Blog

TAKUYA KIKUTA

菊田琢也 / TAKUYA KIKUTA

1979年山形生まれ。縫製業を営む両親のもと、布に囲まれた環境のなかで育つ。
2003年筑波大学卒。在学時にファッション研究を志す。
その後、文化女子大学大学院博士後期課程を修了(被服環境学博士)。
現在、文化学園大学・女子美術大学他非常勤講師。専門は文化社会学(ファッション研究)。
近著に「装飾の排除から、過剰な装飾へ 「かわいい」から読み解くコムデギャルソン」(西谷真理子編『相対性コム デ ギャルソン論』フィルムアート社2012)、「やくしまるえつこの輪郭 素描される少女像」(『ユリイカ』第43巻第13号、青土社2011)など。

E-mail: tak.kikutaあっとgmail.com

Hello Goodbye

はじめまして皆さま。
この度、こちらでブログを書かせて頂けることになりました。
これから少しずつ、ファッションについて考えたことなどなどを書いていきたいと思っております。
まだまだ未熟ではございますが、たまにお付き合い頂けると幸いです。
どうぞよろしくお願いします。
  
「君はサヨナラと言い、僕はハローと言う」
ビートルズに「ハローグッバイ」という曲があります。
僕はけっこう早起きで、たいてい4時過ぎに起きては朝の数時間を仕事に当てるような生活をしているのですが、そうすると日曜の朝にテレビのある番組から陽気なこのメロディが流れてくる。 なかなか心地よい日曜の朝の始まりです。
今週にハローと言い、先週にサヨナラする。僕の一週間はこうして始まります。
  
この曲は1967年に発表されたもので、ビートルズの『マジカルミステリーツアー』に収録されています。
ただ、この曲彼らが当時次々と発表していった楽曲群のなかではあまり評判のよろしい方ではない。 なぜかというと、当時の実験的な楽曲と比べると歌詞も構成もあまりに単調だったからです。 さらに、シングルとして出す際にポール・マッカートニーが作ったこの曲がA面に起用され、ジョン・レノン作曲の「アイアムザウォーラス」がB面に回されたことでどうもジョンが気乗りしない発言をしていたりもする。
「まったくたいした曲じゃないよ。マシなのは最後のおふざけで演ったアドリブのところだけさ」。
  
その姿は、PVのなかで見てとれます。演出なのかどうかは定かではないですが、ポール以外の3人はどうもやる気がない(ように見える)。まぁ、「相反する2つの要素を組み合わせる」というこの曲のテーマとはぴったりなわけですが。
さて、このPVは4ヴァージョン残されています(最初にポール監督で撮影された3つと、後に編集された1つ)。そのなかで、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケットで見られる衣装を身に纏った4人と、デビュー当時の62年頃のモッズ風の襟無しスーツを身に纏って手を振る4人が登場するヴァージョンがあります。
簡単に言うと、その頃の彼らはデビューの際に与えられた「アイドル像」から逃れるために、「サージェント」という架空のバンドを今度は自己プロデュースすることで作り上げるんですね。つまり、このPVではそうした2つのビートルズ像を衣装を着替えるということで表現しているわけです。
まぁ、当たり前のことと言えば当たり前のことなんですが、僕はそうした行為が妙に気になってしまうわけです。
  
彼らは『サージェント』の撮影の際に、舞台衣装専門のバーマンズという店へ行ってこのカラフルな衣装を制作した。その時に提案されたのが、これまでのような4人揃いのスタイルをするのではなく、それぞれのカラーを決めるということ。ポールは水色、ジョンは黄緑、ジョージはオレンジ、リンゴはピンク。何だか戦隊ものみたいですが。1967年以降にそれぞれの個性が楽曲のなかで発揮されていく様子が、彼らの服装に見事に表れています。
この頃のビートルズの私服が一番面白い。それぞれ思い思いの服装や髪型をしている(PVのラストでもその様子は見ることができます)。まぁ、結局その3年後にビートルズは解散してしまうわけなのですが、彼らが解散に向かっていく経緯について、ビートルズに関する本を読んだり、楽曲を聞き比べたりすることよりも、彼らの服装の変化を見たときに僕は妙に納得してしまったんですね。
  
僕はそんなことをふだん大学で研究し、たまに学生の前で話したりしています。ファッションを追っていくと、時代の変化を読み取ることができるし、個人の思想の変化なども追えるのではないかということです。
自己紹介を兼ねて、ご挨拶に何を書こうかと考えていた時に、今週もテレビからビートルズの「ハローグッバイ」が流れてきました。陽気な気分になった僕はそのままの勢いで書いてしまったというわけです。回りくどいご挨拶で申し訳ございません。
  
ビートルズの服装の変化を追っていくと1960年代イギリスのファッションの変化が面白く見てとれるのですが、その辺についてはまた今度書ければと思います。ちなみに、ビートルズは1967年にロンドンのベイカー・ストリートで「アップル・ブティック」という洋服屋をやっていたりします。わずか1年足らずで閉店してしまうのですが、彼らもきっと服好きだったんですよね。
では、また次回。
「どうして君はサヨナラと言うんだい?僕はハローと言うよ。ハロー、ハロー。」
  
The Beatles: Hello Goodbye

Comments are closed.