークションに出したり、転売したりしていました。いわゆるヴィンテージディーラーみたいなことをしていました。

―友人のデザイナーPeter Pilotto達を手伝っていたこともあると聞きましたが

彼らは、私がアカデミーに入学する前からのお友達で、在学中から、いわゆるミューズという名目で、私の着ているものが彼らのクリエーションに反映する節が多々ありました。
彼らは真面目だし、ちゃんと彼らのやり方がモードの世界で報われて良かったと思います。
スタイリングは頼まれた時はやったりしていました。最初は今の相棒であるクリストファーがいなくて、Peterだけだったので、まあまあ頼られましたね。「Bernhardっぽい新人が出た」みたいな感じで取りざたされて、彼はある意味でBernhardを尊敬しつつも軽蔑していたので、とても迷っていたし、私も、自分自身がPeterのクリエーションの中にあまりに投影されていた事に素直に喜べない
時もありました。
彼らがロンドンに移ってからはほとんど関与していません。ロンドンの中でスタイリングをするということはヘアもつれてこないといけないし、メイクもつれてこないといけないとなる。彼らがロンドンという土地にコミットしていく為のコネクションが必要だったのです。私はロンドンには全く関わっていなかったので、DAZEDのカレンがやるようになりました。

―スタイリング以外にもリサーチ的な部分もしていたのですか

そちらの方が比重が高いし、得意なのだと思います。
私の洋服の30着位が彼らのスタジオにかかっていたと思います。
フィニシングや、素材感、色味、、色々な意味ですごく研究してくれていると思います。
次のシーズンにどんなものが来るのかを教えたりしていました。「次なにが来ると思う?」と聞かれて、次はMuglerとか次はVeroniqueだよとか。それで「明子持ってる?」ってなって、そのシーズンが始まる前に5,6着、参考になる物を貸してあげる。
ヴィンテージにはサイクルがあるのです。オークションの値段のつき方で大体、次のサイクルにくる年代だったり、デザイナーだったりがわかる。だからその中でだったり、自分の気になっている物とかを教えてあげる。前に日本に来たときは「多分Veroniqueだよ」っていう話しをした。それで前回の秋冬でテーラードをやったのです。同じ2012-13A/Wでセリーヌから全く同じシルエットが何点か出ました。元ネタが全く同じだったのだと思います。(笑)
だけど今はもうほとんどトレンドというものが無くなっている気がします。オークションの流れの中でも、時代でカテゴライズするよりも、毛皮だとか、工芸的な方に流れているように感じます。だから良い感じの刺繍があったりしたら教えてあげたりはしますが、彼らの基盤もかたまりましたし、彼ら自身もスタイルをそんなにかえないので、今は、彼らの新しいコレクションから好きな服をもらえるし、工場を紹介してもらえたり、逆にしてもらってる事の方が多い気がします。(笑)

―ブログにはPeter Pilottoのコレクションの写真と共に「ニュークラフト新しい時代が到来した」と書かれてありました。ニュークラフトとはどういうことでしょうか

テクノロジーと工芸です。例えば、彼らの得意なプリントでも、デジタルとスクリーンプリントを使い分けつつミックスしている。
デジタルプリントはあるイメージがそのまま印刷されてくるよさがあるし、シルクスクリーンは欲しかった色の一つ一つが忠実に表現される。
彼らのコレクションとは別件として、主観と主観が結びつく事が一番大事だと思っていて、ネットを使って風土を踏まえた工芸的なものが繋がっていく事にとても興味があります。

―美意識はどうやれば形成されるものだと思いますか

比較対象を高く持つ事ではないでしょうか?
例えば、いいワインを飲んだら、大事にされてない安物のワインって飲めなくなりますよね。違和感を感じるようになると思うのです。
香水とかもそうですよね。
一日早くよいものをみたら、それだけ早くよいものが出来る。。と思って貪欲に資料をかき集め、味わうことをお勧めします。

―なぜブランドMA deshabilleを始めようと思ったのですか

イタリア人の友人のドミニクという人がSanta Maria Noverra(サンタマリアノヴェッラ)のアントワープ店をやっているのですが、その人が「サイドビジネスで部屋着を売りたい。一緒にやらないか?」って言ってきたのが始まりです。だから最初は2人でやろうとしていました。彼のお店の2階を家庭用品売り場にしてバスタオルやショールとかをやろうという話をしていました。それで話が進んで、段々形になっていったのですが彼と私ではお金を投資できるタイミングが凄くばらばらだったのです。それで結局、私はMA deshabilleを、ドミニクはMASULLO と云うブランドを立ち上げることとなりました。
ライバル(笑)ですが、、裏原の方達のようなコラボレーションを出来たらいいと思っています。同じパターンを使って違う素材を使ったりそんなことが出来たら。

―例えばどんな人とコラボレーションしたいのでしょうか

ドミニクとかPeter Pilottoとか、Daniel(Andresen)とニットやったり。。
外国人は取り分云々とか日本人的な感覚がない。そこでシビアになる。
でもそれを乗り越えてもうちょっと友達だから出来るみたいなノリでやってみたい。
Peter達は勝手に『アキコ ブラウス』とか作ってるみたいなので、それをそのまま売らせてもらえたりしたらいいですね。あとはリュックタイマンスにモデルになってもらったり(笑)。ボックスをプロダクトデザイナーのお友達に作ってもらうとか。

でも一番今MAでやりたいのはMAのシンボルマークの刺繍を電気の通る糸で作って、MAを着ている人同士がすれ違ったら光るみたいなそういうこと。日本の技術があれば出来るのかなって。半分は自分の好きな人達にあげて半分は売る。
もっと広い範囲で考えたら、、エジプトにいる謎のエジプト人がMAを着ていてエジプトにいったときにその辺のエジプト人とすれ違ったら光ったみたいなそんなことがあったら面白い。
これを着ていたから救われたみたいな機能ってファッションにはありますよね。
そういう意味で例えば誰かが外国に行って不安になった時にMAを着ているから守られたって感じてもらえるようなことまでたどり着けたら嬉しいです

―ヲタク文化も好きなんですか

大好きですね。ディアステージとか。音楽が良いとは思わないけどインタラクティブな感じやアイドルがいてお客さんが居てっていう空間。歌舞伎でもお客さんが歌舞伎の事を凄く勉強している。掛け声のかけ方も含めて勉強していて、役者とお客さんと一緒にその場を作って行く、そういう面白い文化が日本にはあると思うのですが、そういう継承をディアステで凄く感じます。だからでんぱ組.incを見ていると自然に涙が出てくるんです。それから彼女達を盛り上げている、ミキオさん含む、『最前00』は凄くいいなと思っています。

―秋葉系のファッションも好きなんですか

私は好きです。汚いとか臭いとかは嫌ですが、あそこには、型式美みたいなものがあるような気がして、日本の芸能って、”型”がありますよね。そういう文化を潜在的に引きずっていると思います。
自分の知らないことを知っている人は凄く尊敬するし私にとってはファッショナブルに写ります。

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