matohu

いままで見えていた面を消し去り、線と余白だけの美を生み出す雪。線描のパターンと、たっぷりとひろがる絶妙な余白。そしてそれは物と物の間から生まれている「場」であり、「リズム」であり、「呼吸」。そんな情景から引き出されたテーマ「あはい(あわい)」。

間(ま)を意味し時間と空間における関係性と調和を示す言葉を形にするのは、線と余白の表現だ。曖昧な柳鼠色のヘリンボーンケープやロングコートの襟や肩には積雪のようにファーがそっとあしらわれている。艶感を含ませた粉雪のようなジャカード表現やマットな光沢感の丸みを帯びたパンツやドレス。江戸期の琳派の金屏風を表現するように、スパンコールを散りばめたドレスといった柔らかく潤いのある表情を描き出している。

幾何学的なフェルトのヘッドピースやシルバーアクセサリーは表参道本店のゲストアーティスト・シリーズでもあるロンドン在住の現代アーティスト、AKIKO BAN(播安芸子)氏によるもの。それらを組み込むことで頭からつま先まで、リズミカルなバランスに変容する。

静かな朝のグレイッシュな世界、中盤から夜の深いブルーな世界へと導かれる。絞り染めによる突然の余白は、偶然のようでしっかりと演出され全体と調和していく。絵画、数奇屋の窓、雪。日本が培ってきた日々の細部から見出される「あはい」の考察をパターンや質感で織りなしている。

Text:Tomoka Shimogata


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