最近読んだ本で、前回同様に高校生や大学生に薦めたいものの紹介を。
岸政彦『断片的なものの社会学』、朝日出版社、2015年。
デザイナー志望の学生はまずなによりもまず「見る」力と「分析する」力を身に着けなければならないと僕は常々思っているのですが、この本はそのトレーニングにもなるはずです。
植木をくれる近所のおばちゃん、SFに夢中になっていた小学生時代の空想、誕生日を祝うこと、そんな日常生活で起きる「何事でもないこと」から展開される著者の思考を追うことで、日常的な出来事を分析する方法を学ぶことができるでしょう。
それだけではなく、この本は「わからないことをわからないと認める(でもそれについて考えるのを放棄するわけではない)」ことの重要性も教えてくれます。
世の中には、物事に白か黒のどちらかしかないと考える人が少なくなく、そうした人たちは断定的な、それゆえわかりやすい発言をしがちです(もちろん、ときにはそれも必要なのですが)。
しかしながら、この世のほぼすべての物事は白か黒ではなく灰色なはずです。とはいえ、私たちは人生において、その灰色のグラデーションのなかのある一点を悩みに悩んで選ばなければなりません。白黒はっきりさせることではなく、灰色のなかで悩むことを肯定してくれる本書はきっとあなたの視野を広げてくれると思います。