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TAMAE HIROKAWA

SOMARTA / 廣川玉枝

イッセイミヤケを経て2006年ファッション・プロダクト・グラフィックデザイン、サウンド・ビジュアルクリエイトをおこなう「SOMA DESIGN」を設立。同時に自身のデザインプロジェクト「SOMARTA」を立ち上げる。
同年、「身体における衣服の可能性」をコンセプトに 「Skin」というボディウェアシリーズを発表。2007年SSコレクションより日本ファッションウィークに参加。2007年8月、毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。
2008年4月、Milano Saloneイタリア・トリエンナーレ デザインミュージアムCanon[NEOREAL]展にてデジタル技術を融合させた空間インスタレーション作品「Secret Garden」及び「ENGRAVER」を発表。同展覧会にてインテリア家具「Skin+Bone Chair」を発表。2008年10月TOYOTAビジュアルアートブック[ iQ MUSEUM] に参加、同月TOYOTAiQ記者発表のオープニングイメージディレクションを行う。2008年11月DESIGNTIDE TOKYOにてTOYOTA [iQ×SOMARTA]コンセプトカー及び空間インスタレーション[MICROCOSMOS]を発表。
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著作権侵害/オリジナルとコピーについて

服・音楽・写真・パフォーマンス何でもそうですが、オリジナルが在ればコピーは容易です。それが起こりにくいのは、クリエイターにモラルが在るからだとおもいます。

なにがオリジナルでコピーかを見極めるかは消費者であり、それを教えるのがメディアだと思います。情報が手に入りやすい時代だからこそ、著作権侵害は深刻な問題であり、犯罪行為でもあると認識する事も必要だと感じます。

※著作権侵害にあたいするかどうかは、2つの作品を人が並べて見比べたときに「類似している」と感じる割合の大きさによって判断されるそうです。

例えば、プロジェクターを使ってダンスと映像を合わせるという技法は誰でも考えつく可能性があります。つまり道具や技法は焦点では在りません。ですが、パフォーマンスの個性は作者が生み出すものです。音楽なら楽器を使いますが、メロディや歌詞は個々の作家の個性によるものだと思います。

ファションでも同じ道具や機械を使用して服をつくります。ですが、その道具を使って生み出すものは個々のアイディアから生まれたそれぞれのデザインであるはずです。

また、インスパイア、オマージュやパロディとも違います。それらはもとのクリエイションの歴史に尊重や尊敬があって生まれるものだからです。

矛盾するような話では在りますが、「模倣されてこそ本物」というシャネルの言葉があります。その作品に魅力があるからこそ模倣される証という事です。なるほどそうだなと思う部分もあります。その本意は「偽物こそが本物を際立たせ、本物は一目でわかる」という事です。

つまり「本物は本物」誰でも分かるということだと解釈します。

広く模倣されることによって「ジャンル」が構築されます。音楽でいえばテクノやロックやポップ、服でいえばシャネルスーツ、デニムやトレンチ等々。携帯ではi-phoneでしょうか。誰かが必ずつくっているのですから、先駆者である「オリジナル」がいるはずです。

「偽者が現われてこそ、本物は本物としての実を示す」これもシャネルの言葉ですが、「オリジナルはオリジナル」であり「コピーはコピー」であるということにかわりないのです。

SOMARTA2011AWコレクション延期について

3/25日に開催される予定の2011AWSOMARTAコレクション
ですが、この度の東北関東大地震の為に、延期させて頂く事にいたしました。

一昨日迄は地震後でも、ファッションやデザインの仕事は未来を予見するものだから必要だという考えのもと25日に予定通り開催する運びでありましたが、昨日・一昨日の動きで
地震だけではなく、2次災害迄もが日々状況が悪化・深刻化している最中、このまま開催を決行する事は厳しいと本日判断致しました。

余震が未だ続く中、国として計画停電もひと月程施行される節電体制のこともあり、長期的な復旧への活動が予期される中、電力をそれ相応に消費してしまうホールでの発表形式が社会的な立場から見てもふさわしくなく、発表の方法を変えて開催する等も色々と検討したのですが、現状で多くの人を会場に集めるという行為が危険性を含む事も懸念事項にありました。

また、被災地への思いや心配等で、自分達の心がコレクションだけにとどまらない事や、工場さんが山形・岩手の東北に多く、都内近郊でも計画停電が施行されるた め、サンプル自体の製作及び運送にも多大なる影響が及ぶ中、物理的にあがらないという問題や、あわせてホールからも危険性を危惧し、25日会場の使用禁止との通達がきました。
今回の機会は、苦渋の決断ではありましたが、今の状況下できることで表現する事も、デザイナーとしての一つの任務 だと考えています。

