今日は本の紹介を少々。瀧口範子さん訳の新刊『ザハ・ハディッドは語る』が出ていたのでSPBSにて購入。
ザハ・ハディッドは語る [単行本]
ハンス・ウルリッヒ・オブリスト (著), ザハ・ハディッド (著), 瀧口 範子 (翻訳) 瀧口さんの建築家関係の本はいつも独特の視点を持っており面白い。 きっと彼女が建築の専門家ではないというところが、他の建築雑誌や書籍と違う切り口になっているんだと思う。 今回はハンス・ウルリッヒ・オブリストがインタビューをしたもので、いま最も世界で注目されているキュレーター、インタビュアーの一人である彼の著作が瀧口さんの翻訳で読めるということで期待して購入した。 全7章からなる本書は、オブリストとザハの信頼関係からか、非常にリラックスした雰囲気で進められている。途中、オランダの建築家であるレム・コールハースも加わり非常に興味深いやり取りがなされる。訳者あとがきでも語られていたように、ザハ自信の「アラブ性」について語られているところなど、たわいもないお喋りのように軽やかな口調で話されているようにみえる。しかし、ザハがイラク出身の女性建築家であるということはよく語られるが、その幼少期の出来事など自らの過去について言及することはあまりないことだそう。さまざまな彼女が手がけた建築についても質問、説明がなされ、今日の建築家のトップランナーの思考、思想やその手法を確認するためには非常に興味深い1冊だと思う。ただ期待するほど密度の濃い内容ではないので、そこを良しとするかどうかは読者によって違うだろう。建築のビギナーにとっては最良の1冊でもあると思う。 僕が興味深かったのは、ソファーなどプロダクツデザインを作ることで建築という大きな”スケール”のものとの差異において、”スケール”というものを観察している、という点。そして、「現代生活を特徴づけている新しい社会的複合性」についての言及において、都市に住む住民が現在においては均一ではないということ、つまり職業も違えば民族的経験や文化も違う、都市には異なった種類のアジェンダが溢れているということ。もはや秘密のフォーミュラ(形式、方式)もグローバルな解決方法もないということ。そのあたりは、これからのファッションについて考える上でも何かヒントになるのではないか。 ところで、インタビューはNUMERO(仏)に掲載されたものもあるし、LACOSTEともコラボレーションで靴を発表したり、また2008年のCHANELのプロジェクト「CHANEL MOBILE ART」においてもザハはCHANELのために移動式の美術館を建築したことでも有名。決してファッションと無縁ではありません。 ついでなので、お勧めの瀧口さんの他の著作もご紹介します。
行動主義―レム・コールハースドキュメント [単行本]
瀧口 範子 (著) 僕が初めて読んだ瀧口さんの本です。他のコールハースの関連の書籍はよく読んでいたのですが、この”コールハース追っかけ本”は大変読み応えがあります。キネティック・エリート(移動し続ける知識人)の一人であるコールハースという人物が、どのように思考し建築ししているのかがよく分かる一冊。ブレア前首相のブレーンでもあったマーク・レナードや構造家セシル・バルモンド、他、多数の知的トップランナーへの貴重なインタビューも満載。はっきりいっておすすめ。僕がベルソー2年生の頃に出た本で、学生時代何度も読み直した本でもあります。
にほんの建築家 伊東豊雄・観察記 [単行本]
瀧口 範子 (著) 上に上げた『行動主義』のような、日本を代表する建築家である伊東豊雄さんの追っかけ本、とでも言ったらよいでしょうか。伊東さんの人柄まで伝わってくる伊東建築好きにとっては必読の書。駆け出しの頃の逸話や、近現代建築を越えていこうとする伊東さんの日々の死闘の記録。現在建築中のた台中オペラハウスについても少し書かれています。 ということで、今回は建築の素人でも大変読みやすい瀧口さんの著作のご紹介でした。