変なタイトルですいません。
たまにはブログらしい事でも書こうかと。書けるかな、、、。
今年の夏前ぐらいにカガリユウスケから香水をリリースしたんです。
「え?お前みたいなもんがいっちょまえに香水?」って突っ込みもあるでしょうが、まぁぼくみたいなもんが作りました。実際に作ったのは調香師の方ですが。
名前を「廃墟の匂い」って言います。
廃墟に対してぼくの中には確かなイメージと記憶があったのでそいつを頼りに開発はわりとスムーズに進み、サンプルを二回出しただけで理想に近い匂いが出来ました。
開発自体すごく興味深い事ばかりで、特に出来上がった匂いを嗅いだ時のあの「初めて嗅ぐのにこの匂い知っている」と感じた経験はなかなかのものでした。記憶は匂いから蘇る、という話しも納得です。
そんな個人的な原風景トリップ体験以上に、「廃墟の匂い」に触れたぼく以外の人の反応は興味深いものでした。
例えばAさんの場合は事前に廃墟というネーミングとボトルデザインを見せてから嗅いでもらいました。Aさんの感想はこうです。
(嫌な顔をして)「ゴミ箱の匂いがする」
次にBさんの場合はネーミングとボトルデザインを見せる前に嗅いでもらいました。
(好意的な顔で)「森や草原の匂いがする」
さらにCさんの場合はネーミング、ボトルデザインに加え、ぼくの中のイメージ「雨に濡れた土の匂い」という解説も加えてから嗅いでもらいました。
(あまり表情に感情を出さず)「あ、本当だ。雨後の土の匂いがするね」
もちろんここに書いたパターンは話しが分かりやすく伝わる為にぼくが意図的に抜粋したものなので、全ての人がそうだったわけではありません。Aさんの立場で「朝に降る雨の匂いがする」と言った方もいればBさんCさんの立場で「うえっ、なんじゃこりゃ」って言った方もいます。
それでも、このA〜Cさんのケースは何だか印象に残っています。
思えば匂いって形がない正に記憶のようなもの。そんな雲みたいに輪郭が不鮮明な存在に対してボクは「廃墟」という印象と「ボトルデザイン」という実態を与えたわけです。
その結果としてクレショフのモンタージュ実験っぽいデータが出た事で、そういう科学ネタが好きな自分は色々考えさせられました。
さらにボクが面白いなぁって思うのは匂いはデータではなく主観の形ゆえに
「ゴミ箱の匂い」
「草原の匂い」
どちらも正解でありどっちも間違っているという矛盾した式が成り立ちうるって事だと思うんです。
これって、ぼくが抱くファッションのイメージにすごく近い。
実態はあるけど目に見えなくて、全部正しくて全部間違ってる。
こういう訳の分かんない概念ってなかなか素敵で扱い方次第では危ういな、って思ったってお話でした。
追記
文中に出てくるクレショフのモンタージュ実験についてはこちらのサイトが分かりやすかったです。
http://cinemaworker.com/21editor2.html