関係者の方々やコレクションを楽しみにしてくださっていた皆様には大変ご迷惑をおかけ致しますが、何卒ご理解とご協力をお願い致します。

また、現在来週のファッションウィークを控えて、様々なブランドが各々決断をされている事と思います。色々な意見はあるかと思いますが、デザイナーは半年間思いを込めて準備をしてきているので、コレクション自体は誰しもが発表したい事と思います。今の状況下、中止も、決行するのにも、どちらを選んでも勇気が必要で、よく考え抜いてだした結論です。よいも悪いもないと思います。各々前を向き、それぞれが未来に希望を持って最善を尽くすべく行動をとることが重要だからです。

時期や方法は未定になりますが、4月頃になにかしらの表現方法で新作のコレクションイメージを発表したいと、現在前向きに検討しております。

どんな時だとしても、ファッションやデザインには夢と希望があり、いまこの状況だからこそ必要だと思っています。被災されたかたがたの気持や、日本全体の気持が和らぐように、ファッションやデザインの力で回復できること、自分たちにもできる事が必ずあると信じています。ファッショッンやデザインの仕事は、人々の平和が前提にあって、はじめて成立しうるものです。

このたびの大震災により、お亡くなりになられた方々に心よりお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々に謹んでお見舞い申し上げます。

そして、日本中の皆様に笑顔がもどりますよう、一日も早い復旧を心よりお祈りいたします。

北京:市内観光

市内観光は、私が初めて来た北京でどうしても万里の長城を見に行きたいとリクエストしたので、久保さん有働さんも一緒に皆でバスに乗って、都心の中心部から車で2時間弱かけて山のほうに向かいました。色々な国の世界遺産をみるのが凄くすきです。


ユネスコ世界文化遺産の万里の長城。

かつて、移民の侵入を防御するためにつくられた城壁の遺跡です。
こんな、長い城壁を人がつくったのだと想像すると、どれくらい永い年月を費やしたのだろうかと考えてしまいます。今に存在する遺跡は、人の永い歴史をその風景で語りかけてくれます。遠い過去に生きていた人々も、今に生きる人々も同じ風景を眺めているのだと想像すると不思議な気持ちになります。

 

今は国内の観光名所となり、この日は休日ということもあり、もの凄く沢山の家族づれの観光客が多かったです。この日はスコールで山の上は霧がでていました。

 

残念な事に、城壁入り口部分には観光客の落書きが沢山ありました。日本でも以前文化財への落書きが問題になったことがありましたが、歴史的文化財でもまだ保護する力が行き届かないのだと思うと遣り切れない気持ちになります。

 

山を降りた付近にはスターバックスもありました。スターバックスは高級飲料なのだそうです。

 

 

天安門広場も連れて行ってもらいました。市内は雲一つなく晴れていて、皆色とりどりの日傘をさして歩いているのが、かわいく面白い風景でした。

 

50万人を収容出来るという事もあり、広大な敷地でした。ここも、もの凄い観光客で大にぎわいでした。


 

町中には、観光地として昔の中国の雰囲気を残したストリートがあり、皆でお土産を購入しにいきました。

久保さんと有働さんアイプランの山崎さん。いい写真です。

この後、この町並みの一軒家の定食屋さんでみんなで食事しました。

家の屋上にテーブルがあって、風が吹く暑い中、中華を囲んで食べるという素敵な場所に案内して頂きました。炒めた野菜に、ご飯、冷たいビール、そういう場所で食事をするのは、旅でしか味わえない醍醐味があります。

北京には、また是非行ってみたいです。


 


北京の事

macの整理をしていたら去年の夏北京へ行った写真がでてきたので、書こうかなとおもいます。

SOMARTAが北京で初めて展開するときに、取引先のSHOPが初オープンということもあり北京に招待してくれました。

今北京はかつての日本のように、セレクトショップ等がどんどん出来ていているのです。私も凄く興味がある国だったので、行くのはとても楽しみでした。

この時同行したのは、yoshio kuboの久保さん、FACTOTUM の有働さん。
普段お会いした事のないメンズブランドのデザイナーの方々とご一緒したのですが
年齢も近いこともありすぐ仲良くなりました。
基本的にジャンル等ちがっても、デザイナーは面白い人が多いのでお話をするのが楽しいです。

