Interview

spoken words project 飛田正浩 〜ファッションの純度を高めるという事〜 5/6

新しい人と新しい事を新しいルートを作って新しいストーリーで売らなきゃいけないんです。でも最初はみんな勢いよく言うのだけど、食っていけないから辞めていっちゃう。作品を金に変えるってのをもっとシビアに考えなきゃ駄目なんですよね

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—話が村上さんの話になったので加えてオタクカルチャーについても質問したいのですが。今ファッションにもオタクの文化を取り入れようという動きがありますね。

正直パンク出身ということもあり、オタク文化の核心は理解はできないんですけど、流行としてファッションに取り込んでいるのなら、無くなるんだと思います。本当にオタクやってる人が服作ったら面白いけど。真剣にやってる連中のすごさはあると思います。
最近ツイッターでエロい事書いていたら、エロい絵を書いている人にフォローされて。その人の絵見たらエロの集大成みたいの書いていて、その完成度の高さにびっくりしましたね。美術って欲望云々だから、村上さんとかがオタク画を絵画として取り上げているのは理解できます。
でも、そこに地雷があることに人々は気がつかないとマズい。ウェットの巣窟だから。外に出て行きたくないんだと。オタクじゃない人がやればパクリはバレるし。

ファッションもウェットな所をどうやって出していくか。アニメじゃなくても、作家自身の心境とかルーツとか壁とかネガティブな部分も含めて出していい時代がきていると思います。でも僕にはかっこ良くなければいけない。本当に面白い時代にきてると思います。正直何を出しても良いから。

—内向きな性向によって文化が発展してきたのが日本ですね。ガラパゴス化というのは否定的な意味で使われがちですが、一方でガラパゴス化と言われる形で特異な文化が発展したというメリットもアニメやゲーム等あります。若い世代はここの判断が難しいのだと思います。“引きこもった方がいい物を作れる”という信念が世界に目を向けるという事と両立できない。

僕は世代が今の20、30代より上だから若い人と違い、感覚的にパリに憧れます。総本山に対する憧れはやはりある。ペースは焦らないで進めるけど、いずれかは現場で勝負したいし、トータルで評価してくれるところにはいきたい。アジアの市場にシフトしているところも増えていますが、体力維持とかでそれも必要だと思います。物を作る。とそれをつづける。ましてやビジネスとして。それは全く違うことです。両方できる人は少ない。でもまずは物ありき。すげー物だったら人は見てくれる。見てもらってからの次が大切なんです。つづけるとはどういう事なのか?と。
作品である服として、どきどきしている服を作り続けたいためのパリであるし、でもアトリエを大きくしたいのは忘れたく無い。全体的にゆっくりとやってゆく。おっさんになると体力がなくなり、思いはあっても体がついてこない。でも、焦らない。思想もばかばかしい事をやらなくなるから、今後もばかばかしい事をやり続けたいとは思っています。パリがそれです。

日本がいま良く無い状況で、閉鎖的でネガティブな所ばかり注目をうけて、オタクだったりも海外で認められ、それなら日本の次はなんだという問いの答えはまだない。
村上さんは、教育においてもメスをいれていて、世界を揺すっている。アパレル教育でもそういうことができればいいし、そろそろ起こるんじゃないかと思っています。教育の今を見つめ、多様化を知る服装作品として愛でる所があっていいのかなって。

洋服造も僕はアーティストの人と同じ感覚でやっています。でもそれを言うと現代美術の人は、「流通確立してるから楽じゃん」と言うのだけれど、新しい価値観をわかってもらうって事となると既存のルートはなかなか使えなくなってしまう。新しい人と新しい事を新しいルートを作って新しいストーリーで売らなきゃいけないんです。でも最初はみんな勢いよく言うのだけど、食っていけないから辞めていっちゃう。作品を金に変えるってのをもっとシビアに考えなきゃ駄目なんですよね。

—僕自身は今ファッションの世界でコミットする場所がないのではないかと思います。雑誌もなかなか変わらないから若手の入る隙はないですよね。

確かにそうですね。でも価値観をともにできる若い世代と話していると、日本でコミットできる先を作ろうとする動きが出てきています。ヤマグチソウタくん。ソウちゃんと話していると彼が若者のキーパーソンの一人だなって思う。メディアやいろいろな人を巻き込む人を嫌う人はいる。変化を嫌う人。でも彼や彼のやる事をNGって言う人は責任がある。じゃ何があるの?って。

とにかく一過性で終わってほしくないですね。集まっている人も若いし力も持っているし、振り幅も広い人達だし、自分で発表するメディアもある。自分なりに楽しいと思える事を積極的に発信していってもいいと思います。

変な話ですが、夜に【酒 エロビデオ ファッション雑誌】今夜どれを楽しむか?で悩むぐらい好きな仕事を探せと予備校の先生をしている時に生徒に言っていました。本当に好きなもの。そういったものを探さなきゃいけない。今もそれは変わりませんが。でも酒かエロビデオで勝負してもいいんだぜ、と今は言う。見せても良い世界なんだよって、発表していいんだぜって若い人がもっと知っていいのかなと思います。時間を忘れて没頭できる事、恋愛でも漫画でもそれを突き詰めて出てくるものを発表してほしい。
ポール・マッカーシー (Paul McCarthy)の代表作じゃない作品で自慰行為をしているものがあります。それも自分で殴りながら恥部をたたせている。何か感動した。すげー。かっけーっ、て。その世界に没頭しているからすごいと思えるんですよ。
アニメとかも云々でそれを突き詰めていいじゃないかなと思います。原宿でもパリコレでも女の子でもファッションにコミットできるものとか、そもそもぶつけるものを探すもいい。

—それが飛田さんにとって詩だったりするのですか?

うーん。詩であったりポエジーを服を見て感じてほしいけれど、僕もまだまだ掘り下げ中で、ビジネスとの距離感も探ってる。でも私的な何かを感じてくれればいいかなとは思っています。

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