HISUI

2011年10月21日、belle salle shibuya firstにて HISUI 2012 SPRING&SUMMER COLLECTIONが披露された。

会場の前方には、暁色のスポットの下に広がる”ひまわり”の群れ。東日本大震災及び原発事故以後、私たちはどうしようもない、見えない何かに対する不安を抱えてきた。この不安を恋愛に例えて、ZEROZEROESUESUとしてデザイナー伊藤氏がユニットを組む、松岡氏が作詞を手掛けた「トロケルワタシとトロケルアナタ」の緩やかな音を背景に、ネイビーの襟シャツ、オレンジやブルーのギンガムチェックのフレアパンツやブルゾンを展開。
歌とオブジェに対してシフォン、シルクなどの優しく柔らかいとろけるような素材を使用した。無駄のない美しいドレープ、シフォンのティアードスカートはミルフィーユのように甘い。レザーカットを施し、私たちが何らかの”矛盾”の中に生きていることへの不安や不満を乗り越える必要性を示唆している。現状を踏まえて「毎日365日服を着る、ファッションって乗り切る元気を与えてくれるものだと思う。」
グレー、ホワイトと淡いシンプルな色彩に混ぜたのは、母親のような暖かみのあるオレンジや赤。手捺染、ムラ染めによってランダムに3版重ねた、ひまわり模様。不安が滲み出るぽっかりと開いた穴が散らばったドレス。そこから見えるのは希望の花、ひまわり。温かい気持ちを持ちながら生きていく。
着れない、現実味のない鉛。しかし鉛は放射能を通さない貴重な素材であることは確かである。ショーの最後に登場した五体の鉛のドレス。上にはルーベンスの絵画「聖母被昇天」をイメージしたオブジェ。原発に対して私たちがどう向き合うべきなのか、どんなに世界が混乱しようがただ刻々と過ぎ去っていく日々。新たな一歩を踏み出し、追うように早歩きをする。でもほんの少し立ち止まると、失いかけた現実や逃げてきた過去の存在と対面する。「洋服を買った人がそういうコンセプトの服を着ているんだという、服にも付加価値があるだろうし、その人のその日の気分や考え方が変わるかもしれない。何かそういうことを伝えたい。」と伊藤氏は語る。

Photo:Tomohiro Horiuchi Text:Tomoka Shimogata

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