この時は仕事が1/3、観光が2/3だったので、北京を色々と案内してもらえました。

行った事がない国は、なんとなく自分の中でこんなイメージかなという妄想が膨らんでいて
現実目の当たりにすると全く違った印象で、カルチャーショックをうけたりします。

私の中のイメージより想像以上に近代化していました。しかも、これからも凄いスピードで発展していくのだと思います。

現地に着いてのおもてなし、輪になって中華をごちそうになりましたが
中華料理って皆で囲んで食べるから、やっぱり楽しいなと思います。
初対面の人でもわいわい楽しめるのです。

写真はパークハイアットの展望レストランです。

食材は勿論中華ベースなのですが
ホントに美味しかった。

なぞの巨大魚。


市内を観光周遊したときのエピソードもまた今度かきます。

リアル好奇心の部屋2:東京大学総合研究博物館

本郷にある、東京大学総合研究博物館 小石川分館の常設展で「驚異の部屋」展をやっています。

ここには見た事もないような巨大な地球儀や動物・植物標本、骨や木の実、貝や石等
数理面の研究や、人が造りだした機械仕掛けの標本等興味深い物が多く展示されています。

また、建物の作りがとても面白くて、おそらく古い建物をリノベーションしているのだと思うのですが、柱から上が古い木材のつくりになっていて、柱下はコンクリートでできているのです。新しいものと古い物が混ざったハイブリッドな建物ですね。


博物館とは何が違うのか?

という部分ですが、学術的なキャプションが殆どなくそこにはただ「物」が展示されているだけです。

説明書きよりも、物から感じ取れる迫力を大事に展示されているのだと思います。

動物や植物の標本は、生きている時のイメージを感じさせながらも、その時とはまた違う
美しさをもっています。

ここは小石川植物園と隣接しているので晴れた日に散歩がてらいくと気持ちいいです。

http://www.um.u-tokyo.ac.jp/exhibition/annex.html

Wunderkammer :movieの帽子

コレクション終了時、かなり多くの人にこう聞かれたので。
「後ろで踊っているダンサーの頭はどうなっているのですか?」

確かに初めてみた人は気になるのでしょうね。

開次さんが頭にかぶっているのは頭蓋のようなイメージの帽子です。
ダンスをするのに動きを圧迫しないよう軽い素材でつくらなければならないのと、顔も覆われているのですがある程度まえが見えるような機能を考えたデザインをつくらなければなりませんでした。

最初に荒組してから大きさと型を検討していきます。
複雑な立体なので紙で何度も組んでは解体し、なりたい型に近づけていきます。

最初は女性のマネキンにあわせて組んでいたので、最後は開次さんのヘッドサイズにあわせて
組み直します。
およそ5回くらい仮縫し、同じ物を繰り返し微調整して完成です。

写真はガイドラインがはいってる製作段階のトワルの状態のものです。

これを最終的には軽い透明感のある素材に写し直し、ラインを入れずに組んで完成です。
映像では照明の調整でオレンジ色がでるようにし、本物の頭蓋のようにみえるようにしています。

Wunderkammer :movie


SOMARTAのコレクションには必ず映像をSOMA DESIGNで製作しています。
ここ最近CGの映像を続けて製作していたのですが、今回テーマのこともあり、身体性を感じる
映像を製作したかったので実写とCGの合成映像になっています。

知人のコンテンポラリーダンサー森山開次さんとSOMA DESIGNのコラボレーションです。
開次さんには「人のようで、動物のようでもあるし、機械のようにもみえる、見た事もないような
生き物をつくりたい」と伝えました。

すると開次さんのなかで昇華し、身体で動きながら次々と創作していく、驚異の動きで表現して頂きました。
腕と筋肉の動きは本当に人間ではないかのようです。
開次さんは「身体の動きで表現することに命をかけている」とおっしゃっていました。

そのプロ意識があるからこそ、あのような素晴らしい動きで人を魅了出来るのだと思います。
ダンサーとして活動し始めたのが人よりも遅かったので並大抵ではない努力をされていたそうです。

身体の肋骨や、肩甲骨や肩甲骨の動きが非常に発達していて、横隔膜を大きく膨らませ、人でありながらも人ではないようなシルエットを表現できるのです。

 

開次さんのモーション素材を撮影したSOMA DESIGNハナ監督がその動きにあわせて
CGを加えながら編集していくというながれです。

 

