SOMARTA2011年A/Wのテーマはドイツ語のWunderkammer(ヴンダーカンマー)です。
「好奇心の部屋」や「驚異の部屋」という意味があります。
世界にまだ神秘と謎が多かった時代、見たこともない「物」の個性溢れる美しさに目が向けられ、自然物から人工物まで様々な珍しいものを分野を隔てず集めた博物陳列室がありました。15世紀イタリアから始まり、18世紀迄ヨーロッパでつくられていたそうです。
純粋に湧き上がる驚きや発見、純粋に美しいと思う気持ち、心躍る喜び、全ての人の好奇心や探究心、あるいは「物」に対する欲望が生み出したものでした。
その後科学や博物学・分類学が発達し、人々の生活が効率的で豊かになるにつれてこの部屋は姿を消していきます。
その時代、人々はまだ見ぬ世界や動物や植物をはじめ多くを想像し、イマジネーションを膨らませました。どのようなものであるかわからないから“知りたい”、それを発見したときは“収集したい”、そのような万人に純粋に湧き上がる好奇心と、その想いをファッションで表現したいと考えました。
今の時代は科学が発展し、ものが溢れ、なんでも手に入りやすく利便性が増している世界です。そうでない時代にはどのようにものをつくったのか、どのようにものを想像したのかと想いを馳せるとそこにまた好奇心が湧きます。
子供の頃は、目にする新しいものが全て驚異のはずで、大人になり「知」を覚え方式的な見方に偏り、純粋にものを見る気持ちを少し忘れているのではないかと考えたからです。「知」は分析としてとても大切な事ですが、そこに溺れすぎるのもまた危険な事であると感じます。
楽しみと喜び、この感覚はデザインや何かを表現したいという時のルーツだと思います。
純粋な驚き、純粋なひらめき、純粋に美しいと思う気持ち、全ての好奇心を忘れないよう努める自分のためのスタディでもあります。