2011年8月20日、東京都練馬区立東大泉児童館にて西尾美也プロジェクト《ことばのかたち工房Pro》による「Form on Words Fashionshow」が開催された。
〈ことばのかたち工房Pro〉は練馬区立東大泉児童館を拠点にファッションデザイナーやパタンナー及びその志願者を対象に、現代美術家、西尾美也がファシリテーターとなって実施する服作りワークショップ。子供たちがまちに出てモデルをスカウトをし老若男女、多種多様な人々が集結した。基礎となるのは、アーティスト・イン・児童館#1西尾美也プロジェクトとして東京都練馬区東泉児童館にて開始された「ことばのかたち工房」。
「ことばのかたち工房」
古着を使って「ことば」を「かたち」にする作業場です。
「ことば」は、町の〈ある見慣れたかたち〉を言い表したものです。
「ことば」の正体を知ることなく、まず自由な発想で「かたち」をつくります。
「かたち」は、最後に〈ある見慣れたかたち〉と置き換えられます。
「ことばのかたち工房」は、古着を使って町に新たな装いを与えていきます。
児童館スタッフと子供たちが古着を素材に「かたち」を作り、1年ごとに作品と活動記録をまとめた展覧会を行っている。
〈ことばのかたち工房Pro〉で制作された服はすべて、西尾美也氏立ち上げによる児童館発のファッションブランド「Form on Words」の名前の下、ショーや展覧会で発表される。
音楽家、蓮沼執太氏が子供たちと児童館の音をフィールドレコーディングした音に包まれる児童館の一室で始まったファッションショー。耳に入るのは子供たちの笑い声、足音、児童館特有の音。継ぎ接ぎロングスカートや切り抜かれたポケットやレースで装飾されたコート、古着のTシャツを紐状にして編み込んだ造形的な帽子やベストなど、古着から生まれる色とりどりのモチーフが登場。モデルの顔には、それぞれの服のタイトルが小さくペインティングされている。
シャツを着た4人の少年たちは横並びになって、不自然にお互いを押し合いへし合い、歩いてくる。実は彼らは1枚のシャツでつながっている。そんな彼らの顔には「KENKANO GEIIN」の文字。
遊び場から生まれた遊び心のあるユニークな作品から、落ち着いた色合いのシンプルな作品まで古着から造形された服に身を包んで、たくさんの笑顔に出会えるショーとなった。
児童館に一定期間アーティストを招待し、児童館を創作・表現のための作業場として活用してもらうプログラム「アーティスト・イン・児童館」の一貫として開催された今回のファッションショー。近所付き合いという習慣が薄れ、まちを共有する人間の交流も少なくなった現代、 地域の子供から大人まで、地元の幅広い年齢層の人々がプロジェクトを通して出会い、創作することは、見逃しがちな日常の些細な幸福感や新たな発見につながるのではないだろうか。