開次さんの動きを活かしながら、好奇心の部屋を感じる、少し不思議でこわくて
なおかつわくわくするような映像に仕上がったと思います。






汽車の窓から:その2詩と音


この詩はヴェルレーヌ自身がこの当時の婚約者であるマチルド・ド・モーテを想って詠んだ詩集「やさしい歌」のひとつです。
私がこの詩からイメージした情景は、寂しい駅舎の中、孤独な旅人が汽車にのるという旅立ちのシーンから、汽車の窓から流れ去る灰色の景色を眺めながら不安と郷愁等に苛まれるシーン。
やがて、その不安をぬぐい去るように心に想う人の声が聞こえ、その窓から見える灰色の景色さえも美しい黄金色の夕焼けに染めていくという、幻想的でありながら比較的わかりやすい内容構成でした。

コレクションを始める最初に、この詩のイメージをどのように人に伝えるべきかという事を検討しました。このコレクションは私が感銘を受けた詩とメロディが大変重要な役割を果たすので、それはどうしても欠かせませんでした。

また頭に思い浮かぶ映画のような情景を具現化できるかどうかがキーで、これが出来なかったらこのコレクションは成立しないと思っていました。

なので、最初にソマデザインの映像監督であるハナくんに「汽車をつくり走らせることは出来る?」とランチしてる時になにげなく聞いてみると「大変だけど、不可能じゃない」という返事でした。
また、この詩を詠むのを私がとても好きな、透明感あるヴォーカリスト坂本美雨さんにお願い出来ないかと思い、知人の森山開次さんに紹介して頂き、この時初対面でありながらオファーさせて頂きました。
美雨さんは快く引き受けて下さいました。

幸運な事にこの重要な2点が成立したので、この段階からコレクション用に10年前の「汽車の窓から」からブラッシュアップした楽曲を製作する事に決めました。
プロジェクトのスタートです。

森がつくっていた元は4分弱のピアノの楽曲でしたのでどのようにして約15分のコレクションにあわせていくかという検討をしました。
元の原詩はフランス語でそれが英語、日本語等に翻訳されていましたので
最初は英語だけで構成しようという案もでたのですが、私は堀口大学訳のこの詩に感銘を受けたので
日本語パートをどうしても入れたいとリクエストしました。

日本語を詠むと、日本語はそのまま頭に入ってきてしまうので観客がショーに集中出来なくなってしまうのではないかという懸念があり再び検討しましたが、美雨さんの声ならば問題ないだろうという判断でこちらも予定通り進行しました。

坂本美雨さんは、声でありながらも楽器のような、超音波のように空高く身体に響く声音で、即興で次々に音をつくりだすのです。リハーサルは数回でしたが、実際のコレクション本番時はアレンジと即興で尺をライブであわせてしまうという素晴らしい感覚のかたでした。

前半はクラシカルなピアノメイン、途中で汽車が出発するシーンでは実際の汽車の発車音等もサンプリングし、日本語に切り替わる部分から汽車が動き出すようなイメージ構成にしています。
楽器や尺を替えバージョンを何度もつくり直し、美雨さんの声と映像、勿論服にもあうように構成を検討して全体の世界観に落とし込んでいます。

汽車の窓から:その1


2010SSのコレクション映像がUPされてましたので、何回かにわけて解説しますね。
このコレクションは、1800年代にフランスの詩人ポールヴェルレーヌがかいた「汽車の窓から」という詩からインスピレーションを得たものです。
正確に言うと、SOMA DESIGNサウンドクリエイターの森が10年程前に趣味でヘルマン・ヘッセやヴェルレーヌ等の詩からそのイメージを即興で作曲するという事をやっていて、そのひとつが「汽車の窓から」という詩でした。訳の堀口大學の日本語が大変美しく、更にメロディが加わり、短い詩でありながらもそこに情景が浮かぶような一片の映画を観ているようなイメージが膨らみました。その事を10年後に憶いだし、これをテーマにしてやりたいなと突然おもいついたのです。

 

『汽車の窓から』 P.ヴェルレーヌ 詩/堀口大学 訳

 

