Fashion Show

NOZOMI ISHIGURO Haute Couture

2011年10月17日、秩父宮ラグビー場にてNOZOMI ISHIGURO Haute Couture Spring/Summer 2012が披露された。

長い回廊に響き渡る優雅なワルツに馴染むようで、どこか矛盾する巡りめく日常。卵殻膜のようなオーガンジーは大胆に裂かれ、編み目の荒いブラックの編みタイツを履いたパンキッシュで挑発的なスタイルが登場。腰回りを強調した赤と白のタイトスカート、金魚の尾のように波打つオーガンジーロングドレス、旗を掲げる男達、繊細な生地を駆使した服には、テーマとなる「シュークリーム と クーデター (Choux à la crème et le coup d’Etat)」それぞれの文字がランダムに刻まれている。”新聞”が好きなデザイナー、石黒氏が震災や原発に関する記事が耐えない、約1ヶ月前に感じたのは「どの新聞も新聞ではない。」という思いだった。洋服を作る人間として、表現する者として「自分がクーデターを起こすしかない。」と強く感じた。そう思った日の翌朝、妻と子供達がミルクや卵を混ぜながら、”シュークリーム”を作っている姿を目にする。「現実と夢の逆転」。それを誇張するかのように、今にも蕩け出しそうなか弱い編み目が年輪のごとく、もの言いたげに背中を覆う。さらにシュークリームを想起させる、クッションほどのボリューム感のバルーンケープや大きく弧を描いて、羽根のように広がるパフスリーブなど、甘い素材とデザインがフェミニンな印象を与える。サイドにフリンジの入ったグレーパンツやスウェット地のセットアップ、ストレッチニットベストにカーキ色のハーフパンツと、スポーティで活動的なスタイルの他、ほつれを生かした退廃的なテーラードジャケット、前見頃の全面にジップを並べ、バックにはパイソン柄といったハードなライダースを展開。チュールや林檎の皮むきのように巻き付くレザーネックアクセサリー、ドレープやシワ加工に見られる素材の柔軟さ。今回90%の生地は以前使用したものを含め、リメイクされている。ライダースであれば、前見頃と後ろ見頃を分解する。頭ではなく、単純な加工を施すことを重視したという。甘さと辛さ、二極の世界が解け合うコレクションとなった。

Photo:Koji Shimamura Text:Tomoka Shimogata


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