2010SSのコレクション映像がUPされてましたので、何回かにわけて解説しますね。
このコレクションは、1800年代にフランスの詩人ポールヴェルレーヌがかいた「汽車の窓から」という詩からインスピレーションを得たものです。
正確に言うと、SOMA DESIGNサウンドクリエイターの森が10年程前に趣味でヘルマン・ヘッセやヴェルレーヌ等の詩からそのイメージを即興で作曲するという事をやっていて、そのひとつが「汽車の窓から」という詩でした。訳の堀口大學の日本語が大変美しく、更にメロディが加わり、短い詩でありながらもそこに情景が浮かぶような一片の映画を観ているようなイメージが膨らみました。その事を10年後に憶いだし、これをテーマにしてやりたいなと突然おもいついたのです。
『汽車の窓から』 P.ヴェルレーヌ 詩/堀口大学 訳
汽車の窓から眺めるこの景色は もの狂わしく走る事、野原も水も
麦畑も樹木も空も一切が
すさまじい渦巻きの底に身を投げる、
奇態な花押とも見える電線を張り渡した
ひょろ長い電柱も、あとからあとから追いかけて。
燃える石炭と、たぎる水の匂い
千本の鎖の先に千人の巨人をつないで
鞭打ち嘖んだら出るかと思われるような喧々轟々、
時にふと聞こえてくる、梟の気疎い声音。
でもそれが僕に何だ、僕は瞼の裏に
心を陽気にする明るい幻を持っているのだもの、
現にあのやさしい声が僕に耳に囁いているのだもの、
あの美しい上品な調べのよい名が
この騒々しい雑音の清らかな枢軸となって、
荒れくれた車台の音律にさわやかに交じって聞こえるのだもの。