汽車の窓から眺めるこの景色は もの狂わしく走る事、野原も水も

麦畑も樹木も空も一切が

すさまじい渦巻きの底に身を投げる、

奇態な花押とも見える電線を張り渡した

ひょろ長い電柱も、あとからあとから追いかけて。

燃える石炭と、たぎる水の匂い

千本の鎖の先に千人の巨人をつないで

鞭打ち嘖んだら出るかと思われるような喧々轟々、

時にふと聞こえてくる、梟の気疎い声音。

でもそれが僕に何だ、僕は瞼の裏に

心を陽気にする明るい幻を持っているのだもの、

現にあのやさしい声が僕に耳に囁いているのだもの、

あの美しい上品な調べのよい名が

この騒々しい雑音の清らかな枢軸となって、

荒れくれた車台の音律にさわやかに交じって聞こえるのだもの。

SOMARTA10AW:VISUAL

ソマルタの[Wunderkammer]ヴィジュアルが一部できてきましたので掲載します。

ヘアは松本順さん。フォトは腰塚さんです。
信頼出来るパートナーです。

リアル好奇心の部屋:sieben

前回、好奇心の部屋について書きましたが、このテーマについて決めた時は、実は自分自身がそのような体験をした事が始まりでした。

アトリエの近所代々木上原にsiebenという小さなお店があります。sieben(ジーベン)とはドイツ語で[7]を意味するそうです。そこはまさに今思えば好奇心の部屋を感じさせるお店でした。

実際初めてお店を訪れたときは、店内の明かりはついているけれども、
ドアに鍵がかかっていて開かない。
ガラス越しに見ると、人がいないので休みかと思いその日はあきらめたのですが、2回目訪れたときも同じだったので店の周りをうろうろ見回してると、黒いガラス扉の横の壁に
「御用の方は呼び鈴を押して下さい」とかいてありました。
10回くらい呼び鈴を押すと上から人がおりてきたので、信じられないくらいやる気のないお店だな。。とおもったのですが、
1歩お店のなかにはいるとそこには見た事もないような「物」で溢れ、
その中に佇むとまるで異空間にいるような、わくわくする不思議な気持ちになりました。

アンティークの家具や色々、現代の物も少しあるのですが、
美しいガラスケースに入った鳥の骨格標本やオブジェ、面白いかたちをした椅子やテーブル。
帆船の模型やライト、鏡、瓶、大きな貝殻などなど天井迄埋め尽くされる程その小さな部屋に並んでいるのです。
ひとつひとつの「物」から発せられるエネルギーから、かつて人が手でつくりだしたのだという実感をイメージし感動しました。「物」に込めた想いは時を越えて、必ず伝わるのだと思います。
ファッションでも音楽でも芸術でも、素晴らしい物はいつの時代でも素晴らしく、歴史に残っていきます。
人生は短いですが、遠い未来に自分の作品を見た誰かを感動させられる事ができたら素敵だなと思います。
私自身もそのようなファッションをつくって、残していかなければならないと感じます。

お近くに行った際は是非呼び鈴を鳴らしてみて下さい☆。

sieben

http://www.type-seven.com

好奇心の部屋

SOMARTA2011年A/Wのテーマはドイツ語のWunderkammer(ヴンダーカンマー)です。
「好奇心の部屋」や「驚異の部屋」という意味があります。

世界にまだ神秘と謎が多かった時代、見たこともない「物」の個性溢れる美しさに目が向けられ、自然物から人工物まで様々な珍しいものを分野を隔てず集めた博物陳列室がありました。15世紀イタリアから始まり、18世紀迄ヨーロッパでつくられていたそうです。

純粋に湧き上がる驚きや発見、純粋に美しいと思う気持ち、心躍る喜び、全ての人の好奇心や探究心、あるいは「物」に対する欲望が生み出したものでした。

その後科学や博物学・分類学が発達し、人々の生活が効率的で豊かになるにつれてこの部屋は姿を消していきます。

その時代、人々はまだ見ぬ世界や動物や植物をはじめ多くを想像し、イマジネーションを膨らませました。どのようなものであるかわからないから“知りたい”、それを発見したときは“収集したい”、そのような万人に純粋に湧き上がる好奇心と、その想いをファッションで表現したいと考えました。

今の時代は科学が発展し、ものが溢れ、なんでも手に入りやすく利便性が増している世界です。そうでない時代にはどのようにものをつくったのか、どのようにものを想像したのかと想いを馳せるとそこにまた好奇心が湧きます。

子供の頃は、目にする新しいものが全て驚異のはずで、大人になり「知」を覚え方式的な見方に偏り、純粋にものを見る気持ちを少し忘れているのではないかと考えたからです。「知」は分析としてとても大切な事ですが、そこに溺れすぎるのもまた危険な事であると感じます。

楽しみと喜び、この感覚はデザインや何かを表現したいという時のルーツだと思います。
純粋な驚き、純粋なひらめき、純粋に美しいと思う気持ち、全ての好奇心を忘れないよう努める自分のためのスタディでもあります。