「優れた機織りの娘アラーニェは機織りの神アテーナーと機織りを競う。アラーニェはアテーナーの父であるゼウスの不貞を機織りの題材に選びアテーナーの怒りを買い、ついには自らの愚行を恥、自害する。
死を許さないアテーナーはアラーニェを蜘蛛の姿に変える。蜘蛛となったアラーニェは今でも糸を垂らし機を織る。」

ダンテ「神曲」、オウィディウス「変身物語」からイメージを膨らませ作り上げた物語を軸に展開された今季。不貞のタペストリーから始まり、このアラーニェとアテーナーを対峙させ、独自の解釈によって蜘蛛と化した現代のアラーニェを描く。針山のようなモチーフが付いたドレスやカラスの羽根のミニスカートを合わせたライダース、女神の表現としてシルバーの箔を施したリブニットドレスを提案。コルセットやダウンが蜘蛛の関節のように施されている。

蜘蛛の巣のようにナイロン糸を張り巡らせたシースルードレスなど代表的なアイテムを用いながら、長毛のファーをあしらったトップスとマイラーバルーンで大きく膨らませたスカートで蜘蛛を表現。1000mに及ぶ糸を使用したり、つきまとう試練を浮き彫りにした長いウェディングベール。始まりから終わりまで、徹底された演出に関して「共有する人のためにストーリーのあるエンターテイメント性を重視している」とデザイナーの船越氏は語る。

Photo:Kaori Sugawara Text:Tomoka Shimogata