Fashion Show

Aitor Throup

アルゼンチン、ブエノスアイレス出身のAitor Throupは、2006年に見せたロイヤルカレッジオブアートの卒業コレクション、『When Football Hooligans Became Hindu Gods』で瞬く間に注目を浴びることとなった。イラストレーションは独特のタッチを見せ、Stone IslandやCP Companyでもプロジェクトの携わり、また人気バンドKasabianのアートディレクションも手がけるなど活動は多岐に渡り、2010年ワールドカップのイングランド代表のユニフォームを手がけたのも彼である。

待望のシグネチャープロダクトラインの発表を来年に控え、London Collections: MEN期間中に開催された今回のイベント。Sarah MowerとTim Blanksがホストを務め、プレヴューが公開されると共に、Aitor本人によるデザインマニフェストのアナウンスメントが行われた。

2010年にパンツのみで構成されたインスタレーション『LEGS 』を行って以来、自らの名を冠したコレクションの発表をしてこなかったAitor。しかし彼は決して歩みを止めていたのではなく、ファッションのシーズン性やますます速まっている消費サイクルへ挑戦する、彼独自のクリエイティヴなアプローチで密かに活動を続けていた。ファッションのサイクル性に異を唱えるデザイナーは少なくないが、今回彼は誰よりもはっきりと論理的に、雄弁な宣言を行った。

ファッション業界の既存のシステムから距離をおきながらも、しっかりとメンズファッションを見つめるAitor Throup。彼のプロダクトラインの全貌は、来年1月に発表される予定。

‘NEW OBJECT RESEARCH’

NEW:
新しく、革新的なオブジェクトの創造。
OBJECT:
ファッションデザインではなくプロダクトデザイン。ルックやコレクションではなく、問題解決プロセスを通して一つのオブジェクトにフォーカスする。
RESEARCH:
プロダクトではなくプロセスをデザイン。コンセプチュアルなフレームワークが特定のプロセスを生み出し、デザイナーはそのプロセスを厳守することでプロダクトを「キュレート」する。

‘NEW OBJECT RESEARCH’とは、全てのデザインやデザインの構成要素には理由(機能性やコンセプトなど)があるべきという正当なデザイン哲学のもと、アート(問題の創出)とプロダクトデザイン(問題の解決)を融合した、革新的なプロダクトを創出するプロセスの探求である。

‘NEW OBJECT RESEARCH’における新しいコンセプトやプロダクトは、適切に遂行された時、問題が完全に解決されたときにのみに発表されるもので、6ヶ月というファッション業界の既存のサイクルに当てはめる事は不可能である。クリエイティビィティとは予期できない流動的なもので、時間に縛られるものではない。

そうすることで、時間やトレンドを超越した「デザインの原型」が生み出され、更にそのプロセスを繰り返すことで「コンセプトのアーカイヴ」を有する事ができる。そして、それぞれの「デザインの原型」を再解釈していくことで、シーズンのプロダクトレンジを創りだす事ができる。

来年発表される22のデザインモデルの第1弾となるヒューマンスカル型のミリタリーバッグ、「Shiva Skull Bag」のように、約6年の歳月を費やして開発された、縫い合わされる各パーツのシェイプを決定する独自のコンストラクションパターンにより、シームよりもブロッキングされたパネルによりフォーカスし、アーキテクチュアルなオブジェクトを実現する。

現段階では以下の5つのコンセプトがアーカイブとして存在している。
・Mongolia
・Tailoring Concept: Negative Space Anatomy
・When Football Hooligans Became Hindu Gods
・The Funeral Of New Orleans (Part One)
・On The Effects Of Ethnical Stereotyping (A.K.A. 22 July 2005)

Photo & Text:Yasuyuki Asano


Comments are closed.