matohu

matohuが秩父宮ラグビー場にて2012 A/W collectionを発表した。今期は豊かで美しいものや気高い精神が、あえて簡素に貧しく姿を変える事を意味する言葉「やつし」をテーマにコレクションを発表。

日本の美意識の根底に迫るべく表現を続けるmatohu。今回選んだキーワード「やつし」の例には、水戸黄門、枯山水、生け花、侘び茶をあげている。「やつし」というものに内在する美とは一体何か。外見上そのまま美しいとはなかなか言えない。それは素朴すぎたり、見窄らしくみえたりするものであったりする。豪華な物の「やつし」だと知っていてもだからといって美しいとは言えるのか言えないのか。それを美しいと感受するためには人の心の底に時間の奥行きを見いだし、それを美とする日本の感受性的土壌が無ければ成り立たない。今回はこうした題材をもとにアイテムを制作している。
 
シミ、こけ、かすみ、こうしたいわゆる定式化されたみすぼらしい観念をディティールとして使用。オパール加工でウールを溶かし透かした箇所は葉のフォルムを形成。シルクを擬麻加工(一般的にコットンを麻にみせるように施す加工)し、あえて高級な素材を崩し、「やつし」を表現。またパターンは一見なんでもないように見える。しかし、あえてそれを演出するために、計算に計算を重ねてパターンメーキングを行っている。

銀杏並木が外にある秩父宮ラグビー場を選んだ事も今回のショーの布石。この季節、葉は枯れ、落ち葉となるこの銀杏並木を通ってくる事で、今回のテーマ「やつし」の意味やその持つ潜在的な美を、ショーを見る前から準備できるよう総合空間をデザイン。

日本人の奥底に存在する、普遍的な美意識と感受性。固有のアイデンティティーを徹底的に掘り下げる事で、超越化が生じ、日本固有から世界全体の普遍性をも感じさせるコレクション。

Photo:Koji Shimamura Text:Tomoka Shimogata

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