Fashion Show

Timothy Everest

イギリスの高級紳士服ブランドとして知られるTimothy Everest。サヴィル・ロウの伝統的な職人技術を受け継ぎながら、現代的な感覚のスタイルを提案する事を得意とし、顧客には多くのセレブリティが名を連ねる事で知られる。

テーマは「EVERY DAY LUXURY」。高いテーラリング技術はそのままに、今回はよりモダンでカジュアルダウンしたデザインを重視する事で、より日常生活に馴染むコレクションに仕上げた。

イーストロンドンにある閑静な通り沿い3会場で行われた今回のプレゼンテーション、まず向かったのが、Timothy Everest氏が実際に使っているアトリエだ。画家、Mark Gertler(1891-1939、イギリスの国立美術館テイトブリテンにも作品を置く肖像画家)の家を買い取り、アトリエとして使っているという。ジョージアン調の歴史を感じる重厚な空間、机の上の小物一つ一つまで本日の為に置かれたディスプレイでは無く、全て普段使っているものとの事。部屋ではモデルがパフォーマンス、仕立て前の採寸の様子が再現された。最上階ではブランドの中枢とも言える工房が公開され、職人達の手作業を間近で見る事ができた。グレーのジャケット、ポケット部分のベルト(新聞を入れる為)のみで15時間かけて制作されるのだそう。丁寧にひと針ずつ作業を進める様子は、ここで作られる服のラグジュアリー感を十分に感じる光景だ。

次に向かったのが、中庭に面した部屋。ラックにはss13の新作コレクションが並ぶ。ベーシックな色合いの中に映えるのは、今季のポイントであるブルーとグリーンのカラーリング。ブルーのシャツはもちろん、ジャケットの襟の裏地やポケットの中にはグリーンの生地が使われるなど、ssらしい爽やかさが印象的だ。その中でも、キーピースは鮮やかなブルーのスプリングコート。会場内で見るモデル達は、全てブルーのコートでスタイリングが組まれていた。

少し離れた場所に位置する一角、アーチをくぐると壁一面に緑が置かれた開放的な空間が広がる。まず目に入るのが、FUTURE LABORATORIESと題されたコーナー。暗いトンネルを進むと大きなスクリーンが現れ、そこに映し出されるのは、モデルが演じるある男性の「日常」と職人による手作業の光景だ。FUTURE LABORATORIES横の階段を上ると、カメラや椅子が並ぶ広い空間に、部屋を模したスペースが作られていた。外出前の準備の様子、ラックから服を手に取り鏡で合わせる、モデルにより再現された日常生活を目の前で見る事ができた。

ブランドによる手の込んだ演出、ラグジュアリーなだけでなく、テーラードが日常生活に馴染むものである事が伝わるコレクションだ。

Photo:Erika Shiotsu Text:Yukari Inatomi


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